法律コラム

債務整理

2024/05/13

借金減額は本当にできる?仕組みや具体的な手続きについて解説

借金の返済で苦しい思いをし、なんとかして減額できないか、と思っている方も多いのではないでしょうか。このような方は、インターネットの広告などで「借金減額シミュレーター」を見かけたことがあるかもしれません。 こうした広告は「本当に減額できるのか」「悪徳業者ではないか」と警戒されやすいのですが、借金の減額は合法的に可能です。 この記事では、借金減額シミュレーターの仕組みと具体的な減額方法について紹介します。利用する際の注意点も合わせて紹介しますので、迷っている場合は参考にしてください。
借金減額は本当にできる?仕組みや具体的な手続きについて解説

1.借金減額の仕組み

合法的に可能な借金の減額は、大きく分けて「法的な交渉・手続きで借金を減らす方法」「借金の乗り換えで利率を下げる方法」が存在します。ここでは、以下の4種類を紹介します。

  • 債務整理をする
  • 過払い金請求をする
  • おまとめローンを利用する
  • ローンを借り換える

1-1 債務整理をする

債務整理は、法的な手続きや交渉によって借金を減額・免除する方法の総称です。一定の条件のもと、合法的に借金を減らすことができます。

いずれも、個人の信用情報を管理する「個人信用情報機関」に「金融事故情報」が掲載されます。いわゆるブラックリスト入りするため、デメリットも考慮して弁護士に相談し、適した解決法を探すことが大切です。

債務整理にはどのような手続きがあるのか、代表的な3つの方法を紹介します。

1-1-1 民事再生(個人再生)

民事再生(個人再生)とは、個人の債務を整理し、あらかじめ作成した計画書どおりに一定期間返済することで、残額を免除する再生手続の一種です。企業向けの再生手続きもありますが、個人が借金を整理するために申し立てる場合は「個人民事再生(個人再生)」と呼ばれます。

民事再生(個人再生)では、減額後の借金の金額を仮計算し、その結果に従い3年(特別な事情がある場合は5年)で完済できるよう再生計画を作成します。作成した再生計画どおりに完済できれば、借金の残額は免除される仕組みです。

民事再生(個人再生)は、車や住宅などを残せるケースが多く、財産のある場合にメリットの大きい方法です。ただし、民事再生(個人再生)の申し立て・認可には条件があるため、誰でも利用できる手続きではありません。詳細は以下の記事を参考にしてください。

関連記事:個人再生(民事再生)とは?メリット・デメリットと費用の相場も解説

1-1-2 任意整理

任意整理とは、金融機関や消費者金融などの債権者と交渉を行い、債務のうち利息や遅延損害金の減額を求める手続きです。

借入元本の削減はできませんが、借金がこれ以上膨らまないよう歯止めをかけ、毎月の返済額を調整できるメリットがあります。任意整理を行うとき裁判所への手続きは必要ありません。あくまで当事者間の話し合い・合意によって負担の軽減を目指します。

債権者側も、返済の見込みが無ければ返済額の削減には同意できません。そのため安定した収入があることが条件です。

1-1-3 自己破産

自己破産とは、裁判所に申し立てて債務の返済の免除を受ける手続きです。借金の額が大きく、返済のめどが立たない場合に検討されます。裁判所が債務の免除を許可する「免責許可決定」が下りると、債務は全額免除され、以降の支払い義務はなくなります。

自己破産の手続きでは、債務を清算するため財産を手放すことになります。不動産や一定以上の金額の預貯金などがある場合は、原則債権者に配当され手元には残せない点には注意が必要です。

また、自己破産で借金の免責許可が出た場合でも、保証人の保証債務は自動的に免除にはなりません。債務者の返済が免除された分は保証人が請求されるため、この点も考慮して申し立てるかどうか検討しましょう。

1-2 過払い金請求をする

現在の法律では借金を返しすぎているケースでは、過払い金請求をして借金を減額できるかもしれません。

2010年5月以前、個人向けの金銭の貸し付けに二つの法規制が存在しており、利息制限法の上限を超過する利率での貸付が横行していました。2010年6月の貸金業法改正によりこの状況は解消されており、上限を超過している分の利息は無効と定められています。

過去に上限を超過した金利で返済を行っており、本来返済すべき借金の金額より払いすぎている場合は「過払い金」として返還請求ができます。

ただし、過払い金の請求には以下のように条件があるため、誰でも対象となるわけではありません。

【過払い金請求の対象となるケース】

  • 利息制限法の上限を超過した金利で借入を行っていた
  • 2010年6月17日以前に借入を開始している
  • 借金を完済してから10年を超過していない

過払い金返還請求については以下の記事で詳しく紹介しています。

関連記事:債務整理をしながら過払い金請求は可能?両者の違いや成功の秘訣とは

1-3 おまとめローンを利用する

金融機関のおまとめローンを利用することで、借金減額につながることもあります。

おまとめローンは、複数の金融機関や消費者金融から借入をしている人向けに提供されている、借金を一本化する目的のローン商品です。例えば、A社・B社・C社から50万円ずつ借り入れている場合を考えてみましょう。D社のおまとめローンを150万円借り入れて、三社のローンを完済すれば、借金はD社からのみと一本化されます。

おまとめローンを利用しても借りている金額が減少するわけではありませんが、低い金利のローンで一本化できれば、今後発生する利息を抑えられます。また、振り込み日と借入先が一つになるため、返済を管理しやすくなる点もメリットといえるでしょう。

1-4 ローンを借り換える

ローンを借り換えることでも、借金の減額ができるケースがあります。

ローンの借り換えとは、現在返済しているローンを別の会社のローンで完済することで、借入先を切り替えることです。金利の低いローンに借り換えられれば、今後発生する利息を減らすことができます。

ただし、住宅ローンなど一部のローン商品では、一括返済に手数料が必要です。ときには手数料や借り換えのための経費が金利差を上回り、借り換え前より返済額が増えることもあるため注意してください。

 

2.借金減額シミュレーター・借金減額診断とは?怪しい?

インターネットで借金に関して調べていると、「借金減額シミュレーター」「借金減額診断」といった広告を目にすることがあります。

「借金を減らせる」という掲示が怪しく思えるかも知れませんが、多くはきちんとした法律事務所が出稿している広告です。前述の通り合法的な借金の減額は可能なため、簡易的な削減額を提示し相談者を募る目的で出されています。

 

3.借金減額シミュレーター・借金減額診断のからくり

借金減額シミュレーターには何かからくりがあるのではないか、と警戒する方もいるかもしれません。

しかし、多くのシミュレーターは法律事務所が集客目的で出稿している広告です。困っている人を法律相談に繋げる目的で表示されています。

ただ、悪徳業者が出稿している可能性はゼロであるとは言い切れません。自分の個人情報を入力する前に、広告をクリックし、どこの法律事務所が広告を出稿しているのか確認してみましょう。シミュレーターを利用しただけでお金をだまし取られる、といったリスクは低いですが、広告出稿元を調べてみることは大切です。

 

4.借金減額シミュレーター・借金減額診断のメリット・デメリット

借金減額シミュレーターの利用には、いくつかメリット・デメリットがあります。利用前に確認してみましょう。

4-1 メリット

借金減額シミュレーター・借金減額診断を利用することには、以下のメリットがあります。

  • 弁護士とつながり借金の減額ができる可能性がある
  • 弁護士事務所や司法書士事務所について知るきっかけになる
  • 借金がどのくらい減るのか簡易的に知ることができる

自己の借金の状況を客観的に把握し、解決に向けた現実的な対処法を模索するきっかけとして、借金減額シミュレーターは役立ちます。借金をしている人のなかには、合法的に減額できることを知らない人も多いため、情報を提供する意味でも一役買っているといえるでしょう。

4-2 デメリット

一方、借金減額シミュレーターを利用することには、次のデメリットもあります。

  • 出稿しているのが法律事務所ではない可能性がある
  • 個人情報が渡ってしまう
  • 営業電話がかかってくる可能性がある
  • 状況によっては借金を減額できないこともある

借金減額シミュレーターは、最終的には法律相談に繋げる目的で出稿されているため、電話番号や氏名など個人情報の入力が必要となります。法律事務所以外が出している可能性もゼロではないため、この点に不安を感じる人もいるかもしれません。

不安な場合はどこが借金減額シミュレーターを提供しているのか確認し、きちんとした法律事務所かどうか調べてみてください。

また、最終的に借金の減額ができるかは、債務の状況や相談者の希望によって異なります。シミュレーターでは減額可能とされていても、実際にはあまり効果がないケースはあります。

 

5.借金減額シミュレーター・借金減額診断を使うときの注意点

借金減額シミュレーターは利用者にとってのメリットも大きいツールですが、使う際は注意点もあります。どのような点に気をつけるべきか、ポイントを紹介します。

5-1 運営元を確認する

借金減額シミュレーターの運営元を確認しましょう。多くは法律事務所が出稿しているものですが、個人情報収集の目的で広告を出している業者が紛れ込んでいる可能性もあるためです。

利用前には相談先の名義を確認し、弁護士事務所や司法書士事務所が運営元かどうかを確認してみましょう。不安な場合、事務所の名前や電話番号でインターネット検索してみてください。

「日本弁護士連合会」「日本司法書士連合会」のWEBサイトから、法人や個人の資格者を検索することも可能です。不安な方はこちらもお試しください。

5-2 結果を鵜呑みにしない

借金減額シミュレーターはあくまで機械的に減額結果を判定するものなので、結果は必ずしも正確ではありません。シミュレーターの削減額は参考程度に認識し、鵜呑みにしないようにしましょう。

具体的にいくら減額できるか知り、借金の負担を軽減するには、法律事務所へ相談が必要です。

 

6.実際に借金減額するための手順

借金減額シミュレーターを利用し、結果に納得できれば、運営元の法律事務所への相談も選択肢に入ります。では、実際に借金を減額する際は、どのような手順で進めることになるのでしょうか。

6-1 今ある借金をすべて把握する

最初に、今ある借金について整理し「いつ」「どこに」「いくら」借りたかすべて確認しておきます。

弁護士や司法書士に相談して正確な削減額を知るためには、現在の借金の状況を把握しなければなりません。借金の詳細を思い出せない場合、信用情報を管理する「個人信用情報機関」に、借り入れの履歴を請求することもできます。

関連記事:ブラックリストとは?掲載されたときの影響や確認方法について解説

取得した履歴を持参すれば確実ですが、急いで相談したい場合や、難しくてよく分からない場合は、状況の把握の仕方も含めて総合的に相談できます。気軽に連絡してみましょう。

6-2 弁護士に相談する

借金の状況が把握できたら、次に弁護士に相談し、現在の状況を共有します。自分の場合は借金を減額できるのか、いくら減らせるかを確認してみましょう。

借金減額の方法はさまざまであり、それぞれの方法にメリット・デメリットがあります。自分の状況と希望を考慮して、最適な減額方法を選ぶのは個人では難しいでしょう。

手続きや交渉自体も裁判所を通さなければならない手続きもあり難解なため、法律の専門家を頼むほうが確実です。信頼できる弁護士を探してみてください。

相談の結果、納得できれば正式に依頼となります。

6-3 自分に合った方法を選択する

依頼する弁護士を決定したら、自分に合った方法を弁護士と検討してみましょう。このとき、借金の減額方法について要望があれば伝えます。

  • 家族に内緒で減額したい
  • 保証人への影響は最小限にしたい
  • 子供のために住宅は残したい

このような不安な点や希望がある場合、この段階ですべて話すようにしてください。借金の金額や借入時期などさまざまな要素を考慮し、担当弁護士から解決策の提案があるため、弁護士と話し合いつつ最終的な方針を決定します。

どの減額方法を採用するかによって、弁護士事務所に支払う報酬も変わってきます。費用を抑えたい場合はその点もあわせて相談してみてください。

 

7.借金減額は合法!罠ではないため一度ご検討を

借金減額にはさまざまな方法があり、いずれも法律で認められています。借金減額シミュレーターの多くは法律事務所の広告であり、怪しいものはごく稀です。ただ、個人情報を入力する前に、出稿したところがきちんとした法律事務所かどうか調べてからにしたほうがよいでしょう。

借金減額シミュレーターを利用すると、簡易的ながら借金の削減額を知ることができ、法律の専門家につながるきっかけになります。気になる場合は利用してみることも選択肢の一つです。悪徳業者でないか心配な場合は、インターネット検索などで運営元を調べることをおすすめします。

シミュレーターの結果はあくまで簡易計算によるものです。個別の状況を考慮して正確な削減額を算出するには、法律の専門家へ相談する必要があります。

ライズ綜合法律事務所は、借金問題の解決を得意とする法律事務所です。「すぐに督促を止めたい」「良い形で生活を再建させたい」など、ご希望を聞かせてください。債務整理の専門知識を持つ弁護士が皆様に最適な解決方法をご提案します。

 


このページの監修弁護士

弁護士

三上 陽平(弁護士法人ライズ綜合法律事務所)

中央大学法学部、及び東京大学法科大学院卒。
2014年弁護士登録。

都内の法律事務所を経て、2015年にライズ綜合法律事務所へ入所。
多くの民事事件解決実績を持つ。東京弁護士会所属。

page top