法律コラム

債務整理

2023/08/18

債務整理をしながら過払い金請求は可能?両者の違いや成功の秘訣とは

現在借金問題で悩んでいると、「過払い金請求」「債務整理」といった言葉を聞いたことがあるのではないでしょうか。 どちらも法的に問題なく借金を減額する方法ですが、明確な違いを知らない、同時進行できるかどうか分からない、という人も多いものです。それぞれ検討できる人やメリットが違うため、どのような手続きかを理解したうえで自分に合った方法を選ぶことが大切です。 この記事では、債務整理と過払い金請求はどのような借金減額方法なのか、それぞれの特徴と違い、同時進行するときの注意点などを紹介します。
債務整理をしながら過払い金請求は可能?両者の違いや成功の秘訣とは

1.債務整理とは

債務整理とは、交渉や裁判所の手続きなどの法的なアプローチによって債務(おもに借金)を減額する方法の総称です。広く行われている債務整理の方法としては「任意整理」「自己破産」「民事再生(個人再生)」の3種が存在します。

1-1 任意整理

任意整理とは、債権者と交渉して債務を減額する債務整理の方法です。利息や毎月の支払い額、遅延損害金など、おもに元本以外の返済分を減少させることにより債務者の経済状況回復を目指します。

任意整理の交渉を進めるなかで利息を引き直して債務の残額を再計算します。これにより、過払い金の有無を確かめることが可能です。

任意整理は、当事者間の交渉により支払い額の減少を求める債務整理方法であり、債権者側と債務者側の任意の合意形成によって借金の額を減らします。そのため、ほかの債務整理方法とは異なり裁判所を通した手続きは必要なく、比較的手軽に検討できることがメリットです。

1-2 自己破産

自己破産とは、債務の返済義務の免除を受ける債務整理方法です。債務の額が大きく返済が難しいとき、支払い能力を超過した借り入れをしていて返済のめどが立たないときに、財産と債務を清算して借金をゼロにします。

手続きには裁判所への申立てが必要です。裁判所において破産手続開始決定が出されてから破産手続が進行します。破産手続の最後で、免責許可決定が出されて、それが確定すると、債務の支払義務がなくなります。

自己破産を行うと借金はなくなりますが、不動産や一定額以上の預貯金など、一定の財産を保有していると,財産を換価して債権者に配当する必要があります。自分の財産を手放さなければならない事態がありうるため慎重に検討しなければなりません。また、養育費や税金の支払債務、破産者が悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償債務など、免責の対象にならない債務もあるため注意してください。

1-3 民事再生(個人再生)

民事再生(個人再生)は、裁判所に申し立てて借金を大幅に減額できる債務整理手続です。

民事再生(個人再生)の手続では、債務者の収入や財産に応じて定められた最低弁済額を確認した上で,原則3年(延長が認められると最長で5年)で完済できるよう、再生計画を作成します。再生計画に対し裁判所の認可決定が出されることにより,債務の支払総額が減額される仕組みです。

民事再生(個人再生)では、自己破産とは違い,保有している財産につき強制的に換価させられることはありませんが、最低債務額は積極財産の金額を下回ることはできません。検討する際は、履行可能な再生計画を立てられそうか弁護士と相談するようにしましょう。

 

2.過払い金返還請求とは

過払い金返還請求とは、過去に違法な高利率で貸し付けに対する返済をしていた分を現行の適法な利率(利息制限法)に従い再計算し、払いすぎた利息を返還するよう債権者に求める手続きです。

過去には、個人向けの貸し付けに対して「利息制限法」と「出資法(出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律)」の二つの異なる上限利率が存在した時期がありました。利息制限法の上限は20%、出資法の上限は29.2%であり、出資法の上限を超過しない限りは罰則はありませんでした。

これにより利息制限法の上限を超過するけれど、出資法の上限は守る「グレーゾーン金利」での貸し付けが横行しました。しかし、2010年に貸金業法が完全施行されてからは、グレーゾーン金利も行政処分の対象となります。

グレーゾーン金利に基づき返済していた分と、現行の適法な利率で算出した返済額の差が「過払い金」です。過払い金が発生している場合、債権者に対して払い過ぎた利息の返還を請求することが認められています。

2-1 過払い金返還請求ができる条件

過払い金は誰にでも発生しているわけではなく、以下の条件すべてに該当する場合に返還請求が可能です。なお、銀行系(信用金庫、信用組合や農協なども含む)のローンやクレジットカードのショッピング利用などは過払い金請求の対象とはなりません。

【2010年(平成22年)6月17日以前に借り入れを開始している】
改正貸金業法の施行日が2010年6月18日なので、それより前に借り入れをしている場合が対象です。

【借り入れの際の利率がグレーゾーン金利に該当する】
以下の利率を超過した金利で借り入れている場合はグレーゾーン金利にあたります。

借入金の額 上限金利
10万円未満 20%
10万円以上~100万円未満 18%
100万円以上 15%

【借金を完済してから10年を超過していないこと】
過払い金返還請求の根拠となる「不当利得返還請求権」には消滅時効があり、期間は10年です。時効が成立すると権利は効力を失うため、過払い金を返還する権利がなくなります。

 

3.債務整理と過払い金返還請求の違い

債務整理と過払い金返還請求にどのような違いがあるのか、詳しく見てみましょう。

3-1 手続きの目的

債務整理にはさまざまな方法がありますが、その目的はいずれも「そのままでは支払えない債務の整理による経済的負担の軽減」です。元金や利息の支払いを削減することにより、生活の再建を行うことを目標とします。

過払い金返還請求の最終的な目的は債務整理と同じく「経済状況の回復」です。任意整理の一環として行うことも多いのですが、手続きとしてのゴールは「払いすぎた利息の返還」です。これにより、借金を完済できる、債務の残額と相殺して借金を減らせるといった効果があります。

3-2 個人信用情報への記録

債務整理を行うと、どの方法を採用しても個人信用情報に事故情報が登録されます。これがいわゆるブラックリスト入りです。登録期間の長さは、債務整理の方法と借入先(借入先が会員になっている個人信用情報機関)によって異なり、5年間から10年間となっています。

他方、過払い金請求の場合、個人信用情報に事故情報が記録されるケースとされないケースがあります。すでに借金を完済している状態で請求する場合や、過払い金との相殺で債務が消滅するケースでは事故情報は記録されません。

すでに延滞によって事故情報が登録されている場合でも、債務の残額以上の過払い金が発生している場合は、返還のうえ順次記録が抹消されます。

3-3 請求できる期間(時効)

先ほど紹介したように、過払い金の請求には時効があるため、成立する前に請求しなければなりません。時効成立までの期間は、債権者に対して最後に支払いをした日から起算して10年です。

一方で、債務整理は「現在借金がある人」のための手続きです。借入から期間が経過したからといって、手続きができなくなることはありません。借入中であれば、いつでも債務整理を始めることができます。

 

4.任意整理と過払い金返還請求の共通点

債務整理の一つである任意整理と過払い金請求には共通点があります。

まず、過払い金返還請求は、任意整理の一部として行われることがあります。弁護士に任意整理を依頼する場合、着手した時点で過払い金が発生しているかどうかをチェックするからです。

過払い金があると、払いすぎた利息で大幅に借金を消滅させられるといったケースもあります。「支払いを軽減して経済状況を回復させる」といった目的は共通しているといえるでしょう。

また、任意整理と過払い金請求では、利息分の支払いのカットを請求したり、減額するよう求める場合も多くあります。この点も共通しています。

 

5.債務整理中に過払い金返還請求は可能

債務整理中に、過払い金返還請求をすることも可能です。

債務整理の準備段階で過払い金の存在が判明した場合、手続き開始前に過払い金の請求を行います。例えば、任意整理や民事再生(個人再生)の前に過払い金があると分かったら、過払い金で債務を相殺して大幅に減額したあと、あらためて交渉や再生計画の作成ができます。

過払い金の金額が多いと、そもそも債務整理の手続き自体が必要なくなることも少なくありません。しかし、過払い金の有無や債務整理の必要性を自己判断するのは危険です。まずは弁護士に相談し、そのうえで方針を決定すると確実です。

 

6.債務整理後の過払い金請求について

過去に債務整理をしており精算済みの借金は、あとで過払い金の存在が判明しても請求できないケースがほとんどです。これは、裁判所を通じて手続きした場合でも、任意整理で交渉していても変わりません。

一度書面で和解したものを後から覆すことは難しいため注意してください。自己判断で和解したり、過払い金請求の可否を判断したりすることは危険です。一度債務整理をしたあとでも、不安な場合は弁護士に相談することをおすすめします。

 

7.債務整理や過払い金返還請求をするときの流れ

実際に債務整理や過払い金返還請求をする際は、どのように、何をすればよいのでしょうか。準備や必要なことを紹介します。

借入状況を確認する

債務整理や過払い金請求をする場合「いつ」「どこに」借入をしていたのかが明確でなければなりません。複数の金融機関や消費者金融から借り入れていると、自分でも把握しきれていない場合もあるため、まずは借入状況を整理してみましょう。

自宅にある請求書や銀行口座の支払履歴などから調べることもできますが、確実かつ分かりやすいのは、個人信用情報機関に取引履歴の開示請求を行うことです。金融機関や消費者金融はいずれかの個人信用情報機関の会員となっているため、問い合わせることで借入の履歴が分かります。

【個人信用情報機関の一覧】

一般社団法人全国銀行協会(JBA) 本人開示の手続き|全国銀行個人信用情報センター
株式会社シー・アイ・シー(CIC) 情報開示とは|指定信用情報機関のCIC
日本信用情報機構(JICC) 開示を申し込む | 日本信用情報機構(JICC)指定信用情報機関

開示結果を相談時に持参することで、弁護士が借入状況を把握しやすくなるためおすすめです。インターネットで開示報告書をダウンロードすることも可能です。

7-2 弁護士に相談する

債務整理や過払い金請求は、弁護士に依頼することが一般的です。知識の豊富な弁護士に依頼することで成功率を高めることができるため、集めた情報を提示して相談してください。

弁護士の初回相談では、相談者の方の現在の状況と希望(どういった形で解決を望むのか)を聞き取り、考えられる解決策を提案します。このとき、過払い金が発生している可能性があれば、利息を引き直して借金の残額を再計算しますので、過払い金の有無を確認することが可能です。

ライズ綜合法律事務所では、相談者様への聞き取りをしっかりと行い、ご希望を丁寧に伺います。不安に感じていることがあればお気軽にご相談ください。

7-3 弁護士が手続きを進める

弁護士を代理人として選任したあとは、弁護士が主体となって各種手続きを進めます。債権者からの執拗な取り立てを受けている場合なども弁護士が窓口となりますので、代理人選任届け(受任通知)が到着した後は依頼者に請求の連絡は来ません。

依頼者の方には、進行状況の変化に応じて弁護士から連絡がありますが、難解な手続きなどは弁護士が代行します。基本的には、弁護士からの連絡を待ちつつ普段通りの生活を送って問題ありません。

ただし、依頼者の側で状況や希望に変化があった場合は速やかに弁護士に連絡することが大切です。

 

8.債務整理や過払い金請求は個人でも可能だが難しい

「弁護士に依頼するとお金がかかるし、自分で過払い金請求はできないか」と思う方もいるかもしれませんが、結論からいうとこちらはおすすめできません。

弁護士は、あくまで依頼者の代理人として手続きを遂行するため、理論上は自分で行うことも可能です。しかし、債務整理は難解で専門知識が必要なため、一般の方がスムーズに進めるのは難しいためです。仕事や子育てと平行しつつ、調べながら手続きするのは相当にハードルが高いといわざるを得ません。

とくに、任意整理や過払い金返還請求は債権者との交渉が必要となります。弁護士以外の人が交渉しても応じる債権者は少ないでしょう。また、過払い金請求で必要となる利息の引き直しも、知識の無い方がミスなく計算するのは難度が高いです。

かかる時間や手間、確実に手続きができるかを考慮すると、弁護士に依頼した方が総合的なメリットは大きいといえます。費用が不安な場合は、面談の際にその旨も相談してください。

 

9.債務整理や過払い金返還請求をしたいときは弁護士に相談を

債務整理と過払い金返還請求は、利用できる条件や手続きの進め方で異なる点があります。しかし、任意整理の一環で過払い金返還請求をすることもあるなど、全く異なる手続きではありません。

大切なのは、状況を分析したうえでそれぞれの手続きのメリット・デメリットを理解し、最適なものを選ぶことです。自己判断で手続きすると、請求できるはずの過払い金を失う、スムーズに手続きが進まないなどトラブルに見舞われる可能性もあります。弁護士のサポートを受けながら、自分に合った方法を検討しましょう。

ライズ綜合法律事務所は、借金問題にお悩みの方のトラブルを多数解決してきた実績があります。債務整理や過払い金返還請求の専門知識を備えた弁護士が多数在籍しておりますので、相談者様にとって最良の形で借金問題を解決できるようお手伝いいたします。

借金の心配ごとや不安に感じることがあれば、何でもご相談ください。

メールでのお問い合わせはこちらから

 


このページの監修弁護士

弁護士

三上 陽平(弁護士法人ライズ綜合法律事務所)

中央大学法学部、及び東京大学法科大学院卒。
2014年弁護士登録。

都内の法律事務所を経て、2015年にライズ綜合法律事務所へ入所。
多くの民事事件解決実績を持つ。東京弁護士会所属。

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