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立ち退き

2026/01/08

借地借家法28条とは?立ち退きを求められたときに正当事由が必要な理由と対処法を解説

借地借家法28条とは?立ち退きを求められたときに正当事由が必要な理由と対処法を解説

物件の貸主から突然立ち退きの通知が届くと、誰しも慌ててしまうものです。こんなとき「不当な要求ではないか?」「法律のルールはどうなっているの?」と気になる方も多いのではないでしょうか。

実は、賃貸物件の借主は法的に保護されており、立ち退きに関しては「借地借家法」という法律でさまざまな制限が設けられています。

借地借家法28条の規定によると、貸主からの求めで賃貸借契約を終了させるには「正当事由」が必要です。貸主側が主張する立ち退きの理由が正当事由といえるのか、しっかりと見極める必要があります。

この記事では、以下の内容を紹介します。

  • 借地借家法とはどのような法律なのか
  • 同法28条に基づく正当事由の判断基準
  • 貸主との立ち退きを巡る交渉の方法

立ち退きを要求されて困っている方の参考になる内容です。

 

1.借地借家法とは

借地借家法は、土地や建物の賃貸借に関連する、賃貸人と賃借人の権利義務関係について定めた法律です。賃貸借契約における各当事者の権利や契約の更新、解約、存続期間などが決められています。

借地借家法は、建物所有目的で土地を借りる場合に発生する借地権と、建物を借りる場合に発生する借家権に対して適用されます。

借地借家法は借主を手厚く保護することを重視しており、貸主(賃貸人)から一方的に立ち退きを強制できないようになっています。

1-1 借地借家法と民法の違い

不動産の賃貸借に関するルールは「民法」にも定めがあります。
賃貸借契約に関して規定する法律として借地借家法と民法の2つがあるのは、契約上弱い立場になりやすい賃借人を法的に保護するためです。

民法は、あくまで基本ルールを定めています。借地借家法に規定のある項目に関しては、民法ではなく特別法に当たる借地借家法が優先されます。

  • 貸主側から突然アパートの更新をしないと通知された
  • 物件が老朽化しているので立ち退くよう求められた

例えばこうしたケースは、借地借家法の規定に基づき解決を探ることになります。

 

2.借地借家法28条の概要

以下は、借地借家法28条で定められている「建物の賃貸借契約の更新拒絶または解約の場合の要件」とその判断基準です。

(建物賃貸借契約の更新拒絶等の要件)
第二十八条 建物の賃貸人による第二十六条第一項の通知又は建物の賃貸借の解約の申入れは、建物の賃貸人及び賃借人(転借人を含む。以下この条において同じ。)が建物の使用を必要とする事情のほか、建物の賃貸借に関する従前の経過、建物の利用状況及び建物の現況並びに建物の賃貸人が建物の明渡しの条件として又は建物の明渡しと引換えに建物の賃借人に対して財産上の給付をする旨の申出をした場合におけるその申出を考慮して、正当の事由があると認められる場合でなければ、することができない。

引用:借地借家法第二十八条(建物賃貸借契約の更新拒絶等の要件)

このように、貸主から借主に対して賃貸借契約を終了させて立ち退きを求める場合、借地借家法28条では正当事由が必要であると定められています。

次項で、正当事由の判断基準について詳しく解説します。

 

3.借地借家法28条における正当事由を判断する要素

借地借家法において、立ち退きの要求に関する正当事由の判断として考慮されるのは、以下の要素です。

  • 1)賃貸人と賃借人の建物の使用を必要とする事情
  • 2)建物の賃貸借に関する従前の経過
  • 3)建物の利用状況
  • 4)建物の現況
  • 5)財産上の給付をする旨の申出

いわゆる「立ち退き料」の支払いは5に該当し、立ち退きのための正当事由を補完する性質があります。

3-1 1)賃貸人と賃借人の建物の使用を必要とする事情

賃貸人と賃借人それぞれの事情を比較し、どちらの必要性が高いかが判断されます。

貸主側であれば「物件を自分で使用したい」「お金が必要なので売却したい」「建て替えたい」などが代表的です。一方、借主は物件を使用しての居住やその拠点での営業などが考えられるでしょう。

正当事由の中でも重要な判断要素となるため、当事者双方の主張をよく確認し、慎重に判断することになります。

3-2 2)建物の賃貸借に関する従前の経過

建物から立ち退きを要求されるまでの間に、どのような事情や経緯があったかも、正当事由かどうかの判断に影響するポイントです。

具体的には、以下のような点が挙げられます。

  • 賃貸借契約の締結に至った経緯
  • 賃料や更新料が適切に支払われているか
  • 契約更新の有無
  • 賃借人による契約違反がないか
  • 賃貸借契約を結んでいた期間の長さ

例えば、賃借人に長期間に渡る家賃の滞納や更新料の不払いなどがあると、立ち退きの正当事由とされる可能性があります。

3-3 3)建物の利用状況

建物の利用状況によっても、正当事由が認められることがあります。具体的には、次のようなケースが該当します。

  • ペット不可の物件でペットを飼っている
  • 賃借人が継続的に契約に違反しており、再三の注意をしても改善の見込みがない
  • 借りている建物をほとんど使用していない

3-4 4)建物の現況

建物の現況も、正当事由かどうかを判断する基準の1つです。以下の事情が考慮されます。

  • 建物の老朽化
  • 建物の耐震性の劣化
  • 周辺の開発状況
  • 建物修繕の必要性の有無

建物そのものが古く老朽化している場合、過去の災害による劣化や、給排水設備の破損などにより修理によって状況を改善することが難しいケースも多いです。建物の使用期限に明確な定めはありませんが、一般的に築30年~40年が経過すると、建て替えを検討した方が良いといわれています。

ただし、建物が古くなっているというだけでは、立ち退き要求の正当事由とはなりません。建て替えや取り壊しに緊急性がないのであれば、正当事由として認められない可能性があります。

3-5 5)財産上の給付をする旨の申出をした場合におけるその申出

立ち退きを求められた理由が正当事由として認められるには弱い場合でも、財産上の給付をすることによりその補完とすることができます。

ここでいう財産上の給付とは、立ち退き料の支払いや代替物件の提供、賃料の一定期間の免除などを指します。立ち退き料は、立ち退き要請の正当事由に応じ、借主の引越し・移転費用や営業損失を補填することで、正当事由を補完する補償金です。

実際の交渉の場では、立ち退き要請の正当事由が強い場合、立ち退き料の金額は下がる傾向にあります。

立ち退き料として請求できる代表的な項目は次の通りです。

住居の場合
  • 引越し費用
  • 不動産会社への仲介手数料
  • 敷金や礼金
  • 賃料が上がる場合の差額
  • 慰謝料や迷惑料
オフィスや店舗(事業用物件)の場合
  • 引越し費用
  • 不動産会社への仲介手数料
  • 敷金や礼金
  • 賃料が上がる場合の差額
  • 慰謝料や迷惑料
  • 休業補償
  • 顧客離れによる損失

立ち退き料の適正な金額は、賃貸借契約の内容によって変わるため、弁護士と相談の上、交渉を依頼することをおすすめします。

立ち退き料の内訳については、以下の記事でも詳しく解説しています。
立ち退き料はいくらもらえる?相場や条件などを徹底解説

 

4.借地借家法の正当事由として立ち退きを拒否できない具体的なケース

前述の通り、借地借家法28条の規定により、賃貸人が賃借人に立ち退きを求めるには「正当事由」が必要です。

借主は原則として立ち退きを拒否できます。補償が不足しているのであれば、立ち退きを拒んで条件面で交渉を行ったり、立ち退きまでの期間の延長を求めたりすることもできます。

ただし、どのような場合も立ち退きを拒否できるわけではありません。借主が立ち退きを拒否できないケースを、具体例を挙げて見てみましょう。

4-1 定期借家契約期間が満了になったとき

現在の物件の契約が「定期借家契約」である場合、立ち退き料は受け取れません。定期借家契約は、居住用物件などで広く行われる「普通借家契約」と違い、原則契約の更新を行わないためです。

普通借家契約では、通常2年程度の契約を更新しながら長期間に渡り居住することを目的としているため、更新時の立ち退きであっても立ち退き料が発生する可能性があります。

しかし定期借家契約の場合は、期間の満了により正当事由なく契約を終了させ、明け渡しを求めることができます。

ただし、借主に明け渡しを求めるには、契約期間満了の1年〜6ヶ月前までに、借主への通知が必要です

4-2 賃料の滞納など契約違反があるとき

借主に契約違反や重大な過失が認められる場合も、立ち退き料が発生しないケースがあります。実際に貸主側から退去を求められる例として、以下が挙げられます。

  • 家賃を長期間(3ヶ月以上)滞納している
  • 物件を無許可で第三者に又貸ししている
  • 無許可で改装やリフォームをした
  • 故意または重大な過失で物件を損傷させている
  • 公序良俗に違反する目的や反社会的な用途に使用している
  • 騒音や水漏れ、悪臭など迷惑行為を一向に改善しない
  • ペット不可の物件で無断飼育している
  • 予定の業種と異なる店を営業している
  • 住居目的で借りた場所で店舗営業をする
  • そのほか重大な契約違反が存在する

よく指摘されるのは、小規模の事業者の「目的外使用」です。住居として契約した物件を、会社の住居として登記しているようなケースで問題になることがあります。

4-3 建物の老朽化によって身体に危険が及ぶとき

建物が老朽化していることにより、住み続けることが危険と判断される場合も、前述の「正当事由」に該当する可能性があり、立ち退かなければならないケースがあります。

ただし、老朽化が正当事由として認められるには、建物の損傷などにより居住を継続する危険性が高い状態でなければなりません。単に「建物が古くなった」「法定耐用年数が経過した」だけでは、正当事由としては認められません。

混同されることも多いのですが、建物の法定耐用年数はあくまで「物件の所有者が賃料収入を税務署に申告する際に、取得価格を経費として計上できる法定の期間」です。便宜上定められている税制上の年数に過ぎないため、実際の老朽化における立ち退き料の支払いとは無関係です。

そのため「法定耐用年数が過ぎているから立ち退き料がもらえない」わけではありません。

4-4 大家がどうしても自ら物件を使用したいとき

大家や大家の家族が物件を自分で使用する必要がある場合も、正当事由に該当するケースがあり、立ち退きを拒否できない可能性があります。

ただし、自己使用の場合でも無条件に立ち退き料を受け取れないわけではありません。ほかに住む場所を手配できず、その物件しかないといった事情が必要となります。具体例として以下が挙げられます。

  • 大家の本業で転勤することになった
  • 通院している病院が近くにある
  • 介護など家族の事情で同居する家が必要になった
  • 経済的余裕がなく賃貸住宅を契約できない

4-5 そのほかの正当な事由があるとき

そのほか、以下のような正当な事由がある場合も、立ち退きを拒否できない可能性があります。

  • 土地の有効活用のために建て替えが必要である
  • 物件のある土地が公共事業の再開発予定地になった
  • 都市計画により国や自治体が土地を収用する場合

ただし、こうした場合も居住が継続できなくなることから、状況次第で立ち退き料の請求が可能です。

 

5.立ち退きを拒否したらどうなる?立ち退き料をもらうまでの流れ

ここまで解説したように、借主は原則として立ち退きを拒否できますが、拒否できないケースもあります。

では、「納得できる補償を提示してもらえない」「立ち退きたくない」という場合、立ち退きを拒否するとどうなるのでしょうか。解決までの流れを紹介します。

立ち退き料をもらうまでの流れや、具体的な対処法は以下でも紹介しています。こちらも参照してください。
立ち退きを求められたらどうする?確認すべきこと、初動の対応方法を解説

5-1 弁護士に立ち退き料・立ち退き時期などの交渉を依頼する

貸主から立ち退きを要求されたら、まず賃貸借契約書と立ち退きの通知書を確認します。貸主側から提示された条件や、賃貸借契約書の契約終了に関する条項を確認しておきましょう。

現状の立ち退きの条件に納得できない場合、貸主に立ち退き拒否の意思を伝えます。この時点で弁護士を探しておくと、立ち退きの条件交渉を依頼することが可能です。

交渉自体は自分でもできますが、弁護士に依頼することで、法的な根拠に基づいた適切かつ冷静な主張ができるようになります。

5-2 【交渉に合意した場合】合意書の締結・明け渡し・退去手続きを進める

立ち退き交渉の結果、納得のできる条件を引き出せて合意できた場合、貸主との間で合意書を締結します。合意書には、立ち退き料の金額や立ち退きの時期などの条件を明記するようにしましょう。

退去が決まったら、新居の契約や引越し業者の手配、荷物の整理を進めます。合意した明け渡し時期は厳守する必要があるため、間に合わない事態にならないよう計画的に進めましょう。

5-3 【交渉に合意しなかった場合】調停や裁判によって解決する

貸主との交渉が折り合わず決裂した場合、貸主が裁判所に調停や訴訟を申し立てる可能性があります。

調停とは、調停委員が当事者の間に入り、話し合いで解決を目指す手続きです。調停でも解決しない場合は裁判(訴訟)に移行し、最終的には裁判所が正当事由の有無や立ち退き料の額を判断します。

訴訟に発展したら、通知書などの証拠書類を整理し、可能な限り有利に進むよう、弁護士と対策を練る必要があります。

 

6.借地借家法における立ち退きに関する解決事例

立ち退きをめぐるトラブルが発生したときに、当事者のみの話し合いで解決を試みることはおすすめできません。交渉が難しい場合や、感情的になり無用なトラブルに発展するケースもあります。スムーズに解決し、納得できる立ち退き料を受け取るためにも、弁護士に依頼するのが良いでしょう。

ここでは、当事務所で扱い、解決までこぎ着けることができた事例を紹介します。

立ち退きの事例については、以下の記事でも紹介しています。こちらもご覧ください。
立ち退きを請求されたらどうする?弁護士に依頼するメリットを徹底解説

6-1 建物の取り壊しを理由とした解決事例

東京都/30代/女性/一人暮らし/賃貸アパート

建物の取り壊しを理由に、管理会社から急な立ち退きを求められ、当事務所にご相談されました。
女性が管理会社から提示された立ち退き料はわずか20万円で、状況を考慮すると到底正当な額とはいえず、担当弁護士が交渉を行いました。

その結果、立ち退き料を260万円に増額することができ、退去費用や新居の手配費用など、しっかりと補償を受けることができました。

6-2 立ち退き料なしでの退去要請を理由とした解決事例

大阪府/20代/男性/ファミリー向けマンション/家族三人暮らし

不動産会社から、突如「半年分の家賃を免除するので6ヶ月後に退去してほしい」と通知が届きました。「更新料も払ったばかり、子どももいるのに立ち退き料の支払いすらないなんて・・・・・・」と理不尽さを感じ、当事務所にご連絡頂きました。

本件では、渋る不動産会社に対し弁護士が交渉を行い、235万円の立ち退き料を獲得できました。

6-3 再開発を理由とした解決事例

東京都/40代/男性/店舗/飲食店オーナー

飲食店オーナーの男性は、区から再開発を理由として立ち退きを求められました。区が提示した金額はわずか300万円。オフィス街の繁盛店だったため、休業補償にすら足りず、ライズ綜合事務所に相談されました。

弁護士が根拠をもってしっかりと適正額を主張した結果、当初の金額の10倍、3,000万円の立ち退き料を獲得できました。

 

7.借地借家法28条の理解と弁護士への相談が安心につながる

賃貸物件からの立ち退きは、借地借家法28条に基づき、正当事由が必要です。原則として借主は保護されるため、一方的な立ち退き要求に必ずしも応じる必要はありません。

立ち退きの条件に納得できない場合、拒否したり、十分な補償を求めて交渉したりすることもできます。信頼できる弁護士に相談し、しっかりと権利を主張することが大切です。

ライズ綜合法律事務所は、これまで1万5,000件を超える立ち退きトラブルの相談を受けており、3,000件以上の解決実績と圧倒的なノウハウを誇る弁護士事務所です。無料相談が可能で、全国からのご相談を受け付けています。

「提示された立ち退き料に納得できない」
「立ち退き料を払ってくれない」

このような悩みをお持ちであれば、当事務所にご相談ください。最適な形での解決をお手伝いします。


 

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