立ち退き
2026/03/30
立ち退きの拒否は一軒家でもできる?料金やトラブルを防ぐ方法は?

「思い出の詰まった一軒家なのに、突然立ち退きを求められた」「借地契約の更新を拒否された」など一軒家にお住まいの方でも立ち退き問題は起こり得ます。住み慣れた家からの立ち退きを拒否できるかどうかは、所有形態(持ち家・賃貸)や立ち退きの理由によって判断が分かれます。ご自身のケースで拒否ができるのかが分からないと、生活を守りつつ合理的な判断をするのが難しいものです。
本記事では一軒家の立ち退きに焦点を当てて、立ち退きを拒否できるケースと拒否できないケースの違いをはじめ、立ち退き料の相場、強制執行などのトラブルを防ぐ対処法などを解説します。
【この記事で分かること】
- 【ケース別】一軒家への立ち退き要請を拒否できるかどうかの判断材料
- 一軒家の立ち退き要請に関する過去の判例
- 一軒家からの立ち退きを拒否する場合のポイント、トラブルを防ぐ方法
一軒家でも立ち退きは拒否できる
一軒家からの立ち退きは原則として拒否できますが、所有形態によって根拠となる法律が異なります。また立ち退きの理由によっては拒否ができないケースもあり、状況によって判断が分かれると認識することが重要です。
ご自身が土地と建物を所有している場合、日本国憲法第29条の財産権によって権利が強く守られています。そのため、貸主からの一方的な理由で立ち退きを求められても、原則として応じる義務はありません。
また土地を借りて一軒家を建てている場合も、土地を借り続ける権利(借地権)は借地借家法で強く守られています。地主が立ち退きを要求するには正当の事由が必要であり、一方的な自己都合では認められにくいため、拒否が可能です。
ただし、例外もあります。道路拡張や再開発といった公共事業の場合は、持ち家・借地にかかわらず、関係法令に基づく補償と引き換えに立ち退きに応じなければなりません。また借地で地代を長期滞納しているなど、ご自身に重大な契約違反がある場合も立ち退き拒否は困難です。
一軒家からの立ち退きを要請されるケースと拒否の可能性
一口に一軒家への立ち退き要請といっても、その背景はさまざまです。
- 土地区画整理事業による立ち退き要請
- 道路拡張による立ち退き要請
- 再開発(法定再開発・民間再開発)による立ち退き要請
- 借地契約の解除による立ち退き要請
ここでは立ち退きを要請される主なケースごとに、拒否できる可能性と拒否できない場合に取るべき行動を解説します。
土地区画整理事業による立ち退き要請
国や自治体が主体となって行う土地区画整理事業は、都市計画法や土地収用法といった法律に基づく公共事業です。一般的には区画整理後の新しい土地を受け取る(換地処分)のですが、地区外への移転を選択することも可能です。ただし、公共事業を実行するために必要な土地の収用には法的な強制力があり、原則として立ち退きを拒否することはできません。
もし立ち退きを拒否し続けると、最終的に収用手続・明渡し命令、場合により代執行に至り、強制的な退去が行われる可能性があります。したがって土地区画整理事業が理由の場合、立ち退きを拒否するのではなく、いかに有利な条件で立ち退くかという交渉に切り替えることが重要です。例えば提示された補償金が生活を再建するために十分な金額か、弁護士や不動産鑑定士など専門家のアドバイスを基に精査する必要があります。
道路拡張による立ち退き要請
道路拡張も国や自治体が主体となって行う環境整備であり、土地区画整理事業と同様に公共事業です。都市計画法に基づき法的な強制力を持つため、原則として立ち退きを拒否することはできません。拒否し続ければ、行政による強制執行が実施されます。
そのため道路拡張での立ち退きの場合も、退去を拒否するのではなく正当な補償を求める交渉に行動を切り替えるのが望ましいです。例えば、道路拡張によって土地の一部だけが収用される場合でも、残った土地が狭すぎて家として機能しなくなる場合は、土地全体を買い取るよう交渉できる可能性もあります。対話を通じて、生活再建のための十分な補償を求めることが重要です。
法定再開発による立ち退き要請
都市再開発法に基づく法定再開発は、国や自治体が主体となって行う公共事業のことで、法的な手続きに則って実施されます。そのため強い法的強制力を持ち、個人の意向だけで立ち退きを拒否することは原則できません。
この場合、所有者が取れる行動は大きく二つあります。一つ目は正当な補償金を受け取って立ち退く方法、もう一つが権利変換を選択する方法です。
権利変換とは、現在所有している土地や建物の資産価値に見合った分だけ、再開発後に新しく建てられるビルの床を受け取る仕組みです。住み慣れた土地を離れたくないと考える方は、この権利変換を選ぶケースが多いです。
ただし権利変換を選ぶと、所有している土地への補償は受けられないため、補償の範囲は、限定的になる可能性があります。どちらがご自身の将来にとって有利な選択か、専門家とよく相談して判断することが重要です。
裁量権の逸脱や濫用があった場合は拒否できる可能性がある
原則拒否できない法定再開発ですが、例外もあります。その再開発計画自体に裁量権の逸脱または濫用が認められる場合です。
裁量権の逸脱とは、客観的に見て行政の裁量の範囲を明らかに超えていること、裁量権の濫用とは法律の趣旨や目的に合わない、不当な動機で行われていることを意味します。
例えば公園を作るという目的の再開発が、実際には特定の企業に利益をもたらすものであり、公園利用者の需要予測なども明らかに間違っているといった場合です。ただしこれを裁判で証明し、再開発自体の決定を取り消すのは非常に困難であるため、弁護士に相談しながら進める必要があります。
民間再開発による立ち退き要請
法定再開発とは異なり、デベロッパーなどの民間企業が独自に行う再開発には、法的な強制力はありません。したがって、立ち退きを拒否すること自体は可能です。
ただし周辺の土地が次々と買収され、自分の家だけがポツンと残ってしまうと、日照や騒音の問題など、住環境が悪化するリスクがあります。また再開発の予定がある土地を売却するのも難しく、身動きが取りにくい状況に陥ってしまうリスクもあります。民間再開発の場合、立ち退き拒否を貫くのか、それとも有利な条件を提示してもらい交渉に応じるのかは、慎重な判断が必要です。
借地契約の解除による立ち退き要請
冒頭で述べた通り、土地を借り続ける権利は借地借家法で強く守られています。大家が立ち退きを要求するには正当の事由が必要であり、簡単に認められるものではありません。そのため、原則として立ち退きの拒否が可能です。
ここで問題になるのが、契約期間が終了するタイミングでの立ち退き要求です。普通借地契約の場合は期間が満了しても、原則として更新されることが前提の契約です。そのため、正当な手続きで更新拒絶をするには、遅くとも契約満了の1年~6カ月前までに借主へ通知をする必要があります。立ち退き期限が6カ月よりも短い場合は、立ち退きを拒否することが可能です。
一方定期借地契約は、契約時に更新をしないことを前提とした契約です。この場合、期間が満了した後双方の合意が無ければ、立ち退きを拒否することはできません。また立ち退き料をもらうこともできません。借地契約での立ち退き要請を受けた場合は、ご自身の契約が普通借地なのか定期借地なのかをすぐに確認しましょう。
居住権があっても立ち退きを拒否できないケースもある
普通借地契約で正当の事由がなくても、借主が以下のような重大な契約違反をしている場合は、大家からの契約解除を拒否できません。
- 契約違反(用法違反・無断増改築・無断転貸)
- 債務不履行(地代の滞納)など
例えば住居として借りているのに飲食店を営業している、大家に無断で家をリフォームした、他人に又貸ししたなどの実態がある場合は契約違反に当たります。また地代を長期間にわたり滞納している場合も、債務不履行になります。
契約違反が認められると、大家との信頼関係が破壊されていると見なされ、立ち退き料をもらうことも難しくなります。
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一軒家の立ち退き料の相場
立ち退き拒否ができないケースの場合、重要になるのが立ち退き料の金額です。金額によっては生活の再建に支障が出る可能性もあるため、慎重に確認する必要があります。
ここでは、基本的に借主自身が交渉を行った場合の相場や、主な補償内容を解説します。
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立ち退きのケース |
立ち退き料の相場 |
主な補償・内訳 |
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公共事業(土地区画整理、道路拡張、法定再開発など) |
1,000万円〜1億円以上 |
・土地、建物の対価 ・移転費用(引っ越し代、場合によって仮住まい費用、) ・生活再建のための費用(営業補償など) |
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民間再開発 |
交渉次第(数百万円〜数千万円) |
・移転費用(実費) ・営業補償 |
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借地契約の解除(正当の事由の補完) |
借地権価格の一定割合 + 移転費用 |
・借地権の対価 ・移転費用(実費) ・営業補償 |
※立ち退き料の相場は一般的な目安です。実際の金額は個別事情・評価により大きく異なります
まず公共事業の場合、補償の内容は「公共用地の取得に伴う損失補償基準要綱(用対連基準)」によって細かく定められています。上記のケースは土地建物の所有者を想定した例のため、土地・建物の対価や移転費用、営業補償など、生活再建に必要な費用や損失への補償が対象となります。そのため、総額は1,000万円から1億円以上になることもあります。
次に民間再開発の場合、法的な補償義務がないため金額は交渉によって決まります。とはいえ内容としては損失への対価や立ち退き・仮住まいへの移転などにかかる実費分で計算されるケースが多いです。
借地契約の解除の場合も、貸主の正当の事由(立ち退きを求める理由)の強弱に応じて立ち退き料の金額が変わります。多くのケースで借地権価格や移転にかかる費用(引っ越し代など)の足し上げによって算出されますが、借地権の算出は貸主・借主の主張がぶつかることもあるため、弁護士など専門家のアドバイスを基に交渉をするのが望ましいです。
相場の詳しい内訳や計算方法について知りたい方はこちらの記事も合わせてご覧ください。
一軒家(借地)の立ち退き要請に関する判例
ここでは借地に建てた一軒家への立ち退き要請について、実際の判例をご紹介します。
立ち退き拒否が認められたケース(東京地判平26・2・28)
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立ち退き要請の理由 |
貸主の自己使用の必要性(高齢のため、居住環境の悪い現在の住まいではなく当該土地に住居を建てたい) |
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判決(結論) |
立ち退き拒否を認める(貸主の請求棄却) |
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立ち退き料の申し出額 |
なし |
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最終的な立ち退き料 |
なし(正当の事由なしと判断) |
96歳と高齢の貸主が、現在居住しているオフィスビルは飲食店の騒音などで環境が悪いため、自己の住居として本件土地を使用する必要性が高いと主張し、更新拒絶を申し入れた事案です。
裁判所は貸主側の事情について、現在のビルに入居する際は周辺環境を理解した上で入居しており、今後も無償で居住可能であること、また長男家族と同居することも可能であることなどから、土地の自己使用の必要性を認めませんでした。一方で、借主はこの土地上の建物を所有して16年にわたり居住しており、土地利用の必要性が高いと評価しています。
結論として、貸主から立ち退き料の申出があったことを考慮しても、正当の事由は具備されないとして立ち退き請求を退けました。
立ち退き拒否が認められたケース(東京地判平25・10・17)
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立ち退き要請の理由 |
地主が土地利用の必要性を主張 |
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判決(結論) |
立ち退き拒否を認める(地主の請求棄却) |
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立ち退き料の申し出額 |
約2,768万円(更地評価額の70%) |
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最終的な立ち退き料 |
なし(立ち退き要請の正当の事由は認められないため) |
地主が土地の使用を必要としているとして、立ち退きを求めた事案です。地主側は、借地契約の名義人(Y)本人は住んでおらず、兄弟(Z)が家族と共に居住していることを指摘。
裁判所は、借主の名義は相続によるものである点に着目しました。居住している兄弟(Z)も被相続人の子であり、8年近く居住して地代を支払い続けていることから、実質的に借地人と同一視することができると判断。また、建物の改築後には名義人(Y)も居住を予定していることから、こちらの土地使用の必要性を認めました。
一方、地主側には土地利用の具体的な計画や必要性を裏付ける証拠がありませんでした。そのため、更地評価額の70%に相当する約2,768万円という高額な立ち退き料の提示があったとしても、正当の事由があるとはいえないと判示されました。
立ち退き要請が通ったケース(東京地判平13・10・5)
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立ち退き要請の理由 |
大家の自己使用の必要性(定年後の自宅用地として使用したい) |
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判決(結論) |
立ち退き要請を認める(立ち退き料の支払いと引き換え) |
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立ち退き料の申し出額 |
800万円 |
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最終的な立ち退き料 |
認定額 900万円 |
貸主が定年退職後の自宅用地として土地を使用したいと、更新拒絶を申し入れた事案です。貸主はこの土地以外に不動産を持っておらず、定年後は収入が激減し、現在のマンション家賃の支払いが困難になるという事情がありました。
裁判所は、貸主が自宅として使用する必要性は高いと認めました。一方で借主については自宅兼寿司屋として使用していましたが、寿司屋は近所の別の土地で経営しており、この建物が営業に必須とはいえません。また隣で代替の自宅を探すことも、貸主に比べて特に困難ではないとされました。
最終的には貸主の必要性が上回るとして、借地権価格(約1,017万円)や移転費用を考慮した900万円の立ち退き料支払いと引き換えに、立ち退きを認めました。
立ち退き要請が通ったケース(東京地判平19・1・29)
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立ち退き要請の理由 |
大家(地主)の自己使用の必要性/借主の不使用 |
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判決(結論) |
立ち退き要請を認める(立ち退き料の支払いと引き換え) |
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立ち退き料の申し出額 |
4,500万円または裁判所が相当と定める額 |
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最終的な立ち退き料 |
認定額 4,500万円 |
貸主が両親の介護のために土地を利用して建物を建てたいと主張した事案です。借主は約40年にわたり施設に入院しており、建物は長期間、電気・ガス・水道もない空き家状態で老朽化が進んでいました。
裁判所は、借主が今後この建物に居住する可能性・必要性は著しく低いと認定。 一方貸主側についても、周辺に多数の土地を持つ資産家であり、必ずしもこの土地でなければならない理由は強固ではないとされました。
しかし、借地人側の必要性が極めて低いことを踏まえ、貸主が高額な4,500万円の立ち退き料を支払うことで、正当の事由の不足分が補完されると判断し、立ち退きを認めました。
一軒家からの立ち退きを拒否・交渉する際のトラブルを防ぐ方法
先述の通り、一軒家の立ち退きはケースによって拒否できるかどうかが異なります。
重要なのは拒否できる場合もできない場合も、感情的にならず冷静に対応してトラブルを避けることです。ここでは、立ち退きの拒否や交渉を進める際の重要なポイントを解説します。
すぐに結論を出さない
立ち退きを要請された場合、焦って結論を出してその場で合意書などにサインしてしまうことは避けましょう。
相手から「すぐに返事をくれ」や「今サインしてくれればこれだけ上乗せする」などと急かされても、応じる必要はありません。なぜなら一度合意書にサインした場合は、法的な拘束力が生じてしまうからです。後から「補償額が少なすぎた」「本当は立ち退きたくない」と思っても、その合意内容を覆すのは非常に困難です。
相手に返事を求められた場合は、落ち着いて「家族(あるいは弁護士)と相談してからでないと返事はできない」または「要求の内容を、補償の条件も含めて全て書面でください」と伝え、一旦持ち帰って冷静に検討する時間を必ず確保しましょう。
立ち退きに強い弁護士へ相談する
立ち退き問題は、法的な知識と交渉術の双方が必要となる非常に専門性の高い分野です。ケース別でご紹介した通り、一口に一軒家の立ち退きといっても公共事業が理由のケースと借地のケースでは拒否の可能性や立ち退き料の相場が異なります。ご自身の事情に当てはめて、それぞれを判断するのは難しいものです。
特に公共事業(土地区画整理、道路拡張、法定再開発)の場合、交渉の相手は再開発や区画整理をこれまで何度も行ってきた、法律と交渉のプロです。個人で立ち向かっても、ご自身の主張を通すのは難しいでしょう。
弁護士が代理人として交渉することで、強制執行により物理的に退去させられるといった事態を避けつつ、補償金の増額や換地処分・権利変換の交渉を有利に進められる可能性が高まるでしょう。
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まとめ
一軒家への立ち退き要求は、持ち家か借地か、また立ち退きの理由が公共事業か民間開発かによって判断軸が大きく異なります。公共事業のように拒否できない場合、正当な補償を受けるためには、相手方と高度な交渉を行う必要があります。また立ち退きを拒否できる権利があるケースでも、感情的な態度で交渉に臨むと深刻なトラブルになりかねません。
特に、土地の価格や借地権価格が関わる補償金の交渉の場合、専門知識がなければ適正額を見極めることも容易ではありません。提示された金額をうのみにして合意してしまってからでは手遅れです。
一軒家への立ち退き要求を受けたら、ご自身の権利と財産を守るためにも立ち退き問題に詳しい専門家へご相談ください。弁護士法人ライズ綜合法律事務所では、不動産鑑定士と連携し、土地・建物の価値を見極めた上で適正な補償金・立ち退き料を厳密に試算します。また豊富な知識と経験を生かして、借主に有利な事情を拾い、立ち退き料を増額できる可能性を高めます。
ご相談は何度でも無料で、最短即日対応も可能です。「提示された補償額は妥当か」「拒否したいがどうすればよいか」など、どんなお悩みでもお気軽にご相談ください。
このページの監修弁護士
弁護士
三上 陽平(弁護士法人ライズ綜合法律事務所)
中央大学法学部、及び東京大学法科大学院卒。
2014年弁護士登録。
都内の法律事務所を経て、2015年にライズ綜合法律事務所へ入所。
多くの民事事件解決実績を持つ。第一東京弁護士会所属。