立ち退き交渉・建物明渡請求
2026/09/15
法定更新とは?立ち退きの拒否や賃料を払ってもらえない場合の対処法を解説

賃貸物件の契約更新に当たって、更新拒絶を検討しているものの、具体的な条件や手続きが分からず悩んでいる方も多いのではないでしょうか。管理戸数が増えるほど更新時期の管理は複雑になり、手続きの漏れや対応の遅れが発生しやすくなります。借主の権利が強く保護されているため、貸主側の判断だけで契約を終了できない点に不安を感じる方もいるでしょう。
本記事では、更新拒絶が認められる条件や法定更新の仕組み、契約を終了させるための具体的な流れについて解説します。正しい知識を身に付けることで、適切な対応が取りやすくなります。状況に応じて専門家へ相談する判断材料としても役立ててください。
【この記事で分かること】
- 更新拒絶を行うためには、単に契約期間が満了しただけでは足りず、事前の通知と正当の事由が必要になる
- 法定更新が成立すると、契約は期間の定めのない賃貸借に切り替わる
- 更新拒絶を進める際は、通知の期限を守ることに加え、借主との交渉や立ち退き料の検討などの対応が重要になる
賃貸借契約の更新の仕組み
賃貸借契約の更新には、大きく分けて「法定更新」と「合意更新」の2種類があります。いずれも借地借家法に基づく制度であり、契約の継続方法に違いがあります。
これらの違いを理解することは、更新拒絶の可否や対応方法を判断する上で重要です。本章では、それぞれの仕組みについて順に解説します。
法定更新とは
法定更新とは、契約期間が満了する際に貸主と借主の間で更新に関する合意がなされなかった場合に、従前と同じ条件で契約が自動的に継続される制度です。これは借地借家法第26条に定められており、借主の居住や事業の継続を保護する目的があります。
契約満了の1年から6カ月前までの間に、貸主が更新拒絶の意思表示を行わなかった場合、原則として契約は法定更新されます。その後も、解約の申し入れなどがない限り、契約は継続することになります。
さらに、法定更新が成立すると契約は「期間の定めのない賃貸借契約」に切り替わります。これにより、更新のタイミングがなくなり、契約は一定の要件を満たさない限り継続しやすい状態になります。
このように、法定更新は借主保護の観点から強い効力を持つ制度です。そのため、更新拒絶を検討する場合は、事前の通知や正当事由の有無を慎重に判断する必要があります。
法定更新に至るケース
法定更新は、特別な手続きを行わなくても成立する場合があります。特に、更新に関する対応が遅れた場合に発生しやすい点に注意が必要です。
代表的なケースとして、以下のような状況が挙げられます。
- 更新案内書の送付を失念してしまった場合
- 契約満了までに双方の合意が成立しなかった場合
- 借主からの返答がなく、手続きが完了しなかった場合
- 更新拒絶後も借主が使用を続け、貸主が異議を述べなかった場合
これらは管理業務のミスや手続きの遅れによって起こることが多く、実務上も頻繁に見られるケースです。
法定更新は一度成立すると契約の継続に大きく影響するため、更新時期の管理や通知の徹底が重要になります。
借地契約の場合も法定更新が成立する
法定更新は建物賃貸借だけではなく、借地契約にも適用されます。借地借家法第5条により、借地契約でも一定の条件を満たすと契約が更新されます。
ただし、建物賃貸借とは異なり、借地契約では更新後の期間が定められている点が特徴です。具体的には、初回の更新は20年、その後は10年といった最低期間が設定されています。
借地は長期利用を前提とした制度であるため、更新拒絶が認められるハードルは高い傾向があります。建物賃貸借との違いを理解した上で対応を検討することが重要です。
合意更新とは
合意更新とは、貸主と借主が双方の合意に基づいて契約を更新する方法です。一般的には、貸主または管理会社が借主へ更新案内や合意書を送付し、手続きを進めます。
合意更新では、更新後の契約期間や賃料、更新料などの条件を柔軟に設定できます。ただし、借主に著しく不利な特約は無効となるため、内容には注意が必要です。また、契約期間を1年未満とした場合、自動的に期間の定めのない契約になる点も押さえておきましょう。
実務では、更新案内は契約満了の2〜3カ月前に送付されることが一般的です。更新料の設定もこのタイミングで合意されることが多くなります。
このように、合意更新は条件調整の機会がある一方で、双方の合意が前提となるため、交渉が重要になる手続きといえます。
法定更新になった賃貸物件は更新料が受け取れない?
法定更新が成立した場合、更新料を受け取れるのかは多くの貸主が気になるポイントでしょう。結論からいうと、原則として法定更新では借主に更新料の支払い義務はなく、貸主側から請求することは難しいとされています。
法定更新は、合意更新のように契約書を取り交わす手続きが行われません。そのため、更新料という「契約更新に伴う対価」が発生する前提がなくなる点が理由です。また法定更新後は契約が期間の定めのない賃貸借に切り替わるため、2年ごとの更新といった概念自体がなくなります。その結果、継続的に更新料を受け取ることができなくなる点に注意が必要です。ただし、契約書に「法定更新の場合でも更新料を支払う」といった特約がある場合は、更新料の請求が認められる可能性もあります。
更新料は法律上明確に定められた制度ではなく、地域や慣習に基づく側面が強い費用です。そのため、法定更新時の扱いについても一律ではありません。実務では、請求したものの借主に拒否され、トラブルに発展するケースもあります。
このように、法定更新と更新料の関係は一概に判断できないため、契約内容や過去の経緯を踏まえて慎重に対応することが重要です。
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法定更新になった賃貸物件は賃料の変更ができない?
法定更新が成立した場合でも、賃料の変更が一切できなくなるわけではありません。借地借家法第32条により、経済事情の変化や周辺の賃料相場との乖離がある場合には、貸主は賃料の増額を請求することができます。
ただし、法定更新では契約期間の区切りがなくなるため、合意更新のように契約条件を見直すタイミングが訪れません。その結果、賃料の見直しについても自然な交渉機会が減り、実務上は交渉が難しくなる傾向があります。
賃料の増額を求める場合、まずは借主との協議が必要です。合意に至らない場合は、調停や訴訟といった手続きに進むこともあります。しかし、賃料の変更は借主の生活に直接影響するため、容易に認められるとは限りません。
このように、法定更新後でも賃料の変更請求は可能ですが、実際には慎重な交渉が求められます。単に請求すれば認められるものではない点を理解しておくことが大切です。
契約の終了を申し入れるのに必要な2つの条件
貸主側から賃貸借契約を終了させるためには「事前の通知」と「正当の事由」という2つの条件を満たす必要があります。これらの要件を欠く場合、契約は法定更新され、継続することになります。
また、契約が期間の定めのあるものか、期間の定めのないものかによって、手続きの方法やタイミングが異なります。更新拒絶と解約申入れでは適用されるルールも異なるため、それぞれを区別して理解することが重要です。
ここでは、これらの条件について具体的に解説していきます。
事前の通知
契約終了に当たっては、事前の通知が重要な要件となります。まず、期間の定めがある賃貸借契約において更新拒絶を行う場合、契約満了日の1年から6カ月前までに借主へ通知する必要があります。この期限を過ぎてしまうと、法定更新が成立し、契約は継続されます。
一方、法定更新後などの期間の定めのない契約では、貸主はいつでも解約の申し入れを行うことができます。ただし、解約の申し入れをした場合でも、契約は直ちに終了するわけではありません。通知から6カ月が経過した時点で契約が終了します。
また、6カ月経過後も借主が物件の使用を続けている場合には、貸主は遅滞なく異議を述べる必要があります。異議を述べないまま放置すると、再び契約が継続してしまうおそれがあります。
通知方法については、後日のトラブルを防ぐためにも内容証明郵便など記録に残る方法を利用することが望ましいでしょう。通知の不備や漏れは契約終了の可否に直結するため、慎重に対応する必要があります。
正当の事由
更新拒絶や解約の申し入れを行うためには、単に通知を行うだけでは足りず「正当の事由」が必要になります。正当の事由とは、貸主側が契約を終了させる合理的な理由があるかどうかを判断するための基準です。
この判断は一つの要素だけで決まるものではなく、複数の事情を総合的に考慮して行われます。主な判断要素は以下の通りです。
|
判断要素 |
内容 |
|
使用の必要性 |
貸主・借主それぞれが物件を必要とする事情 |
|
従前の経過 |
契約締結の経緯や賃料支払い状況など |
|
利用状況 |
用途違反や使用方法の適切性 |
|
建物の現況 |
老朽化や修繕の必要性 |
|
財産上の給付 |
立ち退き料の有無や金額 |
例えば、貸主が建物の建て替えを必要としている場合でも、借主が長年居住しており生活基盤となっている場合は、正当の事由が認められにくいことがあります。一方で、立ち退き料を提示することで借主の不利益を補い、正当の事由が補完されるケースもあります。
ただし、立ち退き料を支払えば必ず認められるわけではありません。貸主側の必要性が著しく低い場合には、高額な立ち退き料を提示しても更新拒絶や解約が認められないこともあります。
このように、正当の事由の判断は個別事情に大きく左右され、判例の蓄積を踏まえた専門的な判断が求められます。判断に迷う場合は、早い段階で専門家へ相談することが重要です。
争点になりやすい判断基準
正当の事由の判断においては、特に争点となりやすいポイントがいくつか存在します。これらを理解しておくことで、実務上のリスクを把握しやすくなります。
まず、物件が居住用か事業用かによって判断は大きく異なります。居住用の場合は借主の生活基盤としての重要性が高く評価されるため、貸主側の主張が認められにくい傾向があります。
次に、建物の老朽化の程度も重要な要素です。倒壊の危険があるなど著しい老朽化が認められる場合は、正当の事由として評価されやすくなります。ただし、修繕によって対応可能な場合は、他の事情も含めて総合的に判断されます。
さらに、これまでのトラブルの有無も判断に影響します。賃料の滞納や近隣トラブルがある場合は、貸主側に有利に働く可能性があります。
これらの要素はいずれも単独で結論が決まるものではなく、あくまで判断材料の一部です。複数の事情を踏まえて総合的に判断される点を理解しておくことが重要です。
借主有責の場合は契約の解除を求められる
更新拒絶とは別に、借主に契約違反がある場合には、貸主側から契約の解除と建物の明け渡しを求めることができます。これは民法541条や612条2項に基づくものであり、賃料不払い、無断転貸、用法義務違反などが典型的な例です。
ただし、これらの違反があるだけで直ちに契約解除が認められるわけではありません。重要となるのは、その違反が貸主と借主の信頼関係を破壊する程度に至っているかどうかです。これを「信頼関係破壊の法理」といいます。
例えば、軽微な遅延や一時的な違反であれば、契約解除は認められにくい傾向があります。一方で、継続的な違反や悪質な行為がある場合は、契約の継続が困難と判断される可能性が高まります。
更新拒絶が正当事由を前提とするのに対し、契約解除は借主の違反を前提とする点に違いがあります。ただし、実務では解除が認められるハードルも低くはなく、慎重な判断が求められます。
以下では、具体的にどのようなケースで信頼関係の破壊と判断されるのかを解説します。
賃料や更新料の不払い
賃料や更新料の不払いは、契約解除の可否を判断する上で重要な要素の一つです。ただし、単に不払いがあるだけで契約解除が認められるわけではありません。
判断に当たっては、滞納額や滞納期間に加え、滞納に至った理由やこれまでの支払い状況などが総合的に考慮されます。例えば、短期間の滞納であっても、再三の催告に応じず支払いが遅れ続けている場合には、信頼関係の破壊が認められることがあります。
一方で、長期間の滞納があったとしても、事情によっては契約解除が認められないケースも存在します。このように、単純に「何カ月滞納したか」だけで判断されるものではありません。
また貸主側が適切に催告を行っているかどうかも重要なポイントです。催告を怠った場合、解除が認められにくくなる可能性があります。
このように、賃料不払いによる契約解除は個別事情に大きく左右されるため、状況に応じた対応が求められます。
無断転貸
借主が賃貸物件を第三者に貸し出す場合、事前に貸主の承諾を得る必要があります。これは民法612条で定められており、無断転貸は契約違反に当たります。
無断転貸は、貸主との信頼関係を損なう行為と評価されやすく、契約解除が認められるケースも多く見られます。特に、第三者に全面的に使用させている場合などは、背信行為として判断されやすい傾向があります。
ただし、無断転貸があったとしても、全てのケースで解除が認められるわけではありません。例えば、形式的に権利が移転していても、実際の使用状況に大きな変化がなく、賃料の支払いも問題なく行われている場合には、解除が否定されることもあります。
このように、無断転貸の有無だけでなく、その実態や影響が重視されます。契約解除を検討する際には、具体的な状況を丁寧に確認することが重要です。
用法義務違反
用法義務違反とは、契約で定められた用途や条件に反して物件を使用することをいいます。具体的には、無断での増改築、用途変更、ペット飼育禁止特約への違反などが該当します。
賃貸借契約では、契約条項に違反した場合に契約解除が可能である旨が定められていることが一般的です。しかし、ここでも重要となるのは信頼関係の破壊が認められるかどうかです。
例えば、居住用として契約しているにもかかわらず事業用として利用している場合や、契約内容と大きく異なる営業を行っている場合は、契約の継続が困難と判断される可能性があります。
またペット飼育に関するトラブルも注意が必要です。仮に明確な禁止特約がない場合でも、飼育方法や周囲への影響によっては契約解除が認められることがあります。過度な飼育により建物の損傷や衛生問題が生じている場合などは、その典型例といえます。
一方で、軽微な違反や一時的な行為であれば、解除が認められないこともあります。違反の程度や継続性、周囲への影響などを総合的に判断する必要があります。
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借主へ賃貸物件からの立ち退きを要請する流れ
契約を終了させる方法には、更新拒絶、解約申入れ、債務不履行による契約解除の3つがあります。それぞれで手続きや流れが異なるため、状況に応じた対応が必要です。
いずれの場合も、借主との交渉や法的手続きが伴う可能性があるため、全体の流れを理解しておくことが重要です。以下では、ケースごとの具体的な手順を解説します。
期間の定めのある契約について更新拒絶をする場合
期間の定めがある契約で更新拒絶を行う場合、まず契約満了の1年から6カ月前までに、更新を行わない旨を借主へ通知する必要があります。この通知では、退去期限や正当事由についても丁寧に説明することが重要です。
次に、借主との話し合いを行い、双方の事情を踏まえた合意を目指します。合意に至った場合は、内容を書面にまとめ、合意書として残しておきます。
一方、話し合いがまとまらない場合には、調停や訴訟といった法的手続きの検討が必要になります。これらの手続きは時間や手間がかかるため、早めの対応が求められます。
通知書の作成や交渉に不安がある場合は、弁護士に相談することでスムーズに進められることもあります。
期間の定めのない契約について、解約の申し入れをする場合
期間の定めのない契約では、貸主はいつでも解約の申し入れを行うことができます。ただし、通知後すぐに契約が終了するわけではなく、6カ月が経過した時点で終了となります。
そのため、希望する退去日がある場合は、そこから逆算して通知を行う必要があります。通知後は借主との話し合いを行い、円満な解決を目指します。
借主が解約に応じない場合には、調停や訴訟を検討することになります。また、6カ月経過後も借主が居住を続けている場合には、内容証明郵便などで異議を述べることが重要です。
実務では、立ち退き料の金額が争点となるケースも多く、場合によっては不動産鑑定士による評価が行われることもあります。
債務不履行を理由に契約の解除をする場合
債務不履行を理由に契約を解除する場合、まずは借主に対して履行を求める「催告」を行います。例えば、滞納している賃料の支払いや、契約違反行為の是正を求める内容です。
催告を行っても履行が見込めない場合には、契約解除の意思表示を行います。法律上は形式に制限はありませんが、後日の証拠となるよう内容証明郵便などで通知することが望ましいといえます。
その後も借主と話し合いを行い、任意の明け渡しを目指します。応じない場合には、調停や訴訟に進むことになります。
解除の正当性については、借主に丁寧に説明することが重要です。場合によっては、弁護士へ相談し、第三者を交えた解決を図ることも有効です。
まとめ
賃貸借契約において、貸主側から契約を終了させるためには、更新拒絶、解約申入れ、契約解除といった複数の方法があります。それぞれに要件や手続きがあり、事前の通知や正当事由の有無が重要なポイントとなります。
特に法定更新が成立した場合は、契約が継続しやすくなるため、対応を誤ると長期化する可能性があります。適切なタイミングで通知を行い、借主との交渉を進めることが重要です。
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このページの監修弁護士
弁護士
三上 陽平(弁護士法人ライズ綜合法律事務所)
中央大学法学部、及び東京大学法科大学院卒。
2014年弁護士登録。
都内の法律事務所を経て、2015年にライズ綜合法律事務所へ入所。多くの民事事件解決実績を持つ。第一東京弁護士会所属。


