債務整理

2026/09/18

個人再生の清算価値保障原則とは?いつの時点から計算される?

個人再生の清算価値保障原則とは?いつの時点から計算される?

個人再生を検討している方の中には「自分の財産がどの程度返済額に影響するのだろう」「家や車、保険を持っていると返済額が増えるのだろうか」と不安を感じている方も多いのではないでしょうか。

個人再生では、「清算価値保障原則」というルールによって最低限返済しなければならない金額が決まります。そのため、制度を正しく理解せずに手続きを進めると、想定していたより返済額が高くなるケースもあります。

本記事では、個人再生における清算価値保障原則の概要や、清算価値に含まれる財産の種類、具体的な計算方法について分かりやすく解説します。個人再生後の返済額の目安を知りたい方や、自身の財産がどのように評価されるのか確認したい方は、ぜひ参考にしてください。

【この記事で分かること】

  • 個人再生における清算価値保障原則の仕組みと、最低弁済額との関係
  • 現金・預貯金・不動産・退職金など、清算価値に含まれる主な財産の評価方法
  • 清算価値が高くなりやすいケースや、返済が難しい場合の対処法と選択肢

個人再生の清算価値保障原則とは?

「清算価値保障原則」とは、個人再生で返済する総額が、仮に自己破産した場合に債権者へ配当される金額を下回ってはならないというものです。債務者が自己破産ではなく個人再生を選んだことで、債権者が不利益を受け過ぎないようにする目的で設けられています。

ここでいう清算価値とは、個人再生の申し立て時点で所有している財産のうち、自由財産を除いた財産の総額を指します。現金や預貯金、不動産、自動車、退職金見込額などが対象となり、それぞれ一定の基準に基づいて評価されます。

つまり、個人再生の返済額は借金総額だけで決まるわけではなく、保有している財産の状況にも大きく左右されます。そのため、個人再生を検討する際は、自身の財産がどの程度清算価値として評価されるのかを把握しておくことが重要です。

個人再生で清算価値に含まれる財産と計算方法

個人再生では、申し立て時点で保有しているさまざまな財産が清算価値の対象となります。ただし、全ての財産がそのまま計上されるわけではなく、財産の種類ごとに評価方法が異なります。

ここからは、それぞれの財産がどのように評価されるのかを詳しく見ていきましょう。

現金

個人再生では、生活再建のために一定額の財産を手元に残すことが認められており、現金については99万円以下であれば原則として自由財産として扱われます。

そのため、現金の清算価値は、手持ちの現金総額から99万円を差し引いた残額によって計算されます。例えば、手持ちの現金が150万円ある場合は、150万円-99万円=51万円が清算価値として計上されます。

また現金として評価されるのは財布や自宅で保管しているお金だけではありません。個人再生の手続き費用として弁護士へ預けている費用のうち、未使用分として返還される予定の金額も現金として扱われることがあります。

裁判所は申立人の財産状況を総合的に確認するため、現金の保有状況についても詳細な申告を求めます。現金を過少に申告したり、意図的に隠したりすると手続きに悪影響を及ぼす可能性があるため、正確な金額を申告することが重要です。

預貯金

銀行や信用金庫などの預貯金も、個人再生における重要な清算価値の対象です。複数の金融機関に口座を持っている場合は、それぞれの口座残高を合計した金額で評価されます。

例えば、A銀行に10万円、B銀行に15万円、ネット銀行に20万円の預金がある場合、合計45万円として計算されます。裁判所の運用によっては、預貯金の合計額が20万円を超える場合に、その全額が清算価値へ計上されることがあります。

なお、借入先の金融機関に預貯金口座を持っている場合は注意が必要です。金融機関が預金と借金を相殺するケースがあり、その場合は相殺後の残額を基準に評価を行います。例えば、カードローン残高が50万円ある銀行口座に預金が20万円ある場合、預金が相殺されることで残高が0円となり、清算価値として計上されないことがあります。

預貯金は通帳や取引履歴によって確認されるため、全ての口座を漏れなく申告することが大切です。

不動産

住宅や土地などの不動産は、保有財産の中でも特に清算価値へ大きな影響を与えやすい財産です。評価に当たっては、原則として不動産の時価や査定額を基準に計算が行われます。

住宅ローンが残っている場合は、不動産の評価額から住宅ローン残高を差し引いた金額が清算価値となります。例えば、自宅の評価額が2,000万円で住宅ローン残高が1,800万円の場合、差額の200万円が清算価値として計上されます。一方で、住宅ローン残高が不動産の評価額を上回る場合は、実質的な財産価値がないと判断され、清算価値が発生しないこともあります。

なお、不動産を配偶者や親族と共有しているケースでは、物件全体ではなく自身の持ち分割合に応じて評価します。

自動車やバイク

自動車やバイクについては、現在の市場価格である時価を基準に清算価値を算出します。年式や走行距離、車種などによって評価額は異なり、中古車査定額などを参考に評価されることが一般的です。

裁判所の運用によっては、時価が20万円以下であれば清算価値に含めない場合があります。一方で、20万円を超える場合はその価値が財産として評価されるため、最低弁済額へ影響する可能性があります。

また自動車ローンが残っている場合は、時価からローン残債を差し引いて計算します。例えば、車の時価が100万円でローン残高が70万円であれば、差額の30万円が清算価値として扱われます。

ただし、ローン契約に所有権留保が付いている場合は、車の所有者がローン会社となっているケースもあります。その場合は、実際の財産価値の有無を個別に判断する必要があります。

高額な車両や人気車種を所有している場合は、予想以上に清算価値が高くなることもあるため注意が必要です。

退職金

退職金はまだ受け取っていない場合でも、将来的に受け取る見込みがある財産として清算価値に含まれます。ただし、実際に受け取る時期によって評価割合が異なります。

退職金の評価方法は一般的に以下の通りです。

状況

清算価値として計上される割合

退職予定がない場合

退職金見込額の8分の1

退職予定がある・退職後未受給の場合

退職金見込額の4分の1

すでに受給済みの場合

全額

例えば、退職金見込額が800万円で退職予定がない場合は、100万円が清算価値として計上されます。

退職金見込額を算出する際は、勤務先に退職金見込額証明書を発行してもらうのが一般的です。退職金制度がある企業に勤務している場合は、裁判所から資料提出を求められることもあります。

特に勤続年数が長い公務員や大企業の従業員は退職金見込額が高額になる傾向があり、その結果として清算価値が大きく増加するケースもあります。そのため、個人再生を検討する際は退職金の評価額も事前に確認しておくことが重要です。

保険の解約返戻金

生命保険や学資保険、個人年金保険などの積立型保険に加入している場合は、解約返戻金が清算価値の対象となります。解約返戻金とは、その時点で保険を解約した場合に契約者へ払い戻されるお金のことです。

個人再生では、実際に解約するかどうかにかかわらず、申し立て時点で解約したと仮定した場合の解約返戻金額を基準に評価が行われます。そのため、長年保険料を積み立てている保険や貯蓄性の高い保険に加入している場合は、想定以上に高額な清算価値となることがあります。

また複数の保険に加入している場合は、それぞれの解約返戻金を合算して計算します。例えば、生命保険の解約返戻金が15万円、学資保険が10万円、個人年金保険が20万円であれば、合計45万円が評価対象となります。ただし、裁判所の運用によっては、解約返戻金の合計額が20万円以下の場合は清算価値に計上しない取り扱いがされることもあります。

解約返戻金額は保険会社へ問い合わせることで確認できる他、解約返戻金証明書の提出を求められることもあります。個人再生を検討する際は、加入中の保険について事前に確認しておくことが重要です。

高価なブランド品や骨董品

貴金属やブランド品、宝石、美術品、骨董品などの高価な品も、個人再生では財産として評価されます。これらは現金や預貯金とは異なり、市場で売却した場合にどの程度の価値があるかという時価を基準に清算価値が算出されます。

例えば、高級腕時計やブランドバッグ、金・プラチナ製品、絵画、骨董品などは、中古市場で価値が認められる場合には清算価値の対象となります。購入時の価格ではなく、申し立て時点における実際の査定額や市場価格が評価額となる点に注意が必要です。

また裁判所の運用によっては、時価が20万円を超える高額品のみを清算価値へ計上するケースもあります。そのため、全ての所有物が対象になるわけではありませんが、高額な資産を保有している場合は申告が必要です。

これらの財産を所有している場合は、リサイクルショップや専門業者による査定書、鑑定書などを利用して客観的な評価額を算出し、清算価値算出シートへ記載します。

高額品を申告せずに隠していた場合は、財産隠しと判断される恐れがあります。個人再生を円滑に進めるためにも、価値のある資産は漏れなく申告することが大切です。

有価証券

株式や投資信託などの有価証券を保有している場合も、個人再生における清算価値の対象となります。有価証券は換金性が高い資産であるため、その時点の時価を基準に評価されるのが一般的です。

株式については、再生計画の認可決定時における市場価格を基準として評価され、その金額が清算価値へ計上されます。上場株式であれば証券会社の取引画面や残高証明書などによって評価額を確認できます。

また有価証券に該当するのは株式だけではありません。投資信託や社債の他、ゴルフ会員権など市場価値が認められる権利も財産として評価される場合があります。

裁判所によっては、有価証券や会員権などの評価額が20万円を超える場合に清算価値へ含める運用を行っているケースもあります。ただし、具体的な基準は裁判所ごとに異なります。

株式などは市場環境によって価格が変動するため、評価時期によって清算価値が変わることもあります。保有している銘柄や投資商品がある場合は、事前に評価額を確認しておくことが大切です。

貸付金や売掛金

他人にお金を貸している場合の貸付金や、個人事業主が保有する売掛金も清算価値の対象となります。これらは現時点で手元に現金がなくても、将来的に回収できる見込みがある財産として評価されるためです。

例えば、知人へ50万円を貸しており返済を受けられる見込みがある場合は、その貸付金が財産として計上されます。また事業で商品やサービスを提供したものの、まだ代金を受け取っていない売掛金についても、回収可能な範囲で清算価値に含まれます。

ただし、全額を回収できる見込みがない場合は、回収の可能性を考慮して評価されることがあります。例えば、相手方の経済状況などから回収が困難と判断される場合は、評価額が低くなるケースもあります。

さらに、過去に消費者金融などへ払い過ぎた利息がある場合の過払い金返還請求権も財産として扱われます。すでに回収済みの過払い金だけではなく、請求によって回収できる見込みがある金額も清算価値へ含まれることがあります。

個人再生では、現金や不動産だけではなく、このような債権も財産として評価されるため、貸付金や売掛金の有無についても正確に申告することが重要です。

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個人再生で清算価値が高くなりやすいケース

個人再生では、保有している財産が多いほど清算価値が高くなり、その結果として最低弁済額も高額になる傾向にあります。

ここでは、特に清算価値が高くなりやすい代表的なケースを紹介します。

アンダーローンの不動産を所有している場合

アンダーローンとは、不動産の評価額が住宅ローン残高を上回っている状態を指します。この場合、不動産を売却すればローンを完済しても資産が残るため、その差額が清算価値として評価されます。

例えば、自宅の評価額が3,000万円で住宅ローン残高が2,000万円であれば、差額の1,000万円が財産価値として計上される可能性があります。その結果、最低弁済額が大幅に引き上げられることもあります。

近年は都市部を中心に地価が上昇傾向にあり、購入時より不動産価値が高くなっているケースも少なくありません。また長年返済を続けてローン残高が大きく減っている場合も、アンダーローンになりやすい傾向にあります。

住宅資金特別条項を利用して自宅を残せる場合でも、清算価値の計算には影響するため、不動産の評価額とローン残高は事前に確認しておくことが重要です。

ローン完済後の不動産を所有している場合

住宅ローンを完済した不動産を所有している場合は、清算価値が特に高額になりやすいため注意が必要です。なぜなら、差し引くべき住宅ローン残高が存在しないため、不動産の評価額がそのまま財産として評価されるからです。

例えば、時価1,500万円の土地や住宅を所有している場合、その1,500万円全額が清算価値の計算対象になる可能性があります。住宅ローンが残っている場合と比べると、返済額へ与える影響は非常に大きくなります。

特に一戸建て住宅は、建物自体の価値が下がったとしても土地の価値が残りやすい傾向があります。そのため、築年数が古い住宅であっても、土地評価額によって数百万円から数千万円の清算価値が発生することがあります。

不動産を保有している場合は、固定資産税評価額や不動産査定額などを確認し、どの程度の財産価値があるのかを把握しておくことが大切です。

高額な退職金を受け取る見込みがある場合

退職金見込額が高額な場合も、清算価値が大きくなる代表的なケースです。退職金は将来受け取る予定のお金であっても財産として評価されるため、勤続年数が長い方ほど影響が大きくなります。

退職予定がない場合でも、退職金見込額の8分の1が清算価値として計上されます。さらに、退職予定が近い場合や退職後で未受給の場合は4分の1が計上されるため、評価額はより高額になります。

例えば、退職金見込額が3,200万円の場合、8分の1であっても400万円が財産として評価されます。借金総額によっては、この退職金評価額が最低弁済額を左右する重要な要素になることもあります。

特に公務員や大企業勤務の方は退職金制度が充実しているケースが多いため、個人再生を検討する際は退職金見込額証明書などを取得し、事前に評価額を確認しておくことが重要です。

高額な事業用資産を所有している場合

個人事業主の場合は、事業に使用している資産が清算価値を押し上げる要因になることがあります。事業用のトラックや重機、工作機械、測定機器など、換金価値の高い設備を保有している場合は注意が必要です。

これらの事業用資産は、事業に欠かせないものであっても、個人事業主本人が所有する財産であれば、原則として清算価値の評価対象となります。一方、リース品や所有権留保付きの車両などは、本人の財産として単純に時価全額が計上されるとは限りません。

清算価値が高額で支払いが難しい場合の対処法

清算価値が高いからといって必ずしも個人再生を諦める必要はありません。返済期間の調整や財産の整理などによって、返済負担を軽減できる可能性があります。

ここでは、清算価値が高額で支払いが難しい場合に検討できる主な対処法を紹介します。

再生計画案の返済期間を延長してもらう

個人再生における返済期間は、原則として3年間と定められています。しかし、清算価値の増加によって毎月の返済額が高額になり、3年間での完済が難しい場合には、裁判所が特別な事情を認めれば返済期間を最長5年まで延長できる可能性があります。

例えば、最低弁済額が300万円の場合、3年返済であれば毎月約8万3,000円の返済が必要になります。一方で5年での返済が認められれば、毎月の返済額は約5万円まで抑えられます。このように返済期間を延ばすことで、家計への負担を軽減しながら再生計画を実行しやすくなります。

特に、住宅ローンを支払いながら個人再生を進める場合や、扶養家族が多く生活費の負担が大きい場合などは、返済期間の延長が有効な選択肢となることがあります。

ただし、必ず5年への延長が認められるわけではありません。収入状況や家計収支などを踏まえて判断されるため、返済計画に不安がある場合は早い段階で弁護士へ相談し、現実的な返済期間を検討することが重要です。

一部の財産を処分して返済に充てる

保有している財産の価値が高く、その結果として最低弁済額が大きくなっている場合は、一部の財産を処分して返済資金を確保する方法もあります。資産を現金化することで、個人再生後の返済負担を軽減できる可能性があります。

具体的には、以下のような方法が考えられます。

  • 積立型生命保険を解約して解約返戻金を受け取る
  • 価値の高い自動車や不動産を任意売却する
  • 生命保険の契約者貸付制度を利用する

例えば、解約返戻金の大きい保険に加入している場合は、その保険を解約することでまとまった資金を確保できることがあります。また高額な車両や使用頻度の低い不動産を売却することで、返済原資を準備できるケースもあります。

ただし、生活や事業に必要な財産まで処分してしまうと、その後の生活再建に支障をきたす可能性があります。そのため、どの財産を残し、どの財産を処分するべきかについては、弁護士と相談しながら慎重に判断することが大切です。

自己破産を検討する

清算価値が高額であり、返済期間の延長や財産整理を行っても再生計画の履行が難しい場合は、自己破産への切り替えを検討することも選択肢の一つです。

自己破産では一定以上の財産を処分する必要がありますが、その代わりに免責が認められれば、原則として全ての借金の返済義務が免除されます。そのため、個人再生では返済額が高額になり過ぎてしまうケースでも、自己破産であれば生活再建を図れる可能性があります。

どうしても残したい財産がない場合や、返済の見込みが立たない場合は、無理に個人再生へこだわるよりも自己破産を選んだ方が良い場合もあるでしょう。

どの手続きが適しているかは財産状況や収入状況によって異なるため、まずは弁護士へ相談し、自身に合った解決方法を検討することが大切です。

まとめ

個人再生の清算価値保障原則とは、個人再生による返済総額が、仮に自己破産した場合に債権者へ配当される金額を下回ってはならないというルールです。そのため、現金や預貯金、不動産、自動車、退職金、保険の解約返戻金などの財産を多く保有しているほど、最低弁済額が高くなる傾向にあります。

特にアンダーローンの不動産やローン完済済みの不動産、高額な退職金見込額、事業用資産などを保有している場合は、清算価値が想定以上に高額になることもあります。個人再生を検討する際は、事前に清算価値を正確に把握し、無理のない返済計画を立てることが重要です。

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このページの監修弁護士

弁護士

久松亮一(弁護士法人ライズ綜合法律事務所)

東京大学法学部、及び法政大学法科大学院卒。
2012年弁護士登録。

弁護士歴10年以上の知見を活かし、法律の専門家として、債務整理・慰謝料請求・立ち退き問題など、同事務所が取り扱う幅広い法律問題に従事している。