立ち退き
2026/01/23
持ち家の立ち退き料の相場は?一軒家で高くもらうためのコツは?

公共事業や地主の都合により、持ち家(一軒家)であっても立ち退きを求められるケースがあります。「せっかく建てた家を手放さなければならないのか」「生活再建や引っ越しに必要な費用を、提示された立ち退き料だけで賄えるのか」と不安を抱える方も少なくありません。賃貸物件の立ち退きと比べると、持ち家に関する立ち退きや補償の制度は複雑で、情報もそこまで多くありません。建物の解体や引っ越しといった負担を考えると、十分に内容を理解した上で判断するのが望ましいです。
本記事では持ち家(一軒家)の場合に焦点を絞って、立ち退き料の相場や内訳、適正な金額を受け取るための交渉のコツについて解説します。正しい知識を身につけ、納得のいく交渉を進めましょう。
【この記事で分かること】
- 持ち家(一軒家)の立ち退き料がもらえる法的根拠
- 【ケース別】一軒家の立ち退き料の計算方法と内訳
- 提示された立ち退き料を増額させるための3つのポイント
持ち家(一軒家)の立ち退きでも退去費用はもらえる
持ち家(一軒家)であっても、立ち退きを求められたら立ち退き料または補償金を受け取れる可能性が高いです。立ち退き料とは、オーナーや事業などの事情により、居住者が土地・建物を明け渡す際、その不利益を補うために支払われる金銭のことです。持ち家の場合は、引っ越し費用に加えて、持ち家の解体費用などが補償の対象となることがあります。
なお適用される法律は、立ち退きの理由によって異なります。
- 地主都合で借地に建てた持ち家から立ち退く場合:借地借家法
- 道路拡張や区画整理など公共事業の場合:都市計画法や土地収用法など
借地借家法とは、借主が土地を借り続ける権利を強く保護したもので、地主が契約を終了させるには、正当の事由が必要と定めています。正当の事由の有無を判断するに際して、立ち退き料はそれを補うものとして支払われることが多いです。
また公共事業の場合、土地を収用することが法律で認められているため、原則立ち退きに従う必要があります。ただし損失補償として、補償金が土地建物の所有者に支払われます。
公共事業の場合、持ち家の立ち退き料相場はない
立ち退き料(補償金)がもらえる可能性と法的な根拠は分かったものの「一体いくらもらえるのか」という部分が気になる方も多いでしょう。
しかし公共事業(道路拡張や区画整理)が理由の場合、明確な相場はないのが実情です。なぜなら立ち退き料(補償金)は、適用される法律や個別の条件(土地の面積や場所、建物の構造や広さなど)で大きく変動するからです。
ご自身のケースでの立ち退き料(補償金)の妥当な金額を知りたい方は、立ち退きに強い弁護士に算出を依頼するか、公共事業の補償について国が定めた「公共用地の取得に伴う損失補償基準(通称:用対連基準)」や自治体が定める「損失補償基準要綱」を基に、大まかな算出を行ってみてください。詳しい計算方法は次章で解説します。
【ケース別】持ち家の立ち退き料の計算方法
ここでは立ち退き理由別に持ち家(一軒家)の立ち退き料の主な内訳をご紹介します。
【ケース別 持ち家の立ち退き料内訳 早見表】
| 立ち退き理由 | 主体 | 主な内訳・計算方法(目安) |
|---|---|---|
| 土地区画整理事業 | 国・自治体 | 地区外転出:土地の価格(時価) + 建物の価格(時価) + 移転費用 換地処分:建物の解体費用 + 移転費用 ( + 清算金) |
| 道路拡張 | 国・自治体 | 土地の価格(時価)+建物の解体費用 +移転費用 |
| 再開発 | 国・自治体 | 権利変換:建物の解体費用 +移転費用( + 清算金) 立ち退き:土地の価格(時価) + 建物の解体費用 + 移転費用 |
| 民間による再開発 | 民間企業 | 土地の価格(時価) + 建物の価格(時価) + 移転費用 + α(交渉次第) |
| 借地契約の解除 | 地主 | 建物の価格(時価) + 借地権価格(の一定割合) + 移転費用 |
※持ち家で事業を営んでいる場合は、上記に加えて営業補償が加味される場合があります
土地区画整理事業による立ち退き
土地区画整理事業とは、公共施設の整備や宅地の整形を行い快適な街づくりを行うものです。国土交通省や知事の許可を得て実施されるため、居住者は協力する義務が生じます(つまり立ち退きは拒否できません)。最大の特長は、地区外転出(立ち退き)と、整備後に新しい区画が交付される換地処分を選択できる点です。
地区外転出(立ち退き)を選ぶ場合、土地の価格に加えて、建物の解体費用や移転費用を補償金として受け取れます。計算式は以下の通りです。
- 地区外転出:土地の価格(時価) + 建物の価格(時価) + 移転費用(引っ越し代など)
土地の価格は国土交通省が公表する「公示価格」を基準に、建物の価格は築年数や構造、解体にかかる費用などを踏まえて算出されます。土地や建物の評価は専門的な知識が必要なので、不動産鑑定士などの専門家に査定を依頼するのが望ましいです。
再配置された土地に戻る場合(換地処分)
整備された土地の一区画を交付してもらい再び住む場合は、原則所有する土地に対する補償は含まれません。
土地区画整理事業では、宅地の形を整備したり公園などの公共用地を生み出したりするため、所有している土地の一部が切り出されます。そのため新しい土地(換地)は元の土地よりも狭くなるのが一般的です(これを減歩といいます)。しかし、区画整理によって安全性や住みやすさといった機能面が備わるため、1平方メートル当たりの土地の価値は上がります。例え所有する土地の面積は減ったとしても、土地の評価額としては事業の前後で変わらないと見なされるため、土地に対しての補償金は出ないのです。
ただし価値に過不足が生じた場合は、差額を清算金として受け取る、または支払うことがあります。換地処分時に受け取れる費用の内訳と計算式は以下の通りです。
- 換地処分 = 建物の解体費用 + 移転費用 ( + 清算金)
道路拡張による立ち退き
都市の交通をスムーズにするために、既存の道路を広げる道路拡張(都市計画道路事業)も立ち退きが必要となる代表的な公共事業です。
都市計画道路の区域内であっても土地や建物の販売は禁止されていないので、そのエリアが対象区域と知った上で購入するケースもあります。しかし計画決定から実際の着工まで何十年もかかるケースや、予算の都合で事業がなかなか進まないケースも多いため、立ち退きのための補償金を受け取ることができます。
土地区画整理事業が土地の交換(換地)が基本であるのに対し、道路拡張の場合は道路になる部分の土地を国や自治体に買収されるのが大きな違いです。そのため補償金は国が定めた公共用地の取得に伴う損失補償基準(用対連基準)に基づき、土地の価格(時価)そのものが補償の対象となります。
- 立ち退き = 土地の価格(時価) + 建物の解体費用 + 移転費用
この補償金の範囲は、あくまでも立ち退きによって失われる財産の補填分です。もし提示された金額面で折り合いがつかなければ、収用委員会に対して裁決を申し立てることが可能です。
再開発による立ち退き
駅前に高層ビルや高層マンションを建てるといった市街地再開発事業による立ち退きも、公共性が高く強制力を伴います。再開発の場合、住民には権利変換と立ち退き(地区外転出)の2つの選択肢が提示されます。
権利変換とは、所有している土地から立ち退く代わりに再開発後に建設される新しいビルやマンションの区分所有権を元の土地や建物の価値と等価で受け取る方法です。権利変換時に受け取れる費用の内訳と計算式は、以下の通りです。
- 権利変換 = 建物の解体費用 + 移転費用 ( + 清算金)
立ち退き(地区外転出)とは、権利変換を選ばずその土地や建物から退去し、補償金を受け取る方法です。立ち退きを選んだ場合の補償金は、以下の計算式で概算を確認できます。
- 立ち退き(地区外転出) = 土地の価格(時価) + 建物の解体費用 + 移転費用
民間企業が行う再開発の場合
国や自治体が主導する上記事業とは異なり、民間デベロッパーが単独で行う再開発(地上げ)もあります。これには法的な強制力はなく、あくまで土地と家を売ってほしいという民間の取引です。そのため提示された金額に納得がいかなければ、立ち退き(売却)を拒否できます。
住民側にとっては交渉の余地が大きいものの、立ち退き料の増額を交渉する際は明確な根拠(見積もり書や査定結果など)が必要になる点に注意が必要です。
- 立ち退き = 土地の価格(時価) + 建物の価格(時価) + 移転費用 + α(交渉による上乗せ分)
借地契約の解除による立ち退き
地主から借りている土地の上に持ち家を建てているケースです。借地に住む人の権利は、借地借家法で強く守られています。地主の都合で契約解約の申入れや更新拒絶をするには、正当の事由が必要です。
しかし地主側の事情だけでは正当の事由が不十分なことが多く、それを補うために財産上の給付( = 立ち退き料)を受け取れるケースがあります。この場合の立ち退き料は、公共事業と異なり明確な基準はなく、交渉によって金額が大きく変わります。一般的な借地契約時の立ち退き料の内訳と計算式は、以下の通りです。
- 立ち退き料 = 建物の価格(時価) + 借地権価格(の一定割合) + 移転費用
地主側の土地の必要性の程度が低いほど、住民側は強い立場で交渉でき、高額な立ち退き料を要求できる可能性があります。金額で折り合いがつかなければ立ち退きを拒否できるため、立ち退きに強い弁護士への相談が望ましいでしょう。
【持ち家の立ち退きについてお困りの方へ】
事業者や地主との立ち退き交渉は専門的な知識が必要です。ライズ綜合法律事務所では、適正な立ち退き料・補償金価格の算定や交渉の代行など、幅広いご依頼に対応しています。ご相談も無料で承っておりますので、お気軽にご相談ください。
持ち家の立ち退き料(補償金)の内訳
提示された金額が妥当か判断するために、立ち退き料(補償金)の主な内訳をどのように算出するのか知っておきましょう。
土地の価格
ご自身が土地を所有している場合、その土地の時価が補償のベースとなります。時価はさまざまな算出方法がありますが、最も分かりやすいのは公示価格です。
公示価格とは、国土交通省が毎年3月ごろに公表する1平方メートル当たりの価格です。国土交通省と土地鑑定委員会が全国各地の標準値を鑑定し、価格を算出しています。公示価格は「不動産情報ライブラリ」のページで確認できます。
一軒家の解体費用
現在建っている一軒家を取り壊す費用です。構造や立地、規模によって異なります。
| 構造 | 1坪(約3.3㎡)あたりの費用目安 |
|---|---|
| 木造 | 3万円〜5万円 |
| 鉄骨造 | 4万円〜6万円 |
| 鉄筋コンクリート造(RC造) | 5万円〜8万円 |
延床面積40坪の木造一軒家なら、120万円~200万円程度が目安です。
※参考:特定非営利活動法人 空家・空地管理センター.「空き家の解体費用はどれくらい?高くなるケースや抑えるコツもご紹介」,(参照2025-11-11).
移転費用
移転費用とは、立ち退きに伴い新しい生活を始めるための実費全般です。
具体的には、荷物の運搬費やエアコン移設費などの引っ越し代、新しい家を再建築したり同等の家を購入したりするための新居の取得・建築費用、新居が完成するまでの仮住まい費用や、新しい家の登記費用、不動産取得税、住宅ローンの手数料といったその他諸費用が挙げられます。ただし、適用する法律や補償金算出の基準によっては含まれないものもあります。ご自身のケースで補償金の対象となるものの詳細を知りたい方は、事業者もしくは立ち退きに強い弁護士へ問い合わせてみましょう。
もし持ち家で個人商店や事務所などの事業を営んでいた場合、上記に加えて営業補償も請求対象に含まれます。
借地権
借地に一軒家を建てている場合、借地権も立ち退き料の対象です。借地権価格の目安は、以下の方法で算出できます。
- 借地権価格 = 土地の評価額(土地の更地価格または路線価評価額) × 借地権割合
借地権割合とは土地の価値のうち借地権が占める割合で、国税庁の「路線価図・評価倍率表」で調べることが可能です。例えば借地権価格が1,000万円で、借地権割合が60%の場合、借地権価格は600万円になります。
ただし、借地権価格の全額がそのまま立ち退き料になるわけではありません。あくまでも地主側・借主双方の事情や交渉経緯、建物の状況などが考慮されて決まります。
借地権の金額が立ち退き料に影響を与えた判例(東京地判平13.10.5)
借地契約の解除では、双方の事情と立ち退き料の金額で正当の事由の有無が判断されます。ここでは地主側の必要性が高く評価されたものの、立ち退き料を決定するにあたって借地権が考慮されたケースをご紹介します。
| 概要 | 地主が定年後の自宅用地として使用する必要性を主張(立ち退き料の申し出額:800万円) |
|---|---|
| 双方の事情 | 地主の必要性:貸し出している土地建物以外に不動産を所有せず、定年退職後に収入が減ると、現在の賃貸マンションの家賃を支払い続けることが困難。土地建物を自宅用地として使う必要性が高い 借主の必要性:店舗の近くの建物を自宅として利用しているものの、営業に必須とは言えず他の住宅を借りられる状況でもあるため、建物を借り続ける必要性はそこまで高くない |
| 結論(立ち退き料) | 借地権価格約1017万5,000円であることや借主が移転のために必要な費用を考慮し、立ち退き料は900万円(借地権価格の約9割相当)が妥当と判断された |
迷惑料・慰謝料を別項目で請求することは難しい
立ち退きのケースによっては、住民の個別の事情を加味してもらうことで、立ち退き料を増額できるケースはゼロではありません。ただし迷惑料や慰謝料といった項目を個別に立てて請求することは、原則として困難です。
高齢者世帯で新たな物件を借りるのが難しい、子どもの転校を避けたいといった事情は、相手方へ伝えることで金額を少し増額してもらえる可能性があるかもしれない、と思う程度にとどめておくのがよいでしょう。
持ち家の立ち退き料を増額させる3つのポイント
提示された立ち退き料(補償金)が低いと感じる場合、増額を交渉するために以下の3つのポイントを押さえてください。
実績の多い弁護士に相談する
持ち家の立ち退き交渉、特に公共事業や民間の再開発の場合、相手は行政や大手デベロッパーなど法律と交渉のプロです。住民が一人で交渉し、増額を勝ち取るのは容易ではありません。そのため、早い段階で立ち退き交渉の実績が豊富な弁護士に相談するのがおすすめです。
弁護士に依頼すれば法的な根拠や過去の判例に基づいて交渉でき、増額のポイントを専門家の視点で見極められます。新居や引っ越し業者の手配など生活の再建も進めなくてはならない中、肉体的・精神的な負担が大きい相手方との交渉を全て任せることもできます。
【立ち退きの専門家が交渉を支援します】
一口に弁護士といってもそれぞれ得意とされるジャンルが異なります。弁護士法人ライズ綜合法律事務所は、ご相談実績16,000件以上および解決実績3,000件以上と、立ち退き交渉の実績が豊富です。相談は無料ですので、お気軽にお問い合わせください。
すぐに同意しない
立ち退き料を提示された際、その場で同意してしまうことは避けてください。地主との交渉の場合、最初に提示される金額は相手方にとっての最低ラインであり、交渉の余地を残しているケースが少なくありません。
一度同意すると決定を覆すのは困難なので「一旦検討します」と伝え、通知書の内容や提示額を持ち帰り、必要な実費を全て賄えるか、土地や建物の評価額は適正かを精査してください。
土地の評価額を正しく算出する
立ち退き料(補償金)の多少を左右する要素の一つが、土地の価格です。事業者が提示する評価額はおおよそ公示価格を基準にしていますが、ご自身の土地の条件が適切に反映されているとは限りません。
そこで有効なのが、不動産鑑定士など鑑定のプロに評価を依頼することです。
客観的な鑑定評価書があれば、提示された土地の評価額は低すぎると主張することで増額できる可能性があります。土地の評価額が上がれば、借地権価格も引き上げることが可能です。
まとめ
持ち家(一軒家)の立ち退きを求められた場合、賃貸とは異なり、土地や建物の権利が関わるため、動く金額が高額になりやすいです。公共事業であれば補償基準がありますが、民間の場合は交渉次第で金額が大きく変わるのが実情です。
相手方(事業者や地主)は専門知識を持って交渉してきます。提示された条件をそのまま受け入れると、新しい生活を再建するために十分な費用が得られないリスクがあります。そのため立ち退き料交渉をするなら、実績が豊富な弁護士に相談するのがおすすめです。
弁護士法人ライズ綜合法律事務所は、ご相談実績16,000件以上および解決実績3,000件以上の実績を有する、立ち退きに強い弁護士事務所です。不動産鑑定士とともに精度の高い立ち退き料の試算を行っているため、提示された立ち退き料の多少を判断することができます。もちろん交渉自体を依頼することも可能なので、まずはお気軽にお電話ください。
このページの監修弁護士

弁護士
久松亮一(弁護士法人ライズ綜合法律事務所)
東京大学法学部、及び法政大学法科大学院卒。
2012年弁護士登録。
弁護士歴10年以上の知見を活かし、法律の専門家として、債務整理・慰謝料請求・立ち退き問題など、同事務所が取り扱う幅広い法律問題に従事している。