債務整理

2026/09/28

個人再生すると退職金はどうなる?退職金見込額証明書は何に使う?

個人再生すると退職金はどうなる?退職金見込額証明書は何に使う?

個人再生は、裁判所を通じて借金を減額し、原則3年で分割返済する手続きです。自己破産とは異なり、財産を処分せずに借金問題の解決を目指せる点に特徴があります。

ただし、退職金がある場合は注意が必要です。退職金そのものを直ちに失うわけではありませんが、退職金見込額の一部が清算価値として評価され、個人再生後の返済総額に影響することがあります。

まだ受け取っていない退職金まで考慮されると聞き、不安を感じる方もいるでしょう。本記事では、退職金の評価方法や必要書類、返済負担が重くなった場合の対処法を解説します。

【この記事で分かること】

  • 個人再生をした場合の退職金の扱いや、清算価値として評価される仕組み
  • 退職金見込額が最低弁済額に影響するケースと、受け取り状況ごとの計上割合
  • 退職金見込額の調べ方や、返済負担が重い場合に検討できる対処法

個人再生をすると退職金はどうなる?

個人再生をしても、退職金が直ちに没収されたり、会社から受け取れなくなったりするわけではありません。個人再生は、自己破産のように財産を換価して債権者へ配当する手続きではないためです。

一方で、退職金は本人が保有する財産の一部として評価されます。まだ退職していない場合でも、現時点で退職したと仮定した退職金見込額の一部が、清算価値に含まれる可能性があります。

清算価値とは、保有する財産を処分したと仮定した場合の価値です。個人再生では、原則として清算価値を下回る返済計画を立てることはできません。

そのため、退職金見込額が高額であると、個人再生後の返済総額が増える場合があります。退職金そのものを失うわけではないものの、返済額を左右する重要な要素になるでしょう。

なお、個人再生を申し立てたことが勤務先へ当然に通知されるわけではありません。ただし、退職金見込額証明書の発行を依頼した際に、使用目的を尋ねられる可能性はあります。会社に知られることが不安な場合は、弁護士と相談し、規程から算出する方法を利用できないか確認すると安心です。

個人再生の最低弁済額と退職金の関係

個人再生では、手続き後に最低限返済しなければならない金額を「最低弁済額」と呼びます。退職金が関係するのは、主に保有財産の価値をもとに算出する清算価値の基準です。

例えば、借金総額による基準では120万円の返済で済む場合でも、退職金を含めた清算価値が200万円であれば、原則として200万円以上を返済する必要があります。

このように、退職金は直接処分されなくても、最低弁済額を押し上げる要因になり得ます。勤続年数が長い方や、退職金制度が充実している会社に勤めている方は、早めに見込額を確認しておくとよいでしょう。

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個人再生の最低弁済額が決まる基準

個人再生の最低弁済額は、利用する手続きによって比較する基準が異なります。

小規模個人再生では、借金総額による基準と保有資産の価値による基準を比較し、高い方が最低弁済額です。

給与所得者等再生では、これらに可処分所得の2年分という基準が加わります。3つの基準のうち、最も高い金額を返済しなければなりません。

借金の総額による基準

借金の総額による基準とは、借金額に応じて法律上定められた最低限の返済額です。住宅ローンを除いた借金総額が5,000万円以下であることが、個人再生を利用する要件の一つになります。

借金総額ごとの最低弁済額は、以下が目安です。

借金総額

最低弁済額

100万円未満

全額

100万円以上500万円以下

100万円

500万円超1,500万円以下

借金総額の5分の1

1,500万円超3,000万円以下

300万円

3,000万円超5,000万円以下

借金総額の10分の1

例えば、借金総額が600万円であれば、この基準による最低弁済額は120万円です。ただし、清算価値が120万円を上回る場合は、清算価値以上の返済が必要になります。

保有する資産の価値による基準

保有する資産の価値による基準は、本人が所有する財産を処分したと仮定した場合の価値をもとに、最低弁済額を決めるものです。この価値を清算価値と呼びます。

清算価値に含まれる主な財産は、現金、預貯金、自動車、不動産、生命保険の解約返戻金などです。退職金見込額の一部も、状況に応じて評価対象です。

個人再生では、自己破産をした場合よりも債権者に不利な結果とならないよう、清算価値以上を返済する必要があります。そのため、財産が多いほど借金の減額幅は小さくなりやすいでしょう。

可処分所得による基準

可処分所得による基準は、給与所得者等再生を利用する場合に適用されます。小規模個人再生では用いない基準です。

ここでいう可処分所得とは、収入から税金や社会保険料、法律で定められた最低限度の生活費を差し引いた金額です。給与所得者等再生では、その2年分以上を返済する必要があります。

例えば、借金総額による基準が120万円、清算価値が200万円、可処分所得の2年分が250万円なら、最低弁済額は250万円です。

給与所得者等再生は、一定の要件を満たせば債権者の不同意による影響を受けにくい反面、可処分所得の基準によって返済額が高くなることがあります。

個人再生で退職金が清算価値に含まれる割合

退職金が清算価値に含まれる割合は、受け取り状況や退職の具体性によって異なります。一般的な目安は以下の通りです。

退職金の状況

清算価値に含まれる割合の目安

すでに退職金を受け取っている場合

手元に残っている金額の全額

近く退職する予定の場合

退職金見込額の4分の1

現時点で退職予定がない場合

退職金見込額の8分の1

ただし、退職金の評価方法や除外される基準は、裁判所によって運用が異なる場合があります。具体的な金額は、申し立てをする地域の運用を踏まえて確認することが大切です。

すでに退職金を受け取っている場合

すでに退職金を受け取っている場合、退職金債権としての評価割合は適用されません。銀行口座に入金された金額は、通常の預貯金や現金として扱われます。

例えば、退職金300万円を受け取り、手続き時に250万円が口座に残っていれば、その残高は財産評価の対象です。ただし、実際に清算価値へ計上される金額は、他の財産や裁判所の運用などによって変わることがあります。

受け取り済みの場合は、8分の1や4分の1ではなく、現金・預貯金として評価される点に注意が必要です。

近く退職する予定の場合

退職日が決まっている、退職手続きが進んでいるなど、近く退職金を受け取ることが具体的に見込まれる場合は、退職金見込額の4分の1が清算価値に含まれるのが一般的です。

退職金債権は原則として4分の3が差押禁止であり、残る4分の1が評価対象です。

例えば、退職金見込額が800万円であれば、その4分の1に当たる200万円が清算価値に含まれる可能性があります。

単に退職を考えているだけでは、直ちに4分の1が計上されるとは限らないでしょう。退職の時期や確実性を踏まえて判断されます。

現時点で退職予定がない場合

退職予定がない場合は、現時点で自己都合退職したと仮定した退職金見込額をもとに評価します。将来実際に受け取れるか不確実であることから、見込額の8分の1を清算価値に含める扱いが一般的です。

例えば、退職金見込額が800万円なら、8分の1に当たる100万円が評価対象となる可能性があります。

8分の1とするのは、退職金の4分の3が差押禁止であることに加え、退職までに制度変更や退職金の減額などが生じる可能性を考慮するためです。

裁判所によっては、算出額が一定額以下なら清算価値に含めない運用もあるでしょう。少額財産の基準は地域によって異なるため、具体額は申立先で確認する必要があります。

退職金見込額の調べ方

退職金見込額は、勤務先に証明書を発行してもらう方法と、就業規則や退職金規程などをもとに自分で計算する方法で確認できます。

いずれの方法でも、裁判所に対して金額の根拠を客観的に説明できる資料が必要です。

退職金見込額証明書を発行してもらう

退職金見込額を正確に確認するには、勤務先へ退職金見込額証明書の発行を依頼する方法があります。これは、現時点で退職した場合に支給される見込額を会社が証明する書類です。

個人再生では、退職金見込額の一部が清算価値に影響するため、裁判所から提出を求められることがあります。退職金規程が複雑な会社では、証明書を取得する方が確実でしょう。

証明書には決まった全国共通の書式があるわけではありません。一般には、氏名、基準日、その日に自己都合退職した場合の見込額、会社名などが記載されます。裁判所や代理人から指定された事項がある場合は、それに沿って勤務先へ依頼する必要があります。

勤務先に個人再生を知られたくない場合でも、証明書の取得にあたって使途を細かく説明する義務はないため、「資産状況を確認したい」「将来の生活設計を考えたい」といった範囲で依頼することもできます。一方で、虚偽の理由を伝えることは避けましょう。後から事実が分かった際に、勤務先との信頼関係を損なうおそれがあります。

発行までに時間がかかる会社もあるため、申し立てを検討している場合は早めに準備するとよいでしょう。

就業規則や雇用契約書を確認する

勤務先に証明書を依頼しにくい場合は、就業規則、退職金規程、雇用契約書などから見込額を算出できることがあります。

退職時の基本給、勤続年数、支給率などを用いる制度であれば、規程に沿った計算が可能です。ポイント制の場合は、社内システムや通知書に見込額が表示されているケースもあります。

自分で計算する場合は、金額だけを申告するのではなく、退職金規程の写しや計算過程が分かる資料も必要です。

退職金制度がない会社では、就業規則や勤務先の証明書などにより、制度が存在しないことを説明するよう求められる場合があります。

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退職金がある人が個人再生を進める際の注意点

退職金がある人は、見込額を正確に申告し、返済計画への影響を確認する必要があるでしょう。退職金が高額でも個人再生を利用できないわけではありませんが、返済総額や毎月の負担が増える可能性があります。

退職金を隠そうとしない

退職金見込額が高いと返済額が増えるため、制度の存在や金額を隠したいと考える方もいるかもしれません。

しかし、個人再生では、裁判所への正確な財産申告が必要です。退職金を意図的に隠したり、虚偽の説明をしたりすると、再生計画が認可されない恐れがあります。

退職金の有無や金額に不安がある場合は、隠さず専門家へ伝えることが重要です。

返済計画の履行可能性を十分に確認する

退職金によって清算価値が増えると、個人再生後の返済総額も大きくなる場合があります。返済総額が増えれば、毎月の支払額も高くなるでしょう。

個人再生では、再生計画に基づき、原則3年で返済を続けます。特別な事情があれば最長5年まで延長できることもありますが、安定して支払える見込みが必要です。

手続き前に収入と生活費を整理し、無理なく返済を継続できるか確認しておく必要があります。

最低弁済額を返済期間で割った金額だけではなく、住宅ローンや税金、養育費など、個人再生後も支払いが続く項目も考慮しなければなりません。家計に余裕がない状態で再生計画を立てると、急な出費をきっかけに返済が滞る恐れがあります。

裁判所により運用が異なる場合がある

退職金の基本的な評価方法は共通していますが、必要書類や少額財産の扱いなど、細かな運用は裁判所ごとに異なるでしょう。

同じ退職金見込額でも、申立先によって追加資料を求められたり、評価額の扱いが変わったりする可能性があります。

申立代理を依頼する場合は、個人再生に詳しい弁護士へ相談するとよいでしょう。

個人再生での企業年金や公的年金の扱い

個人再生では、企業年金や公的年金が清算価値に含まれるかも確認しておく必要があります。制度の種類によって扱いが異なるため、自身が加入している制度を把握しておくことが大切です。

確定拠出年金や確定給付企業年金

確定拠出年金法や確定給付企業年金法に基づく年金の受給権は、原則として差し押さえが禁止されており、通常は清算価値に含まれません。

積立額が高額でも、退職金見込額のように4分の1や8分の1を計上する扱いとは別です。

ただし、会社の制度を説明するため、加入状況が分かる資料の提出を求められることがあります。また企業年金と退職一時金を併用している場合、退職一時金部分は退職金として評価される可能性があります。

会社独自の退職年金や個人年金保険は、制度によって扱いが異なるでしょう。名称だけで判断せず、契約内容を確認する必要があります。

厚生年金や国民年金

厚生年金や国民年金など、公的年金の受給権も原則として差押禁止です。そのため、将来受け取る予定の年金を理由に、最低弁済額が増えることは通常ありません。

一方、すでに支給された年金が銀行口座や手元に残っている場合は、現金や預貯金としての評価対象です。

ただし、実際に清算価値へ含まれる金額は、口座残高や他の財産、裁判所の運用などを踏まえて判断されます。

退職金により最低弁済額の負担が重い場合の対処法

退職金の影響で毎月の返済が難しくなる場合は、返済期間の延長や、他の債務整理手続きへの切り替えを検討します。

どの方法が適しているかは、借金総額、収入、保有財産、住宅や車を残したいかなどによって異なるでしょう。

退職金見込額だけを理由に手続きを決めるのは適切ではありません。住宅ローン特則を利用したいか、保証人に請求が及ぶ借金があるか、将来も安定した収入を得られるかといった事情も含め、総合的に比較する必要があります。

返済期間を延長できないか検討する

個人再生の返済期間は原則3年ですが、特別な事情がある場合は最長5年まで延長できることがあります。

例えば、300万円を3年で返済する場合は月約8万3,000円ですが、5年なら月5万円です。返済総額は変わらなくても、毎月の負担を抑えられる点が利点です。

ただし、延長は必ず認められるわけではありません。延長が必要な事情と、延長後であれば返済を続けられる見込みを示す必要があります。

自己破産へ切り替える

退職金を含めた清算価値が高く、個人再生による減額効果が小さい場合は、自己破産への切り替えも選択肢です。

自己破産では、免責が認められれば、原則として借金の支払義務がなくなる点が特徴です。一方、持ち家は原則として処分の対象となり、一定以上の価値がある車や受け取り済みの退職金なども処分される可能性があります。

また手続き中は一部の職業や資格に制限が生じる場合もあるでしょう。財産を残したい事情がある方は、個人再生との違いを踏まえて判断する必要があります。

任意整理へ切り替える

退職金の影響を避けたい場合は、任意整理へ切り替える方法もあります。任意整理は裁判所を通さず、債権者と交渉して将来利息のカットや分割返済を目指す手続きです。

任意整理には、個人再生のような清算価値保障原則がない点が特徴です。そのため、退職金見込額が高額でも、それを理由に返済額が引き上げられることは基本的にありません。

対象にする債権者を選べるため、保証人付きの借金や住宅ローン、自動車ローンなどを外せる場合もあるでしょう。

ただし、任意整理では借金の元本が大幅に減るとは限りません。残った元本を3年から5年程度で返済できる収入が必要です。

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という状況でもご相談いただけます。
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まとめ

個人再生をしても、退職金そのものが直ちに没収されるわけではないでしょう。ただし、退職金見込額の一部は清算価値に含まれ、手続き後の返済総額に影響することがあります。

すでに受け取った退職金は、現金や預貯金としての評価対象です。退職金の受給が具体的に見込まれる場合は見込額の4分の1、現時点で退職予定がない場合は8分の1が評価されるのが一般的です。

退職金によって返済負担が重くなる場合は、返済期間の延長や、自己破産・任意整理への切り替えも検討する必要があります。

ライズ綜合法律事務所では、月間4,000件、年間5万件の相談実績があり、借金問題に関する相談を受け付けています。電話やメール、LINEからのお問い合わせに対応しており、相談料は無料です。退職金が個人再生にどのような影響を与えるか不安な方は、お気軽にお問い合わせください。

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このページの監修弁護士

弁護士

久松亮一(弁護士法人ライズ綜合法律事務所)

東京大学法学部、及び法政大学法科大学院卒。
2012年弁護士登録。

弁護士歴10年以上の知見を活かし、法律の専門家として、債務整理・慰謝料請求・立ち退き問題など、同事務所が取り扱う幅広い法律問題に従事している。