債務整理
2026/09/17
債務整理で弁護士が行う受任通知とは?効力や注意点を解説

借金の返済が苦しくなり債務整理を検討しているものの「受任通知を送ると本当に督促は止まるのか」「家族や保証人にどのような影響があるのか」と不安に感じている方も多いのではないでしょうか。
毎日のように電話や郵便で督促を受けている状況だと、精神的に大きな負担を感じてしまいますよね。また債務整理を始めることで今より状況が悪化するのではないかと心配になり、一歩を踏み出せずにいる方もいるかもしれません。
受任通知は、弁護士などの専門家に債務整理を依頼した際に債権者へ送付される重要な書面です。受任通知が届くことで督促が停止される一方、税金の請求や保証人への影響など、知っておくべき注意点もあります。
本記事では、受任通知の概要や効力、送付後に止まること・止まらないこと、メリットや注意点について詳しく解説します。借金問題の解決に向けて適切な判断をするためにも、ぜひ参考にしてください。
【この記事で分かること】
- 受任通知の役割や効力、債権者に届くことで督促が停止される仕組み
- 受任通知で止まる督促と止まらない請求、それぞれの具体的な内容
- 受任通知のメリット・デメリットや送付後に注意するべきポイント
債務整理における受任通知とは?
受任通知とは、弁護士などの専門家が債務者の代理人として債務整理を受任したことを、各債権者へ知らせるための書面です。債務整理を依頼した後、専門家が貸金業者や債権回収会社などに送付します。
受任通知が債権者へ届くと、以後の連絡窓口は債務者本人ではなく代理人へ変更されます。これにより、貸金業者などは債務者本人に対して直接督促や取り立てを行うことができなくなります。
ただし、全ての請求や法的手続きが停止するわけではないため、その効力の範囲を正しく理解しておくことが重要です。
受任通知で止められること
受任通知の送付により止められることを具体的に見ていきます。
電話や訪問による督促・請求
受任通知を受け取った貸金業者や債権回収会社は、債務者本人に対して電話をかけたり、直接訪問したりすることが原則として禁止されます。受任通知が届けばこうした直接の督促が停止されるため、精神的な負担の軽減につながります。
勤務先への連絡
受任通知が送付された後は、債権者が債務者の勤務先へ連絡して取り立てを行うことも原則として制限されます。正当な理由がないにもかかわらず勤務先へ連絡し、返済を迫る行為は認められていません。
そのため、勤務先に借金や債務整理の事実が知られるのではないかと不安に感じている方も、過度に心配する必要はありません。正規の貸金業者であれば法律を遵守し、受任通知の到達後は本人への直接連絡を控えるのが一般的です。
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受任通知でも止まらないこと
受任通知には強い督促停止効果がありますが、全ての請求や法的手続きを止められるわけではありません。受任通知の効力が及ばないものもあるため、あらかじめ理解しておくことが大切です。
税金や社会保険料の請求
税金や社会保険料は、消費者金融やクレジットカード会社からの借金とは性質が異なります。そのため、弁護士が受任通知を送付しても、徴収手続きが停止されることはありません。
例えば、住民税や固定資産税、国民健康保険料などを滞納している場合、自治体は引き続き納付を求めることができます。滞納を放置すると、預金や給与などに対する差し押さえが行われる可能性もあります。
税金や社会保険料の支払いが難しい場合は、債務整理だけで解決しようとせず、早めに役所や年金事務所へ相談することが重要です。事情によっては分納や徴収猶予などの制度を利用できる場合があります。
訴訟など裁判上の手続き
受任通知には、債権者が裁判を起こすこと自体を禁止する効力はありません。そのため、債権者は必要に応じて訴訟を提起したり、裁判所へ支払督促を申し立てたりすることが可能です。
特に長期間返済を滞納している場合や、既に法的措置の準備が進んでいる場合には、受任通知送付後も裁判手続きが継続するケースがあります。
万が一、裁判所から訴状や支払督促などの書類が届いた場合は、放置してはいけません。何も対応しないまま期限が過ぎると、債権者の主張通りの内容で判決が確定してしまう可能性があります。書類が届いたら速やかに依頼している弁護士へ連絡し、適切な対応を取りましょう。
差し押さえなどの強制執行
受任通知は、既に開始されている差し押さえや強制執行を自動的に停止させるものではありません。債権者が既に勝訴判決や仮執行宣言付き支払督促などの債務名義を取得している場合は、給与や預金口座などに対する強制執行が行われる可能性があります。
ただし、自己破産手続きにおいては、裁判所へ申立てを行うことで強制執行中止命令が発令される場合があります。差し押さえを受けている場合や受ける可能性が高い場合は、できるだけ早く弁護士へ相談することが重要です。
債務整理で受任通知を送付する流れ
受任通知は、弁護士に依頼した直後に自動的に送られるわけではなく、一定の手順を経て債権者へ送付されます。手続きの流れを理解しておくことで「いつ督促が止まるのか」「何を準備すればよいのか」が分かり、安心して債務整理を進めやすくなるでしょう。
一般的な流れは以下の通りです。
- 弁護士へ相談・依頼する
- 委任契約締結後に受任通知を作成する
- 各債権者へ受任通知を送付する
- 債権者側で受領・社内処理を行う
1.弁護士への相談・依頼
受任通知を送付するためには、まず弁護士へ借金問題を相談し、正式に依頼する必要があります。相談の結果、任意整理・個人再生・自己破産などの中から、自身の状況に適した債務整理の方法を検討します。
受任通知は、専門家が代理人として就任したことを示す書面であるため、正式な委任契約を結ぶ前に送付することはできません。まずは相談を行い、手続きの内容や費用、今後の見通しについて十分な説明を受けた上で依頼することになります。
相談時には、借入先の数や借金総額、返済状況だけではなく、現在どのような督促を受けているのかも詳しく伝えることが大切です。督促の頻度や差し押さえの危険性などを共有することで、より適切な対応方針を立てやすくなります。
2.委任契約締結後、受任通知書の作成
正式に委任契約を締結すると、弁護士は受任通知書の作成に着手します。事務所によって多少の違いはありますが、早ければ相談当日、遅くとも数日以内に作成されることが一般的です。
受任通知書には、主に以下のような内容が記載されます。
- 代理人として就任し、債務整理手続きを開始したこと
- 債務者本人への直接の取り立てや連絡の停止を求めること
- 借入状況を確認するための取引履歴の開示請求
特に取引履歴の開示請求は、その後の債務整理手続きを進める上で重要な役割を果たします。過去の借り入れや返済状況を正確に把握することで、債務額の確認や今後の方針決定を行いやすくなるためです。
3.債権者への送付
作成された受任通知は、借入先ごとに送付されます。送付方法は郵送やFAXなどが一般的で、債権者の種類や緊急性に応じて使い分けられます。
緊急性の高い状況では、すぐに債権者へ内容を伝えられるFAXが使われることがあります。一方、郵送で送付する場合は、通常1~3日程度で債権者へ到達します。送付後すぐに全ての督促が止まるわけではありませんが、債権者に通知が届けば社内手続きが進められ、債務者本人への直接連絡は順次停止されていきます。
4.債権者側での受領と社内処理
債権者のもとへ受任通知が届くと、内容の確認や担当部署への引き継ぎなどの社内処理が行われます。受任通知の到達と同時に全ての手続きが完了するわけではなく、システムへの登録や担当者間での共有に一定の時間を要するためです。
一般的には1~3日程度で処理が完了しますが、その間は行き違いによって督促の電話や郵便が届くことがあります。ただし、多くの場合は社内処理が完了していないことが原因であり、必ずしも違法な取り立てが行われているわけではありません。
社内処理が終わると、債権者側のシステムに代理人情報が登録され、今後の連絡先が弁護士へ変更されます。これにより、債務者本人への直接の督促や請求は正式に停止されることになります。
受任通知を送るメリット
受任通知の送付には、単に督促を止めるだけではなく、借金問題の解決に向けて大きなメリットがあります。
精神的な負担が軽減される
借金の督促を受け続けることは、大きな精神的ストレスとなります。電話が鳴るたびに不安になったり、郵便受けを確認することが怖くなったりする方も少なくないでしょう。
しかし、受任通知が債権者へ届くと、電話や郵便、自宅訪問などによる直接の取り立ては原則として禁止されます。そのため「また督促が来るのではないか」という恐怖や不安から解放されやすくなります。
精神的な余裕が生まれることで、これまで借金問題に追われていた生活を見直しやすくなるでしょう。
債権者とのやり取りを任せられる
受任通知が送付されると、債権者との連絡や交渉は全て代理人である弁護士を通じて行われるようになります。債務者本人が直接貸金業者とやり取りする必要はありません。
借金問題を抱えている方の中には、債権者からの電話に出ること自体が大きな負担になっている方もいるでしょう。また返済条件や和解内容について専門的な知識がないまま交渉することは容易ではありません。
専門家が代理人として対応することで、法的な知識や実務経験に基づいた適切な交渉が期待できます。債権者とのやり取りによる精神的ストレスを軽減できるだけではなく、より有利な条件で和解できる可能性が高まる点も大きなメリットです。
手続き費用を工面する時間を確保できる
受任通知が送付されると、多くの場合は債権者への返済が一時的に停止されます。そのため、これまで毎月の返済に充てていたお金を別の用途へ回せるようになります。
この期間を活用することで、債務整理に必要な費用を計画的に準備することが可能です。例えば、以下のような支出に備えられます。
- 弁護士への依頼費用
- 自己破産や個人再生の申立て費用
- 生活再建のための当面の生活費
- 転居が必要な場合の引っ越し費用
借金問題を抱えている方の中には、手元資金が少なく債務整理を諦めてしまう方もいます。しかし、受任通知によって返済が一時的に停止されることで資金を積み立てやすくなり、手続きに必要な費用を確保できる可能性が高まります。結果として、生活再建に向けた準備を進めやすくなるでしょう。
毎月の返済が
不安になってきた方へ
いまは「どう対処すればよいか分からない」
という状況でもご相談いただけます。
ご家族や職場に知られずに解決する方法も
ご提案可能です
- 相談料は何度でも0円
- 分割払い対応
- 最短で即日取り立てストップ
受任通知を送るデメリットや注意点
受任通知には督促を止められるなど多くのメリットがありますが、一方で注意すべきデメリットも存在します。特に信用情報への影響や保証人への請求、担保付き財産への影響については、事前に理解しておくことが重要です。後から想定外の不利益を受けないためにも、受任通知の効果だけではなくリスクについても確認しておきましょう。
信用情報機関に事故情報が登録される
受任通知の送付により、信用情報機関に事故情報が登録される可能性があります。これは一般的に「ブラックリストに載る」といわれる状態です。
事故情報が登録されると、一定期間は信用取引に関する審査に通りにくくなります。具体的には、以下のような制限を受ける可能性があります。
- 新規のクレジットカードの発行や利用
- 住宅ローンや自動車ローンなどの借り入れ
- スマートフォン端末代金の分割払い契約
事故情報が登録される期間は手続きの種類や信用情報機関によって異なりますが、一般的には5~7年程度です。その間はクレジットカードやローンに頼らず、現金やデビットカードを中心とした生活を送る必要があります。
ただし、信用情報への影響は債務整理によって借金問題を解決するための代償ともいえます。長期的な生活再建を目指すためには、信用情報への影響も踏まえた上で手続きを検討することが大切です。
保証人に請求が及ぶ可能性がある
借金に保証人や連帯保証人が付いている場合は注意が必要です。主債務者が受任通知を送付すると、債権者は本人からの回収が難しくなったと判断し、保証人へ請求を行うことがあります。
受任通知の効力は債務者本人に対する督促や取り立てを止めるものであり、保証人に対する請求まで制限するものではありません。そのため、保証人は残っている借金について一括返済を求められる可能性があります。
特に親族や友人が保証人になっている場合は、人間関係にも大きな影響を与えかねません。そのため、保証人付きの借金がある場合は、事前に弁護士へ相談し対応方針を検討することが重要です。
任意整理であれば、保証人が付いている借金を手続きの対象から外せる場合があります。また保証人に請求が及ぶ可能性が高い場合は、あらかじめ事情を説明しておくことでトラブルを防ぎやすくなるでしょう。
担保権を実行される可能性がある
受任通知を送ったとしても、債権者が持つ担保権の実行を止めることはできません。担保権とは、返済が滞った場合に担保として差し入れた財産から優先的に回収できる権利のことです。
例えば、住宅ローンを滞納している場合は、金融機関が担保となっている自宅に対して競売手続きを進める可能性があります。また自動車ローンで所有権留保が付いている場合は、ローン会社によって車が引き揚げられることもあります。
特に住宅ローンがある場合は、個人再生の住宅ローン特則を利用できる可能性もあります。担保付き財産を守りたい場合は、事前に弁護士と十分に相談し、適切な解決方法を検討しましょう。
受任通知の送付後にやってはいけないこと
受任通知を送付した後は、借金問題の解決に向けて適切に行動することが重要です。誤った行動を取ると、債権者との交渉に悪影響を与えたり、自己破産や個人再生の手続きに支障が生じたりする可能性があります。債務整理を円滑に進めるためにも、以下の行為は避けましょう。
新たな借入やカード利用をする
受任通知を送付した後は、新たな借り入れやクレジットカードの利用をしてはいけません。受任通知は、債務者が現在の返済を継続することが困難であり、債務整理による解決を目指していることを債権者へ伝える書面だからです。
そのような状況で新たな借金をしたり、クレジットカードで買い物をしたりすると、返済意思や手続きの信頼性を疑われる可能性があります。結果として、任意整理の和解交渉が難航する原因になることもあります。
また受任通知後は、カード会社の判断によりクレジットカードが利用停止や強制解約となる可能性があります。債務整理を開始した後にカードを利用すると、手続きや債権者との交渉に悪影響を及ぼす恐れがあるため避けるべきです。
債務整理を成功させるためにも、受任通知後は借り入れやカード利用を控え、生活費は現金やデビットカードなどで管理するようにしましょう。
返済に充てていたお金を使い込む
受任通知が送付されると、多くの場合は債権者への返済が一時的に停止されます。その結果、これまで返済に回していたお金が手元に残るようになります。
しかし、このお金は自由に使ってよい資金ではありません。本来は債務整理を進めるための費用や、今後の生活再建に必要な資金として活用すべきものです。
例えば、ギャンブルや浪費、不要な高額商品の購入などに使ってしまうと、弁護士費用や裁判所へ納める予納金を準備できなくなる可能性があります。資金不足によって手続きが進まなくなれば、債務整理そのものが頓挫してしまうこともあります。
最悪の場合、依頼した弁護士から辞任され、再び債権者からの厳しい督促を受ける事態にもなりかねません。受任通知後は家計管理を見直し、手続き費用や生活再建資金を優先的に確保することが重要です。
特定の債権者だけに優先して返済する
受任通知後に特定の債権者だけへ返済することも避けるべきです。特に自己破産や個人再生では、全ての債権者を平等に扱うことが原則とされています。
例えば、友人や親族から借りたお金だけを返済したり、付き合いの長い金融機関だけに返済したりする行為は「偏頗弁済(へんぱべんさい)」に該当する可能性があります。
偏頗弁済が問題となるのは、一部の債権者だけを優遇し、他の債権者との公平性を損なうためです。裁判所や破産管財人から問題視された場合、自己破産の免責や個人再生の認可に悪影響を及ぼすことがあります。
親族へ迷惑をかけたくないという理由で優先的に返済したくなるかもしれません。しかし、その善意が手続き上の不利益につながることもあります。受任通知後の返済については自己判断せず、必ず弁護士の指示に従うようにしましょう。
まとめ
受任通知とは、弁護士が債務整理の代理人として就任したことを債権者へ知らせる書面です。受任通知が届くと、電話や郵便による督促、自宅への訪問、勤務先への連絡などの直接的な取り立ては原則として停止されます。そのため、借金問題による精神的な負担を大きく軽減できるでしょう。
一方で、税金や社会保険料の請求、訴訟手続き、担保権の実行などは受任通知だけでは止められません。また信用情報への登録や保証人への請求といった注意点もあります。債務整理を成功させるためには、受任通知の効果と限界の両方を正しく理解することが重要です。
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このページの監修弁護士

弁護士
久松亮一(弁護士法人ライズ綜合法律事務所)
東京大学法学部、及び法政大学法科大学院卒。
2012年弁護士登録。
弁護士歴10年以上の知見を活かし、法律の専門家として、債務整理・慰謝料請求・立ち退き問題など、同事務所が取り扱う幅広い法律問題に従事している。