債務整理
2026/10/01
個人再生の圧縮率はどのくらい?借金はどこまで減額できる?

個人再生を検討していても、借金がどこまで減るのか分からなければ、手続きに踏み切るべきか判断しにくいものです。圧縮後の返済額は、借金の総額だけではなく、所有する財産や選択する手続きによっても変わります。
本記事では、個人再生で借金が減額される仕組みや圧縮率を決める基準、小規模個人再生と給与所得者等再生の違いを解説します。自分の状況に応じた返済額を把握し、無理なく返済できる手続きか検討する際の参考にしてください。
【この記事で分かること】
- 個人再生で借金が圧縮される仕組みと、返済総額を決める主な基準
- 小規模個人再生と給与所得者等再生の違いや圧縮率への影響
- 借金の圧縮率が低くなりやすいケースや、減額が認められない場合の対処法
個人再生で借金は減額できる?
個人再生とは、裁判所の認可を受けた再生計画に従い、減額された借金を分割して返済する手続きです。計画通りに返済を終えると、原則として残りの借金の支払いが免除されます。
返済期間は原則3年です。ただし、特別な事情がある場合は、当初から最長5年の計画を立てられることがあります。住宅ローンなどを除く借金の総額や財産の状況によっては、返済額を5分の1程度まで圧縮できる可能性もあるでしょう。
ただし、全ての人の借金が一律の割合で減るわけではありません。少なくとも返済しなければならない金額は、借金総額から算出する最低弁済額や、所有する財産の価値などを踏まえて決まります。
個人再生は、自己破産のように財産が一律に換価される手続きではありません。一定の要件を満たして住宅ローン特則を利用し、住宅ローンを計画通りに返済できれば、自宅を残せる可能性があります。
なお、住宅ローン特則を利用しても、住宅ローン自体は原則として減額されません。住宅ローンの返済を続けながら、カードローンやクレジットカードなど、他の借金を整理する仕組みです。
個人再生での借金の圧縮率が決まる基準
個人再生後の返済額は、借金総額に一定の圧縮率を掛けて決まるものではありません。ここでは、返済総額を左右する2つの基準を解説します。
借金の総額
個人再生では、住宅ローンなどを除く借金の総額に応じて、最低限返済しなければならない金額が定められています。一般に「最低弁済額」と呼ばれるものです。
借金総額ごとの最低弁済額の目安は、以下の通りです。
|
住宅ローンを除く借金総額 |
最低弁済額 |
|
100万円未満 |
借金の全額 |
|
100万円以上500万円以下 |
100万円 |
|
500万円超1,500万円以下 |
借金総額の5分の1 |
|
1,500万円超3,000万円以下 |
300万円 |
|
3,000万円超5,000万円以下 |
借金総額の10分の1 |
例えば、借金が600万円であれば、最低弁済額は5分の1に当たる120万円です。借金が2,000万円の場合は、300万円が基準になります。
一方、借金が100万円未満の場合は、原則として全額を返済しなければなりません。100万円を少し超える程度でも最低弁済額は100万円となるため、減額幅は限定的でしょう。
なお、最低弁済額は返済総額の下限を判断する基準の一つに過ぎません。所有する財産の価値が最低弁済額を上回れば、より高い金額を返済する必要があります。
所有する財産の価値
個人再生では、自己破産をした場合に債権者へ配当されると見込まれる金額以上を返済しなければなりません。この考え方を「清算価値保障原則」といいます。
借金総額から算出した最低弁済額よりも、所有する財産の清算価値が高い場合は、清算価値が返済総額の基準です。例えば、最低弁済額が120万円でも、財産の清算価値が200万円なら、原則として200万円以上を返済する計画が必要になります。
清算価値の算定対象となる主な財産は、次の通りです。
- 現金や預貯金
- 不動産や自動車
- 株式や投資信託などの有価証券
- 生命保険の解約返戻金
- 退職金見込額の一部
- 貸付金や過払い金などの債権
ただし、財産の評価方法や一定額以下の財産を除外する基準は、申立先の裁判所によって異なる場合があります。正確な返済額を把握するには、財産を漏れなく確認した上で、管轄裁判所の運用に沿って清算価値を算出する必要があるでしょう。
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個人再生の2つの手続きと圧縮率への影響
個人再生には、小規模個人再生と給与所得者等再生があります。返済額を決める基準が異なるため、選択する手続きによって圧縮率が変わることもあるでしょう。
小規模個人再生
小規模個人再生は、将来にわたって継続的または反復的に収入を得る見込みがある人を対象とした手続きです。会社員だけではなく、自営業者や個人事業主も利用できます。
返済総額は、主に次の2つを比較し、高い方を基準として決めます。
- 借金総額に応じて算出した最低弁済額
- 所有する財産から算出した清算価値
給与所得者等再生で用いられる可処分所得の基準はありません。そのため、一般には小規模個人再生の方が返済額を抑えやすい傾向にあります。
ただし、小規模個人再生では、再生計画案について債権者による書面決議が行われます。一定数以上の不同意があると、再生計画案は可決されません。大口債権者がいる場合や債権者数が少ない場合は、債権者の意向による影響が大きくなるでしょう。
給与所得者等再生
給与所得者等再生は、小規模個人再生の利用要件に加え、給与などの定期的な収入があり、その変動幅が小さい人を対象とした手続きです。主に会社員や公務員などが利用を検討します。
返済総額は、次の3つを比較し、最も高い金額を基準に決めます。
- 借金総額に応じた最低弁済額
- 所有する財産の清算価値
- 可処分所得の2年分
可処分所得とは、収入から税金や社会保険料、政令で定められた生活費などを控除して算出する金額です。実際に支出している家賃や食費を、そのまま全額差し引けるわけではありません。
可処分所得が高い場合は、小規模個人再生よりも返済総額が増える可能性があります。その一方で、再生計画案について債権者の決議を必要としない点が特徴です。
給与所得者であっても、返済額を抑えるために小規模個人再生を選ぶ場合があります。どちらが適しているかは、収入や財産、債権者の構成などを踏まえて判断する必要があるでしょう。
個人再生で借金の圧縮率が低くなりやすいケース
財産や収入の状況によっては、想定したほど借金を圧縮できないことがあります。ここでは、圧縮率が低くなりやすい主なケースを紹介します。
不動産や自動車を保有している場合
先述の清算価値保障原則により、価値の高い不動産や自動車を保有していると、返済総額が上がる可能性があります。
不動産の清算価値は、原則として評価額から住宅ローンなどの被担保債権額を控除して算定します。住宅の評価額よりもローン残高が多いオーバーローンであれば、清算価値への影響は小さくなることが多いでしょう。
一方、住宅ローンを完済している場合や、評価額がローン残高を上回るアンダーローンの場合は、その差額が清算価値に反映されます。具体的な評価方法は、抵当権の内容や裁判所の運用によって異なる点に注意が必要です。
自動車は、査定額を基に財産価値を算定します。自動車ローンが残っている場合の扱いは、名義や所有権留保の有無などによって異なります。所有権がローン会社などに留保されていれば、車を引き揚げられることもあるでしょう。
預貯金や有価証券を多く保有している場合
現金や預貯金、株式、投資信託なども、原則として清算価値の算定対象です。これらの資産を多く保有しているほど、返済総額が高くなる可能性があります。
複数の口座や有価証券を保有している場合は、それぞれの金額を合算して評価するのが一般的です。ただし、一定額以下の財産を清算価値から除外する運用もあり、基準は裁判所によって異なります。
申し立て前に預貯金を引き出しても、財産としての価値が直ちに消えるわけではありません。使途が不明な出金は財産隠しを疑われる恐れがあるため、自己判断で資産を移動させるのは避けた方がよいでしょう。
生命保険に高額な解約返戻金がある場合
生命保険や学資保険などに解約返戻金がある場合、その見込額も清算価値に含まれることがあります。実際に保険を解約していなくても、申し立て時点で解約した場合に受け取れる金額を財産として評価します。
掛け捨て型の保険は、解約返戻金がないか、あっても少額であるため、返済額への影響は通常大きくありません。一方、終身保険や養老保険、学資保険などを長期間継続している場合は、解約返戻金が高額になっていることがあります。
複数の保険に加入していれば、それぞれの解約返戻金を合算して評価される可能性があります。契約者貸付を利用している場合は、解約返戻金から貸付残高を差し引くのが一般的です。
正確な金額を確認するには、保険会社から解約返戻金証明書を取り寄せる必要があります。
退職金見込額が高額な場合
勤務先に退職金制度がある場合、将来受け取る予定の退職金も、一定の範囲で清算価値に含まれる可能性があります。現時点で退職する予定がなくても、申し立て時に自己都合退職した場合の見込額を基に評価されるのが一般的です。
退職時期が決まっておらず、まだ退職金を受け取っていない場合は、退職金見込額の8分の1相当額を清算価値に加える運用が多く見られます。例えば、退職金見込額が800万円であれば、100万円が財産として評価される計算です。
近い将来に退職する予定がある場合は、4分の1相当額など、より高い割合が用いられることもあります。すでに退職して支給を受けられる状態であれば、さらに高い金額が評価対象になる可能性があるでしょう。
退職金の評価方法は、退職予定や支給時期、裁判所の運用によって異なります。勤続年数が長い会社員や公務員は、返済総額への影響を事前に確認することが大切です。
可処分所得が高く算定される場合
給与所得者等再生では、可処分所得の2年分も返済額の基準になります。収入が多い人や扶養家族が少ない人は、可処分所得が高く算定されやすいでしょう。
また可処分所得の計算では、実際の生活費ではなく、年齢や居住地域、扶養家族の人数などに応じた法令上の生活費が用いられます。実際には多額の生活費がかかっていても、その全額を控除できるとは限りません。
可処分所得の2年分が最低弁済額や清算価値を上回ると、返済総額が大きくなります。そのため、給与所得者等再生では借金の圧縮率が低くなることもあるでしょう。
借金の総額が低い場合
先述のように、住宅ローンを除く借金が100万円未満の場合は、原則として全額を返済しなければなりません。100万円を少し上回る程度であっても、最低弁済額は100万円であるため、減額幅は小さくなります。
また個人再生には裁判所へ納める費用や弁護士費用などがかかります。借金総額が低い場合は、減額できる金額と手続き費用を比較すると、任意整理など別の方法が適していることもあるでしょう。
個人再生で借金の減額が認められないケース
個人再生を申し立てても、必ず借金を減額できるとは限りません。ここでは、手続きの開始や再生計画の認可が認められない主なケースを解説します。
十分に返済可能だと判断された場合
個人再生を利用するには、借金を返済できなくなる恐れがあることが必要です。収入や換価可能な財産などを踏まえても、約定通りの返済を続けられると判断されれば、開始要件を満たさない可能性があります。
ただし、収入が高いという理由だけで個人再生が認められないわけではありません。借金総額や毎月の返済額、生活費、扶養家族の有無などを基に総合的に判断されます。
現時点で返済を続けられていても、近い将来に支払いが難しくなる恐れがあれば、個人再生を利用できる余地があります。家計の収支や借入状況に基づき、返済困難になる見込みを説明できるかが重要でしょう。
提出書類に虚偽や不備がある場合
個人再生では、債権者一覧表や財産目録、家計収支表、収入を証明する書類などを裁判所へ提出します。重大な虚偽がある場合や、必要書類を提出しない場合は、申し立てが棄却されたり、手続きが廃止されたりする可能性があります。
特に問題となるのは、財産や借金の意図的な申告漏れです。一部の債権者を任意に除外することもできません。原則として、全ての再生債権者を公平に扱う必要があるためです。
ただし、税金や社会保険料、養育費など、再生計画による通常の減額対象とならない債権もあります。住宅ローン特則を利用する住宅ローンについても、他の借金とは異なる扱いです。
単純な記入漏れや不足書類であれば、裁判所から補正を求められることがあります。期限内に修正や追加提出をすれば、直ちに手続きが失敗するわけではありません。
一方、裁判所からの指示を放置したり、再生計画案を期限までに提出しなかったりすると、手続きを続けられなくなる恐れがあります。
圧縮後の借金を完済できる見込みがない場合
個人再生では、再生計画に従って減額後の借金を返済できる見込みが必要です。収入が不定期で今後の見通しを立てにくい場合や、生活費を差し引くと返済原資が残らない場合は、履行可能性が問題となります。
裁判所の運用によっては、手続き中に想定返済額を毎月積み立てる「履行テスト」が実施されます。積立てを繰り返し滞納すると、認可後の返済も難しいと判断される可能性があるでしょう。
一時的に返済資金を用意できるだけでは十分ではありません。将来にわたって再生計画を遂行できるかが判断されます。
小規模個人再生で債権者の不同意が多い場合
小規模個人再生では、再生計画案について債権者による書面決議が行われます。次のいずれかに該当すると、再生計画案は可決されません。
- 不同意を回答した議決権者の数が、議決権者総数の半数以上である
- 不同意を回答した債権者の議決権額が、議決権総額の2分の1を超える
例えば、議決権を持つ債権者が4社いる場合、2社以上が不同意を回答すると人数の要件に該当します。また1社のみの反対でも、その会社が議決権総額の過半数を持っていれば、再生計画案は可決されません。
なお、回答しなかった債権者は、再生計画案に同意したものとして扱われます。全ての債権者から積極的な同意を得る必要はありません。
反対される可能性が高い場合は、債権者による決議が不要な給与所得者等再生を検討する方法もあります。
毎月の返済が
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個人再生に失敗した・返済が苦しくなった場合の対処法
個人再生が認可されなかった場合や、認可後に収入が減少した場合でも、状況に応じた対応策があります。返済を放置せず、早めに対処することが重要です。
返済期間の延長を申し立てる
再生計画の認可後、やむを得ない事情によって返済を続けることが著しく困難になった場合は、裁判所へ計画の変更を申し立てられます。認められれば、当初定められた最終弁済期限から最長2年、返済期限を延長できる可能性があります。
例えば、当初3年の計画であれば、最長5年まで延長されることがあります。月々の負担を抑えられるため、一時的な収入減少が生じた場合には有効な方法でしょう。
ただし、返済総額そのものは原則として減額されません。また本人の都合による退職などではなく、病気や勤務先の業績悪化による減収など、当初予測しにくかったやむを得ない事情が必要です。
返済を放置すると、債権者から再生計画の取消しを申し立てられる恐れがあります。継続が難しいと分かった段階で、弁護士へ相談するとよいでしょう。
ハードシップ免責を申し立てる
再生計画を変更しても返済を続けられない場合は、ハードシップ免責を利用できる可能性があります。一定の厳しい要件を満たした場合に、残りの再生債務の支払いを免除する制度です。
主な要件は、以下の通りです。
- 本人の責任ではない事情により、再生計画の遂行が極めて困難になった
- 各再生債権について、再生計画により変更された債権額の4分の3以上を弁済している
- 再生計画を変更しても、支払いを続けることが極めて困難である
- 免責することが債権者の一般の利益に反しない
本人の責任ではない事情としては、重い病気や事故によって働けなくなった場合などが挙げられます。自発的な退職や浪費によって返済できなくなったケースでは、通常、利用は難しいでしょう。
ハードシップ免責は、返済期間の延長でも解決できない場合の例外的な救済措置です。単に返済が苦しいという理由だけで、残額が免除される制度ではありません。
自己破産への切り替えを検討する
個人再生の開始や再生計画の認可が認められず、減額後の借金も返済できない場合は、自己破産への切り替えが選択肢となります。認可後に返済できなくなり、期間の延長やハードシップ免責を利用できないケースも同様です。
自己破産では、裁判所から免責許可を受けると、税金や養育費などの非免責債権を除き、原則として借金の返済義務が免除されます。一方、一定額を超える財産は処分の対象です。住宅ローン特則も利用できないため、持ち家は原則として手放す必要があります。
なお、個人再生から自己破産へ自動的に移行するわけではありません。あらためて自己破産を申し立て、必要な書類や費用を準備することになります。
まとめ
個人再生では、住宅ローンを除く借金を5分の1や10分の1程度まで圧縮できる可能性があります。ただし、返済総額は借金の総額だけではなく、所有する財産や選択する手続きによっても変わります。
不動産や預貯金、保険の解約返戻金などの清算価値が高い場合は、想定したほど減額できないこともあるでしょう。給与所得者等再生では、可処分所得の2年分が基準に加わる点にも注意が必要です。
個人再生を利用するには、減額後の借金を継続して返済できる見込みも求められます。自分の返済額や適した手続きを正確に判断するには、借金問題に詳しい弁護士へ相談するとよいでしょう。
ライズ綜合法律事務所では、借金問題に関する相談を無料で受け付けています。個人再生で借金をどこまで減額できるのか、圧縮後の返済を続けられるのか不安な方は、まずはお気軽にお問い合わせください。
【ご相談専用フリーダイヤル】
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このページの監修弁護士

弁護士
久松亮一(弁護士法人ライズ綜合法律事務所)
東京大学法学部、及び法政大学法科大学院卒。
2012年弁護士登録。
弁護士歴10年以上の知見を活かし、法律の専門家として、債務整理・慰謝料請求・立ち退き問題など、同事務所が取り扱う幅広い法律問題に従事している。