債務整理
2026/09/30
自己破産でiDeCoは差し押さえの対象になる?NISAや他の商品の取り扱いは?

自己破産を検討しているものの、老後のために積み立てたiDeCoまで失うのではないかと不安を感じている方もいるかもしれません。自己破産により現在の生活を立て直せたとしても、老後資金がなくなれば将来への心配は残ります。
iDeCoの給付を受ける権利は法律で保護されており、自己破産をしても積立資産は原則として処分されません。ただし、すでに給付金を受け取っている場合や、税金を滞納している場合は扱いが異なります。
本記事では、自己破産におけるiDeCoの取り扱いや、NISA・年金・退職金などへの影響を解説します。老後資金を残せるか不安な方や、自己破産に踏み切るべきか迷っている方は参考にしてください。
【この記事で分かること】
- 自己破産をした場合のiDeCoの取り扱いと、例外的に差し押さえの対象となるケース
- 国民年金や企業年金、退職金、民間の個人年金などの扱い
- NISAや株式、生命保険、預貯金などの金融資産への影響と注意点
自己破産でiDeCoは処分の対象になる?
自己破産をしても、iDeCoで積み立てている資産は原則として処分されません。
自己破産では、破産手続開始時に所有している財産が「破産財団」に組み入れられます。破産管財人が財産を売却・換金し、その代金を債権者へ配当する仕組みです。
ただし、法律で差し押さえが禁止されている財産は、原則として破産財団に含まれません。iDeCoの給付を受ける権利についても、確定拠出年金法により次の行為が禁止されています。
- 第三者への譲渡
- 借金の担保としての提供
- 債権者による差し押さえ
そのため、iDeCoの積立額が高額であっても、自己破産を理由に強制解約されたり、破産管財人によって換金されたりすることは原則としてありません。老後に給付を受ける権利は、そのまま維持できます。
なお、処分されない財産であっても申告は必要です。iDeCoへ加入している事実や残高は、裁判所へ正確に伝えなければなりません。
自己破産でiDeCoが処分される例外的なケース
iDeCoの受給権は法律で保護されていますが、関連する財産が常に守られるとは限りません。ここでは、例外的に差し押さえや換価の問題が生じるケースを解説します。
すでに給付金を受け取っている場合
iDeCoから受け取った給付金は、原則として通常の現金や預貯金として扱われます。
法律で差し押さえが禁止されているのは、基本的にiDeCoの給付を受ける権利です。給付金をすでに受け取り、銀行口座へ振り込まれた後は、iDeCoの受給権としての性質を失います。
例えば、自己破産の申立前にiDeCoの一時金を受け取り、預金口座に300万円が残っている場合、その預金は一般の財産として申告しなければなりません。裁判所の運用や他の財産にもよりますが、預金の合計が20万円を超えると、原則としてその全体が換価対象になる可能性があります。
給付金を現金で保管している場合も、無条件で全て残せるわけではありません。受給時期が申し立ての前後に重なる場合は、財産としての扱いを弁護士へ確認するとよいでしょう。
税金を滞納している場合
税金を滞納している場合は、国税滞納処分などによってiDeCoの受給権が差し押さえられる可能性があります。
確定拠出年金法では、受給権の差し押さえを原則として禁止する一方、国税滞納処分による差し押さえを例外として認めています。所得税や住民税などを滞納し、滞納処分が行われるケースでは、自己破産をしてもiDeCoが必ず守られるとは限りません。
また税金は自己破産による免責の対象外となる「非免責債権」です。免責許可を受けても、原則として納付義務は残ります。
一括での納付が難しいときは、税務署や自治体の窓口へ早めに相談することが大切です。事情に応じて、分割納付や猶予制度を利用できる場合があります。
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自己破産でのiDeCo以外の年金や退職金の扱い
年金や退職金であっても、制度によって自己破産時の取り扱いは異なります。ここでは、代表的な制度ごとに処分の可能性を確認します。
国民年金・厚生年金
国民年金や厚生年金の受給権は、自己破産をしても原則として処分されません。
国民年金法と厚生年金保険法では、年金を受け取る権利の譲渡や担保提供、差し押さえを禁止しています。そのため、自己破産を理由として将来の年金受給資格を失ったり、受給額が減らされたりすることはありません。
すでに年金を受給している方も、自己破産後に引き続き受け取れます。ただし、口座へ振り込まれた後は通常の預貯金として扱われるため、破産手続開始時の残高によっては換価対象となる可能性があるでしょう。
企業型確定拠出年金
企業型確定拠出年金も、iDeCoと同じ確定拠出年金法に基づく制度です。給付を受ける権利は法律で保護されており、自己破産をしても原則として換価処分されません。
勤務先が拠出した掛金などを加入者自身が運用する制度ですが、運用残高が高額でも破産管財人が売却することはできないのが基本です。
確定給付企業年金についても、受給権の譲渡・担保提供・差し押さえは禁止されています。ただし、退職時などに一時金を受け取った後は、先述したiDeCoの給付金と同様に一般の財産として扱われます。
民間の個人年金
生命保険会社などと任意で契約する個人年金保険は、公的年金やiDeCoと同じ扱いにはなりません。
民間の個人年金保険には、自己破産時の換価を一律に防ぐ差押禁止規定がないためです。解約した場合に受け取れる「解約返戻金」が財産として評価され、金額によっては契約を解約される可能性があります。
具体的な判断基準は、後述する貯蓄型の生命保険と同様です。解約返戻金が少額であれば、契約を継続できる場合もあるでしょう。
会社の退職金
会社から受け取る退職金は、自己破産において財産として扱われます。ただし、必ず退職して全額を破産管財人へ渡すわけではありません。
退職金の一般的な評価方法は、次の通りです。
|
退職金の状況 |
一般的な取り扱い |
|
すでに受け取り済み |
現金や預貯金として評価される |
|
退職済み・退職予定で未受給 |
おおむね4分の1が換価対象となり得る |
|
在職中で退職予定がない |
おおむね8分の1が換価対象となり得る |
在職中で退職予定がない場合に8分の1とするのは、将来の受給が確定していないことや、退職金請求権の4分の3が差押禁止の範囲になることなどを踏まえた実務上の評価方法です。
例えば、退職金見込額が800万円であれば、8分の1に当たる100万円が財産として評価される可能性があります。もっとも、実際に退職を求められるとは限りません。本人や親族が換価対象額に相当する金銭を破産財団へ組み入れることで、退職を避けられる場合もあります。
なお、4分の1や8分の1という割合は全国一律の基準ではありません。申立先の裁判所や退職時期などによって扱いが異なります。
小規模企業共済
小規模企業共済は、小規模企業の経営者や個人事業主などの退職金制度です。小規模企業共済の共済金や解約手当金を受け取る権利は、自己破産をしても原則として処分されません。
そのため、破産管財人が契約を強制的に解約し、解約手当金を債権者への配当に充てることも基本的にはできません。ただし、税金の滞納処分は例外です。また共済金等を受け取った後は、現金や預貯金として扱われます。
自己破産でのNISA口座や金融資産の扱い
iDeCoとは異なり、NISA口座の資産や預貯金などには差し押さえを禁止する規定がありません。ここでは、金融資産ごとの基本的な取り扱いを解説します。
NISA口座内の株式・投資信託
NISA口座で保有する株式や投資信託は、自己破産における換価処分の対象となるのが原則です。
NISAは、株式や投資信託から得た利益を一定の範囲で非課税にする制度に過ぎません。口座内の資産を差し押さえや換価から保護する仕組みではないため、破産手続開始時の時価に基づいて財産として評価されます。
一定以上の価値があれば、破産管財人によって売却され、債権者への配当に充てられるでしょう。新NISAだけではなく、旧制度の一般NISAやつみたてNISAで取得した金融商品も同様です。
少額であっても申告は必要ですが、実際に換価されるかどうかは裁判所の運用や他の財産との合計額によって異なります。
通常の証券口座にある株式・投資信託
特定口座や一般口座で保有する株式・投資信託も、NISA口座内の資産と同様に換価処分の対象となるのが原則です。NISAとの主な違いは税制上の取り扱いであり、自己破産時の扱いに大きな差はありません。
上場株式や投資信託は市場価格で評価されます。未上場株式についても、換金が難しいからといって申告が不要になるわけではありません。
自己破産の申し立てでは、保有銘柄や数量、評価額などが分かる残高証明書や取引報告書を提出します。申し立て直前に売却して代金を隠したり、一部の債権者だけに返済したりすると、手続きに悪影響を及ぼす恐れがあります。
貯蓄型の生命保険
生命保険は、解約した場合に受け取れる解約返戻金の金額を基準に評価されます。
掛け捨て型の保険など、解約返戻金がない契約は財産的価値がないため、通常は換価処分の対象になりません。一方、次のような貯蓄性のある保険は、解約返戻金が発生する場合があります。
- 終身保険
- 養老保険
- 学資保険
- 個人年金保険
解約返戻金が裁判所の定める基準を超えている場合は、保険を解約し、その返戻金を破産財団へ組み入れるのが原則です。複数の保険契約があるときは、解約返戻金を合算して判断する裁判所もあります。
解約返戻金が20万円を超えるかどうかを一つの目安とする裁判所があります。ただし、全国一律の法律上の基準ではありません。
また解約返戻金に相当する金額を別の方法で破産財団へ組み入れることで、契約を維持できるケースもあります。病気などの事情から保障を継続する必要性が高い場合は、自由財産の拡張が認められる可能性もあるでしょう。
預貯金
銀行や信用金庫などに預けているお金は、原則として自己破産における財産に含まれます。普通預金だけではなく、定期預金や外貨預金なども申告が必要です。
ただし、預貯金が少額であれば、全て換価されるとは限りません。裁判所によっては、預貯金の合計額が20万円以下であれば換価しない運用を採用しています。
20万円という金額は、破産法に定められた全国共通の上限ではありません。現金や保険の解約返戻金など、他の財産と合算して判断する裁判所もあります。
なお、申し立て直前に預金を引き出しても、換価を避けられるわけではありません。引き出したお金は現金として申告する必要があり、使途について説明を求められることもあります。
現金
自己破産をしても、手元にある現金を全て処分されるわけではありません。破産法では、一定額の現金を自由財産として手元に残すことを認めています。
具体的には、原則として99万円以下の現金が自由財産に該当します。自己破産後の当面の生活費を確保し、生活を立て直せるようにするためです。
ただし、ここでいう現金には銀行口座に預けているお金は含まれません。預貯金を含めた財産全体について、99万円まで必ず残せるという意味でもないため、混同しないことが大切です。
どこまで手元に残せるかは、自由財産の拡張や申立先の裁判所の運用も踏まえて判断されます。
自己破産に際してiDeCo加入者がやってはいけないこと
iDeCoが原則として換価されないからといって、自由な積み立てや申告漏れが許されるわけではありません。ここでは、手続きに悪影響を及ぼす恐れがある行為を解説します。
返済が苦しい状況で掛金を増やす
借金を返済できない状態になってから、iDeCoの掛金を増額する行為は避けたほうがよいでしょう。
iDeCoへの拠出は、特定の債権者だけに返済する「偏頗弁済」そのものではありません。しかし、債権者への返済に充てるべき収入を、差押禁止財産であるiDeCoへ移したとみられる可能性があります。
例えば、返済を滞納しているにもかかわらず、申し立て直前に掛金を上限まで増やした場合です。財産を債権者から守る目的があったのではないかと疑われ、増額の経緯や資金の出所について説明を求められるでしょう。
掛金の増額だけで、直ちに免責不許可となるわけではありません。ただし、財産を不当に減少させたり隠したりする意図が認められれば、免責の判断に影響する恐れがあります。
返済や生活費の確保が難しい状況では、掛金の増額を控え、拠出の一時停止も検討する必要があります。家計の状況を弁護士へ伝え、適切な対応を確認することが重要です。
iDeCoへの加入を隠そうとする
iDeCoが換価処分の対象にならない場合でも、加入している事実や資産額を隠してはいけません。
自己破産を申し立てる際は、処分される財産だけではなく、保有する財産や収入の状況を正確に申告する必要があります。裁判所や破産管財人が、差押禁止財産に該当するかどうかを判断するためです。
iDeCoの存在は、預金口座からの掛金の引き落としや給与明細、年末調整・確定申告の資料などから判明する可能性があります。発覚すれば、他にも申告していない財産があるのではないかと疑われ、調査が長引くかもしれません。
財産を意図的に記載しなかった場合、財産隠しと判断されて免責が認められない恐れもあります。申し立て時には、残高や運用状況が分かる資料を準備し、漏れなく申告することが大切です。
毎月の返済が
不安になってきた方へ
いまは「どう対処すればよいか分からない」
という状況でもご相談いただけます。
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自己破産とiDeCoについてよくある疑問
自己破産後もiDeCoの口座を維持したり、新たに加入したりできるのか気になる方もいるでしょう。ここでは、iDeCoの利用や配偶者への影響についてよくある疑問に回答します。
自己破産でiDeCoの口座は凍結される?
自己破産をしたことだけを理由に、iDeCoの口座が凍結されたり、強制的に解約されたりすることは原則としてありません。
iDeCoの受給権は法律で保護されているため、破産管財人が口座内の資産を売却し、債権者への配当に充てることもできないのが基本です。
ただし、掛金の引き落としに使っている普通預金口座は、iDeCo口座とは別に考える必要があります。借入先と同じ銀行に預金口座がある場合は、一時的に凍結される可能性があるためです。
個人払込で引き落としができなかった月の掛金は、後から追納できません。掛金の拠出を続ける場合は、引き落とし口座への影響を弁護士へ確認しておくとよいでしょう。
自己破産後にiDeCoへ新規加入できる?
自己破産後であっても、加入資格を満たしていればiDeCoへ新規加入できます。自己破産歴や信用情報機関への事故情報の登録は、iDeCoの加入を直接制限する条件ではありません。
クレジットカードやローンとは異なり、iDeCoの加入時に返済能力を確認する信用審査は行われないためです。免責許可が確定し、生活状況が安定してから老後資金の積み立てを始めることもできます。
ただし、加入の可否は公的年金への加入状況や年齢などによって決まります。また掛金の納付方法には、本人名義の預金口座から引き落とす個人払込と、勤務先が給与から控除する事業主払込があります。
自己破産後は家計の立て直しを優先し、生活費が不足しない範囲で掛金を設定することが大切でしょう。
iDeCoを解約して現金化できる?
iDeCoは原則として、受給開始年齢に達するまで中途解約して現金化できません。借金の返済が難しいことや、自己破産を予定していることだけを理由に、積立資産を引き出すことも不可能です。
ただし、以下のような要件を満たす場合に限り「脱退一時金」を受け取れる可能性があります。
- 60歳未満である
- 企業型確定拠出年金の加入者ではない
- iDeCoに加入できない状態である
- 日本国籍を持つ20歳以上60歳未満の海外居住者ではない
- 確定拠出年金の障害給付金を受ける権利がない
- 通算拠出期間が5年以下、または年金資産が25万円以下である
- 加入者資格を最後に喪失してから2年以内である
単に借金の返済や生活費へ充てたいという事情では、原則として認められません。また脱退一時金を受け取った後は、iDeCoの受給権としての保護を受けられなくなります。
配偶者が自己破産した場合の影響は?
夫や妻が自己破産しても、配偶者本人の名義で積み立てているiDeCoは原則として処分されません。自己破産で換価の対象となるのは、基本的に申立人が所有する財産だからです。
配偶者名義のNISAや預貯金、生命保険などについても、実質的に配偶者自身の財産であれば処分の対象外です。夫婦であることだけを理由に、一方の財産がもう一方の借金の返済へ充てられることはありません。
ただし、名義と実際の所有者が異なる財産には注意が必要です。申立人が資金を負担し、財産隠しを目的として配偶者名義の口座へ移していた場合は、実質的に申立人の財産と判断される可能性があります。
また配偶者が借金の連帯保証人になっていると、債権者から返済を請求される恐れがあります。自己破産の免責による効果は、保証人には及びません。
まとめ
iDeCoの受給権は法律で保護されているため、自己破産をしても積立資産は原則として処分されません。一方、すでに受け取った給付金や税金の滞納がある場合は、差し押さえや換価の対象になる可能性があります。
NISAや株式、貯蓄型保険、預貯金、退職金は、金額や受給状況によって取り扱いが異なります。処分されない財産も含め、全て正確に申告することが重要です。
ライズ綜合法律事務所には、月間4,000件、年間5万件の相談実績があります。相談料は無料です。自己破産でiDeCoや老後資金を残せるか不安な方は、お気軽にお問い合わせください。
【ご相談専用フリーダイヤル】
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このページの監修弁護士

弁護士
久松亮一(弁護士法人ライズ綜合法律事務所)
東京大学法学部、及び法政大学法科大学院卒。
2012年弁護士登録。
弁護士歴10年以上の知見を活かし、法律の専門家として、債務整理・慰謝料請求・立ち退き問題など、同事務所が取り扱う幅広い法律問題に従事している。