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立ち退き

2026/03/30

立ち退きの際の営業補償は受けられる?店舗(テナント)での種類や内容は?

立ち退きの際の営業補償は受けられる?店舗(テナント)での種類や内容は?

突然立ち退きの要請を受けると、今後の利益や従業員の給料への不安を抱えてしまうと思います。店舗の立ち退きでは、移転費用の他にも営業補償を請求できる場合があります。これは事業継続に不可欠な権利ですが、知識不足が原因で貸主の提示額で安易に合意してしまうと、損をするケースもあります。

本記事では、営業補償の種類や判例を解説し、正当な権利を守るための知識を提供します。

【この記事で分かること】

  • 店舗の立ち退きで請求できる営業補償の定義と受給条件
  • 営業休止・廃止の区分による補償内容と具体的な計算項目
  • 営業補償額の決まり方と相場の考え方

立ち退きに伴う営業補償とは?

営業補償とは、物件の貸主や国・自治体などの都合により店舗などの営業を一時的に休止、または完全に廃止しなければならない場合、それによって生じる営業上の損失額が補填されることです。補填のために支払われる金銭そのものを営業補償や営業補償金と呼ぶこともあります。

店舗の立ち退きにおいて、借主は単に移転費用が必要なだけではなく、移転準備期間中の収益減少、場所が変わることによる顧客離れなど目に見えにくい損失を抱えることになります。

営業補償はこれらの事業上のマイナスを穴埋めすることで、移転先でもこれまで通り事業を継続できるようにするために支払われるものです。例えば、長年にわたって地域密着で営業してきた飲食店が立ち退く場合は、新しい場所で以前と同じ利益を確保するには時間がかかるため、その期間の損失を正当に評価し、補填を求めることができます。

店舗(テナント)の立ち退きを求められる主なケース

ここでは、店舗の立ち退きを求められる代表的な3つのケースを解説します。

貸主自らが利用・売却するケース

貸主やその家族が店舗物件を自ら利用したいと考えるケース、あるいは土地建物を第三者に売却して現金化したいという事情から立ち退きを求められるケースです。

しかし、単に「自分で商売を始めたい」「資産を整理したい」という主観的な理由だけでは、長年その場所で営業を続けている借主を退去させる正当の事由として認められない可能性が高いでしょう。貸主が経済的な困窮で、物件を売却しないと生活が維持できないといった客観的かつひっ迫した事情がない限りは、借主は立ち退きを拒否することも可能です。このような、貸主側の自己都合で立ち退きに応じる場合には、営業補償を含む立ち退き料の交渉において、借主側が主導権を握り、より有利な条件を引き出せる可能性が非常に大きいといえます。

建物の老朽化に伴い建て替えられるケース

建物の築年数が経過し、老朽化による安全性や耐震性の問題から、建て替えや大規模改修が必要となり、結果として立ち退きを求められるケースです。特に築60年を超えるような物件では、この理由による立ち退きを求められる可能性が高まります。

老朽化や地震時の倒壊リスクを客観的に示すデータなどがあれば、貸主の正当の事由は認められやすくなり、立ち退きを拒否し続けることは現実的に困難になるでしょう。例えば、専門家による耐震診断で震度6強で倒壊の恐れがあると判定された場合、借主が建物を利用し続ける権利よりも安全の確保が優先されることがあります。

ただし、立ち退きに応じる場合でも、無条件で出ていく必要はありません。営業を中断することによる損失は依然発生するため、再出発のための資金として適切な営業補償を含む立ち退き料を請求して、合意を得ることが重要です。

道路拡張などの公共事業の対象となるケース

都市計画に基づいた道路の拡張や、駅前の再開発、あるいは公園の整備といった公共事業の対象地に店舗が含まれ、建物自体が取り壊し対象となるケースです。

この場合には、貸主個人の判断ではなく、国や自治体といった公的機関が主体となります。上述したような公共性の極めて高い事業であれば、貸主の意向にかかわらず、最終的には立ち退きに応じなければならないケースがほとんどです。

立ち退き自体を拒否することは難しい一方、国や自治体には明確な補償基準が存在するため、それに基づいた営業補償を確実に受けられるという側面もあります。店舗の一部が削られることで以前と同じような営業ができなくなる場合の改築費用や、仮店舗へ移転して営業を継続する期間の収益減少分などが細かく算出され補填されます。公共事業による立ち退きでは、基準に沿う正当な権利を漏れなく主張することが求められるでしょう。

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立ち退きに当たって営業補償は受けられる?

貸主や公的機関の都合による立ち退きでは、通常は営業補償(またはそれを含む立ち退き料)を受け取ることが可能です。店舗の借主は、長年その土地で営業を続けることによって顧客を獲得しており、突然の移転によって多大な経済的不利益を被ることがあるため、それを補填してもらうのは法的に正当な主張といえます。例えば、真面目に家賃を払い続け、長年にわたり地域に愛されてきた店主であれば、貸主からの老朽化による建て替えという一方的な要求に対しては、営業継続が困難になることへの対価として、相応の営業補償を求める権利が十分に認められるでしょう。

ただし、借主側に債務不履行がある場合は例外です。以下のようなケースでは、貸主との信頼関係が破壊されたと見なされ、営業補償を受けられない可能性が高いです。

  • 賃料を長期間滞納している場合
  • 無断で第三者に店舗を転貸したり、飲食店として契約したのに住居として使用したりするなどの契約違反がある場合
  • 騒音・悪臭の放置、建物の意図的な損壊、他のテナントや近隣住民への著しい嫌がらせなどの迷惑行為が報告されている場合

営業補償の種類

営業補償は立ち退き後に事業をどのような形で継続するかによって、大きく営業休止補償と営業廃止補償の2つに分けられます。移転して再開を目指すのか、あるいはこれを機に店を畳むのかによって算出根拠が大きく変わります。

営業休止補償

新しい場所を見つけて営業を再開することを前提とした補償です。店舗の移転に伴う一時的なブランク期間の損失をカバーする目的があります。

立ち退き料の算定において中心的な要素となり、移転先での立ち上げが軌道に乗るまでのリスクを貸主が分担する形です。この補償があることで事業主は従業員の雇用を守りつつ、店舗の移転を進めることが可能になります。

本来得ていたと想定される収益

移転後に営業が安定するまでの期間、立ち退きがなければ得られていたはずの純利益相当額を指します。算定の際は、直近3期分程度の確定申告書や決算書などをベースに、1日当たりの平均利益を算出します。例えば、月平均の純利益が100万円の店舗が移転準備と工事のために3カ月の休業を余儀なくされるケースでは、300万円が補償のベースです。

ただし、単に休業期間だけではなく、移転直後の認知度低下による減収分まで考慮される場合もあります。季節変動が激しい業態の場合、その時期に休業が重なることによる機会損失も重要な主張ポイントとなります。

従業員への休業手当

立ち退きによる休業中も、スタッフの雇用を維持して、再オープン時に戻ってきてもらうためには休業手当を支払う必要があります。会社都合休業の場合、労働基準法第26条に平均賃金の6割以上の支払いが義務付けられています。この費用は、事業主が自己負担すべきものではなく、立ち退きさえなければ発生しなかった損害として貸主に請求の対象となり得ます。正社員だけではなくアルバイトやパートの分も含みます。

また法律上の6割にとどまらず、優秀な人材の流出を防ぐために通常通りの給与を支払う必要があると判断される場合は、その全額が補償対象として認められる可能性もあり、社会保険料の事業主負担分などの付随費用も考慮されます。

固定の経費

休業中でも、事業を維持するために支払いを止められない経費(固定費)の相当額です。

  • 現店舗の維持費:完全に明け渡すまでの期間の家賃や共益費、各種火災保険料。
  • 保管料:移転先に運ぶまでの間、在庫商品や什器、厨房機器、OA機器などを一時的に外部のトランクルームや冷凍倉庫へ預ける費用。
  • 基本料金:電気・ガス・水道・電話・インターネット回線などの解約できない基本料金部分。
  • リース料・月額サービス:POSレジ、セキュリティサービス、有線放送、サブスクリプション型の管理ソフトなどの月額利用料。

例えば、生鮮食品を扱う店舗が冷蔵庫内の食材を一時保管するための電気代、特殊な設備のメンテナンス契約を維持するための費用なども、立ち退きがなければ不要だった支出として認められやすい項目です。これらを細かく積み上げることが、適正な補償額の獲得につながるでしょう。

既存客が離れることによる損失

場所が変わることでこれまでの常連客が離れてしまうリスクに対する補償です。実務上は得意先喪失補償とも呼ばれます。長年地域に根ざして営業してきた店舗にとっては、立地は最大の資産です。近隣に同条件の物件が見つからず、やむを得ず遠方や駅から離れた視認性の悪い場所に移転する場合は、集客力が落ちることは明白です。

この場所的利益の喪失による将来的な収益減少分を一時金として補填します。算定方法は複雑ですが、一般的には移転後の収益減少率を予測して、一定期間(数カ月〜1年程度)の損失分を算出します。

営業廃止補償

立ち退きを機にその場所での営業だけではなく事業そのものを完全に廃止する、あるいは全く別の業種に転換せざるを得ない場合において適用される補償です。店主が高齢で移転再開のエネルギーがない場合、特殊な設備が必要で移転先が見つからない場合などが該当します。

単なる移転費用ではなく、事業という一つの資産を失うことへの対価としての性格が強く、休止補償とは算出の考え方が異なります。

資産の売却損

事業で使った固定資産(建物附属設備、厨房機器、車両など)や流動資産(在庫、原材料)を廃業に伴い処分または売却せざるを得なくなった際に生じる損失です。店舗の造作や特注の設備は、その場所にあるからこそ価値があるもので、取り外して売却すると、大きく価値が下がることがあります。

例えば、1,000万円かけて導入した最新設備が廃業による売却で100万円になった場合は、その差額(売却損)を補償として請求します。また売却すらできず、廃棄せざるを得ないケースでは処分費用もここに含まれ、販売予定だった在庫商品が廃業により定価販売できなくなった場合の損失分も補償対象として検討されます。

従業員への解雇予告手当

事業を廃止して従業員を解雇する場合には、経営者には重い責任が伴います。労働基準法に基づき、原則として30日以上前の予告が必要ですが、急な立ち退きの要求によってこの期間を確保できないと、不足日数分の平均賃金を解雇予告手当として支払わなければなりません。立ち退きに伴う廃業により解雇が生じる場合、この手当は貸主側の都合で発生する支出と見なされ、貸主へ請求する根拠となり得ます。

また単なる法定手当だけではなく、長年貢献してくれた従業員への退職金相当額の上乗せを求める交渉も行われる場合があります。突然職を失う従業員の生活を保障するための費用を、発生原因となった貸主に負担を求めるという考え方です。特に、再就職が困難な高齢の従業員や、特殊な技能を持つスタッフを抱えている場合は、その社会的責任を補填する意味でも、この項目は手厚く算出されるべきポイントとなります。

※参考:厚生労働省.「労働契約の終了に関するルール」

https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudouseisaku/chushoukigyou/keiyakushuryo_rule.html ,(参照2026-02-20).

転業に伴う必要経費

現在行っている事業を諦め、全く別の事業を始めるために必要な準備期間の収益を補うためのものです。事業主が新しい仕事を見つけ、収入が安定するまでの生活保障としての意味合いが強く、内閣府の公共用地取得に伴う基準では、一般的に2年分の収益相当額が目安とされています。しかし、これはあくまで標準的なケースです。

例えば、店主が長年一つの専門職に従事しており、他業種への転換が容易ではない場合、高齢で再出発に通常以上の時間を要すると認められる場合は、最大で3年分程度まで考慮されることがあります。また転業に当たり必要となる資格取得費用、新しい事業のノウハウを学ぶための研修費なども、合理的な範囲内であればこの補償に含まれる場合があります。単に店を閉めて終わりではなく、その後の人生設計が立ち退きにより狂わされることへの包括的な補償として機能するのです。

※参考:内閣府.「公共用地の取得に伴う営業補償の考え方(国土交通省の例)」

https://www8.cao.go.jp/pfi/iinkai/kaisai/sougou/kentou/5kai/pdf/shiryo_sbk_523.pdf ,(参照2026-02-20).

立ち退きの際の営業補償の相場

店舗の立ち退き料は「家賃の〇カ月分」という一般的な認識が示されることもありますが、実際には営業補償の相場を一概に決めることはできません。カフェや美容室、製造工場など、業種によって移転期間も損失額も大きく異なるため、ケースごとに詳細な調査・試算が必要不可欠です。

一般的な目安は、移転の初期費用に月次利益の数カ月〜数年分の補償を合算した額ですが、借主自身が交渉した場合、貸主から最低限の提示しか受けられないケースが目立ちます。一方、弁護士を介した場合は、過去の判例や詳細な帳簿分析に基づく正当な額を主張できるため、提示額が増額される傾向にあります。納得のいく補償を得るには、専門的な知見に基づく試算を行うことがポイントとなるでしょう。

店舗(テナント)の立ち退き料の相場は?計算方法や交渉の方法は?

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立ち退きの営業補償に関する事例・判例

事業用物件、特に店舗の立ち退きにおいては、単なる移転費用の補填にとどまらず、将来の利益損失や場所的利益の喪失がどのように評価されるかが争点となります。以下、裁判所が営業補償を認めた代表的な事例について紹介します。

飲食店の店舗用物件における立ち退きの事例(東京地判平成24・4・17)

都心近郊のビルで長年中華料理店を営む借主に対して、不動産業者である貸主がビルの建て替えを理由に立ち退きを求めた事例です。建物は築50年以上で老朽化していましたが、直ちに倒壊する危険があるとまではいえない状態でした。しかし、一帯が都市再生緊急整備地区に指定されており、土地の高度利用という公益性の高い建て替え計画がありました。

貸主は再開発の必要性を訴え、対する借主は長年の営業による顧客基盤が失われるとして、約2億6,000万円という巨額の補償を主張。裁判所は建て替えの合理性を認めつつも、借主の経済的損失も大きいと判断しました。鑑定に基づく借家権価格などに加えて、営業所所在地の変更に伴う事務費用などを加味し、合計4,600万円の立ち退き料の支払いと引き換えに明け渡しを命じました。

耐震診断を根拠とする店舗用物件の立ち退きの事例(東京地判平成26・12・19)

特定緊急輸送道路に接するビルにおいて、貸主が耐震不足による安全確保を理由にテナントの退去を求めた事例です。耐震診断の結果、Is値が0.3未満で倒壊の危険性が高いと判定されました。東京都の条例により耐震化が求められていたことも大きな要因です。

貸主は公益目的の建て替えを強調。借主は営業継続を望みましたが、建物自体の残存耐用年数が極めて短い(約2年)との鑑定も出されました。裁判所は、地震時の道路閉塞を防ぐという公益性を重視。しかし、借主の移転費用や、営業継続が困難になることへの補填を考慮しました。通常の借家権価格を一定程度減額した上で、賃料差額や移転費用、営業上の損失を合算した約3,237万円を正当な補償額として認定しました。

宅地建物取引業の事務所における立ち退きの事例(東京地判平成19・8・9)

港区外苑前駅近くの都心一等地に位置するビルで、長年不動産業を営む事務所が土地の有効利用(容積率のフル活用)を目的とした建て替えによって立ち退きを求められた事例です。対象物件は築35〜45年。指定容積率に対して大幅に未充足な状態であり、貸主は隣接する敷地と一体化した大規模な再開発を計画していました。

借主は43年間にわたる地域密着のネットワークが失われることによる得意先喪失を強く主張し、高額な営業補償を求めました。裁判所は近隣への移転であれば業務継続は可能としつつ、長年の拠点を失うことによる営業上の悪影響を評価。貸主提示の約2,031万円に対して、特に営業補償(得意先喪失による損失分)を上乗せし、約3,034万円の支払いを命じました。

まとめ

店舗の立ち退きにおける営業補償は、事業主の権利を守るための補償です。補償には営業休止補償と営業廃止補償とがあります。本来得られていたはずの利益分以外に、従業員の給与や固定費も含まれますが、その算定は複雑です。適切な知識がないまま交渉した場合、貸主側の提示額に流され、大きな不利益を被る恐れがあります。

立ち退きや営業補償の問題で不安を感じている方は、ぜひライズ綜合法律事務所へご相談ください。弊所は不動産鑑定士と連携し、客観的なデータに基づく精密な立ち退き料の試算を行っており、これまでに3,000件以上の解決実績を積み重ねてきました。専門的な視点から皆さまのビジネスと生活を守るため、全力でサポートいたします。無料相談を受け付けていますので、専門家へお気軽にお問い合わせください。

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このページの監修弁護士

弁護士

三上 陽平(弁護士法人ライズ綜合法律事務所)

中央大学法学部、及び東京大学法科大学院卒。
2014年弁護士登録。

都内の法律事務所を経て、2015年にライズ綜合法律事務所へ入所。
多くの民事事件解決実績を持つ。第一東京弁護士会所属。