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立ち退き

2026/03/30

借家権価格の立ち退き料とは?計算方法や補償金はどうなる?

借家権価格の立ち退き料とは?計算方法や補償金はどうなる?

「長年にわたって住んでいる家を半年後に立ち退いてほしい」といわれて、貸主側の提示額が妥当か分からずに戸惑っている方もいるでしょう。住まいは生活の基盤であり、一方的な建物明渡請求に不安を感じるのは当然です。

本記事では、立ち退きに直面した方に向けて借家権価格の考え方や計算方法、正当の事由などを分かりやすく解説します。自身の権利を正確に把握し、納得のいく補償を得られる対等な交渉が可能になるでしょう。

【この記事で分かること】

  • 借主を保護する借家権の仕組みと普通借家契約の権利
  • 立ち退き料の指標となる借家権価格の3つの計算方法
  • 立ち退きの要求が認められる条件と具体例

そもそも借家権とは?

借家権(しゃくやけん・しゃっかけん)は、建物を借りて利用するための権利です。借地借家法に基づき、貸主と借主の間で結ばれる賃貸借契約によって認められます。同法は借主を保護する側面が強く、後述する正当の事由がない限り貸主は契約を一方的に終了させることができません。つまり、借家権はよほどの理由がない限り、契約している建物から追い出されることがない強い権利といえます。

借家権の契約には、大きく分けると普通借家契約と定期借家契約の2種類があり、それぞれ借主に認められる権利や更新の扱いが異なります。なお、借家権は立ち退き料の交渉をする際の一つの材料にはなりますが、土地の借地権のように自由に売買される取引慣行があるものではないため、必ずしも金額換算されるわけではありません。

普通借家契約

普通借家契約は、借主が希望すれば原則として契約の更新が認められる、一般的な契約形態です。期間は原則1年以上で定められ、1年未満とする場合は期間の定めのない契約と見なされます。実態として採用されることが多いのは2年契約です。借主からであれば、契約更新のタイミングで解約できます。中途解約も可能ですが、別途特約を定めた場合は違約金の支払いが必要なこともあります。

一方、貸主から更新を拒絶する場合には、期間満了の1年前から6カ月前までの通知に加え、客観的に納得感のある正当の事由を提示しなくてはなりません。例えば、築60年が経過した物件の借主に対し、貸主が老朽化による建て替えを理由に立ち退きを求める場合も、この普通借家契約であれば即座に応じる必要はありません。正当の事由が認められない限りは、借主はそのまま現在の住まいに住み続ける権利が保障されており、明け渡しを求めるには立ち退き料の支払いなどによる合意が必要とされます。

※参考:e-Gov 法令検索.「借地借家法」第二十九条.

https://laws.e-gov.go.jp/law/403AC0000000090#Mp-Ch_3-Se_1-At_29 ,(参照2026-02-24).

定期借家契約

定期借家契約は更新がなく、期間が満了したら終了する契約形態です。貸主・借主の双方が合意すれば1年未満の契約も可能です。定期借家契約では、期間満了により借家権がなくなり、建物を明け渡す必要があります。

ただし、双方が合意した場合、再度契約を結ぶことは可能です。自分が結んでいる契約がどちらかは、契約書のタイトルや更新がない旨の書面説明があるかで確認できます。

定期借家契約は、貸主が将来的に取り壊す予定がある物件を期間限定で貸し出す場合などに利用されます。この契約形態ではあらかじめ期間が決まっているため、期間満了に伴う明け渡しであれば、立ち退き料を請求することはできません

※参考:e-Gov 法令検索.「借地借家法」,”第三十八条”.

https://laws.e-gov.go.jp/law/403AC0000000090#Mp-Ch_3-Se_3-At_38 ,(参照2026-02-24).

借家権価格とは?

借家権価格とは、借主が建物を借りて使い続ける権利を、財産的な価値として金額に換算したものです。貸主から立ち退きを求められた際、借主はこの権利を放棄することになります。

借家権価格には法律上の明確な計算式の規定はありません。実務上は不動産鑑定評価の基準や過去の裁判例を参考に算出され、交渉の目安として扱われます。

立ち退き料との違い

立ち退き料は、貸主の都合で借主に退去を求める際に支払うお金の総称です。借家権価格はこの立ち退き料を算出するための一つの指標という位置付けです。

なお、実際の立ち退き料の算出には、借家権価格だけではなく、引っ越し費用の実費や移転先を契約する際の初期費用、さらには事業主であれば休業補償なども考慮されます。

補償金との違い

補償金とは、他者の行為によって生じた損害や損失を埋め合わせるために支払われるお金全般を指す言葉です。つまり、借家権価格や立ち退き料よりも広義の言葉といえます。細かなニュアンスの違いでいうと、立ち退き料が主に貸主・借主間の民間のやり取りで使われるのに対し、補償金という言葉は公共事業による立ち退き(収用)などの公的な場面においてもよく用いられます。

いずれにせよ、借主が立ち退きによって被る不利益を金銭で解決するという本質的な意味に変わりはありません。

借家権価格の計算方法

借家権価格の算出には「割合法」「差額賃料法」「控除法」の3つの考え方があります。これらは、不動産鑑定士が価格を算出する際にも使用される専門的な手法です。それぞれの計算式と特徴について解説します。

割合法

割合法は、建物全体の価値のうち、借主が持っている権利(借家権)が何割に相当するかを算出する方法です。土地と建物の時価に対し、一定の割合を掛けて求めます。相続税の評価などでも用いられる比較的シンプルで客観的な計算手法といえます。割合法の計算式の一例は以下の通りです。

借家権価格 = (土地価格 × 借地権割合 × 借家権割合) + (建物価格 × 借家権割合)

ここで使われる借家権割合は、税務上の評価で全国一律30%を使用します。一方で、借地権割合は地域ごとに30%から90%の間で設定されており、商業地や駅前などの利便性の高い場所では高く設定されています。

例えば、土地が5,000万円、建物が1,000万円、借地権割合60%の地域であれば「(5,000万 × 0.6 × 0.3) + (1,000万 × 0.3) = 1,200万円」と計算されます。

※参考:国税庁.「財産評価基準書 路線価図・評価倍率表」

https://www.rosenka.nta.go.jp/index.htm ,(参照2026-02-24).

差額賃料法(賃料差額還元法)

差額賃料法(賃料差額還元法)は、借主が現在支払っている賃料と、その地域における一般的な賃料相場との差額に基づく計算方法です。借主が移転を余儀なくされるため、その賃料差額による損失分を補償するという考え方に基づいています。差額賃料法の計算式の一例は以下の通りです。

(一般的な賃料相場 - 実際の賃料) × 補償期間

賃料差額を補償する期間は取り決めによるが、2年が一般的です。

控除法

控除法は、貸主側の視点から建物が空室の状態(自用)と借主が住んでいる状態(貸家)の評価額の差を借家権の価値とする方法です。控除法の計算式の一例は以下の通りです。

貸主が自ら使用している場合の不動産価格 - 借主がいる状態での不動産価格

一般的に、他人に貸している状態の建物(貸家建付地)は、貸主が自由に取り壊したり売却したりできないという法的制約があるため、市場価値は下がります。この価値の目減り分が借主が持っている借家権であると定義する考え方です。例えば、更地や空室であれば5,000万円で取引される物件が借主の居住によって4,000万円でしか売却できない場合、その差額の1,000万円が借家権価格の目安となります。

ただし、この方法は不動産の時価評価が難しく、一定の計算式を当てはめれば答えが出るわけではありません。実務では不動産鑑定士による専門的な評価が必要になるケースが多く、貸主が建物を売却して現金化したい事情がある場合などに参考にされる手法です。

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借主に立ち退きを要求するために必要な正当の事由とは?

借地借家法では、貸主が普通借家契約の更新拒絶や解約申し入れを行う場合は、正当の事由が必須であると規定しています。正当の事由の有無は、以下の観点から総合的に判断されます。

  • 貸主と借主が建物の使用を必要とする事情
  • 賃貸借契約の経緯
  • 建物の利用状況
  • 建物の現状(老朽化など)
  • 財産上の給付(立ち退き料)

これらを総合的に考慮し、貸主側の必要性が借主の居住権を上回る場合に、正当の事由が認められます。

※参考:e-Gov 法令検索.「借地借家法」第二十八条.

https://laws.e-gov.go.jp/law/403AC0000000090#Mp-Ch_3-Se_1-At_28 ,(参照2026-02-24).

貸主と借主が建物の使用を必要とする事情

貸主と借主のどちらがその建物をより切実に必要としているかという観点です。例えば、貸主が経済的に困窮しており、その物件を売却して借金を返済しなければ生活が破綻する、または貸主自身が住居を失いその建物に住むしかないといった差し迫った事情があれば、貸主側に必要性があると見なされることがあります。

対して、借主側が長年居住しておりすでに生活基盤が固まっている、あるいは高齢化や病気で移転が著しく困難であるといった事情がある場合、借主の必要性が尊重されやすいです。

また貸主の目的が単なる収益向上や再開発などの投資的なものである場合は、借主の生活を守る必要性が優先される傾向にあります。

賃貸借契約の経緯

これまでの契約期間中にどのような関係性が築かれてきたのかも評価の対象です。例えば、借主が数十年にわたり賃料を一度も滞納せず、物件を大切に使ってきた実績があれば、借主の権利を保護する方向に働きます。

一方、借主が度々家賃を滞納したり、貸主からの連絡を無視し続けたりするといった、信頼関係を著しく損なうような経緯がある場合、貸主側の正当の事由が認められやすくなります。また貸主が善意で相場より極端に安い家賃で貸し続けてきた経緯なども貸主側の負担を考慮する要素です。過去のトラブルの有無や契約時の約束事が立ち退きの正当性を左右します。

建物の利用状況

借主が建物をルール通りに利用しているのかどうかも厳しく確認されます。居住用契約にもかかわらず無断で店舗や事務所として使っている、禁止されている大型犬を飼育している、貸主に無断で第三者に転貸しているといった状況は、場合は、借主に不利に働き、貸主の主張が認められやすくなります。

また借主がすでに別の場所に住んでおり、その物件が空き家や物置のように使われている場合も、利用の必要性が低いと判断されます。こうした不適切な使用や管理の状況は、貸主の解約申し入れが認められやすくなる要因となります。

建物の現状

建物の老朽化も立ち退き交渉における重要な論点です。建物の老朽化が激しく、耐震診断で倒壊の危険性ありと判定されている場合は、借主や周辺住人の安全を考慮し、建て替えの必要性が優先されることがあります。

ただし、単に「古いから建て替えたい」という主観的な理由だけでは不十分です。建て替えや虜割りが妥当であると判断できる客観的なデータや専門家による診断結果が求められます。

借地借家法第28条における正当の事由とは?分かりやすく事例とともに解説

財産上の給付

財産上の給付とは、いわゆる立ち退き料のことです。前述した使用の必要性や老朽化などの要素だけでは正当の事由として十分とはいえない場合に、その不足分をお金で補うという考え方です。

実務上、貸主側の事情だけで立ち退きが完全に認められるケースは稀であり、多くはこの立ち退き料を上乗せすることで合意に至ることが多いです。金額に一律の決まりはありませんが、引っ越し費用やや新居の契約費用などを考慮して判断されます。ただし、立ち退き料を支払えば必ず退去させられるわけではなく、あくまで補助的な要素に過ぎません。

借家権を巡る立ち退きトラブルに関する判例・事例

立ち退き料の算定において、借家権価格が考慮された代表的な例として、東京地裁平成28年3月8日判決があります。これは、築50年以上が経過し、耐震調査で倒壊の危険性が高いと判定された木造家屋の明け渡しが争われたものです。貸主は成年後見人が付くほど高齢かつ経済的に困窮しており、1,000万円超の耐震改修費用を捻出できない状況でした。一方で、借主は月額4万5,000円という安価な賃料で長年居住しており、双方の建物を必要とする事情が激しく対立しました。

裁判所は、建物の深刻な老朽化と貸主の資力状況を鑑み、解約申し入れには正当な必要性があると判断。その上で立ち退き料については、引っ越し実費や移転後の賃料差額だけでなく、路線価などから試算された借家権価格の約4割を考慮した貸主提示の100万円を妥当と認め、支払いと引き換えの明け渡しを命じました。老朽化による正当の事由がある場合でも、借主が長年保持した権利(借家権)の価値を財産的に評価し、補完すべきとした判例です。

賃貸物件からの立ち退きを求められた際の相談先

貸主に立ち退きを求められた際、一人で貸主側と交渉するのは精神的・時間的に大きな負担となります。特に、法律的な知識がないまま対応してしまうと、本来受け取れるはずの補償を十分に得られなかったり、不利な条件で合意してしまったりするリスクもあります。状況に応じて、以下の適切な窓口を選びましょう。

まずは専門家に相談し、現状を整理するとともに、自分に立ち退きの義務があるのか、どの程度の補償を求められるのかといった基本的なポイントを把握することが重要です。早い段階で相談することで、今後の交渉を有利に進めやすくなります。

自治体の法律相談窓口

多くの自治体では、市民向けに弁護士による無料の法律相談窓口を設けています。1回30分程度と時間は限られていますが、立ち退きの要求が法的に妥当なものなのか、契約内容や状況に照らして問題がないかを確認するには十分有効です。初めてこうした問題に直面した方にとっては、気軽に専門家の意見を聞ける貴重な機会といえるでしょう。

また、事前に相談内容を整理しておくことで、限られた時間でも的確なアドバイスを受けやすくなります。例えば、賃貸借契約書や貸主からの通知書などを持参すると、より具体的な判断を得られる可能性が高まります。

ただし、あくまでもアドバイスが中心となり、その場で特定の弁護士に継続的な対応や具体的な交渉、書類作成の実務を直接依頼することはできないケースがほとんどです。まずは、今の状況で立ち退く義務があるのかという基本的な判断を聞きに行く場として活用するのがよいでしょう。

法テラス

法テラス(日本司法支援センター)は、経済的な余裕がない方でも法的支援を受けられる公的機関です。収入や資産が一定基準以下であるなどの条件を満たせば、無料で法律相談を受けられるほか、弁護士費用を一時的に立て替えてもらえる「民事法律扶助」などの制度を利用できます。

立ち退き問題では、引っ越し費用や新居の初期費用など、まとまった出費が発生することが多く、経済的な負担が大きくなりがちです。そのような状況でも、費用面の不安を軽減しながら専門家に相談できる点は大きなメリットといえます。

長年住み慣れた家を突然追われ、今後の引っ越し費用や生活費に不安を抱えている方にとって、法テラスは非常に心強い存在です。まずは電話や窓口で、自分の経済状況が支援の対象になるかどうかを確認し、必要に応じて適切な法的アドバイスを受けることから始めましょう。

弁護士事務所

立ち退き問題の解決実績が豊富な弁護士事務所に直接相談するのも有効な選択肢です。自治体の窓口や法テラスと異なり、自分の状況や希望に合った専門家を選んで依頼できるため、より踏み込んだ対応を期待できます。

弁護士に依頼すれば、借家権の評価や立ち退き料の相場の算定、貸主との交渉、内容証明の作成など、専門的な手続きを一括して任せることが可能です。交渉を代理してもらうことで、精神的な負担を軽減できるだけでなく、法的根拠に基づいた適切な条件での合意を目指しやすくなります。

また初回無料相談を実施している事務所も多く、費用面の不安を抑えながら相談できる点も魅力です。交渉が長期化しそうな場合や、貸主との関係が悪化している場合には、早い段階で弁護士に依頼することで、トラブルの深刻化を防ぐことにもつながります。

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まとめ

借家権は、借主が現在の住まいに住み続けるための強い権利です。貸主から建て替えなどを理由に退去を求められても、すぐに応じる必要はありません。普通借家契約の場合、正当な理由がなければ貸主から一方的に契約を終了することはできず、立ち退きの際には借家権の価値に応じた適切な補償を求めることが認められています。

立ち退き交渉で不利にならないためには、まず自分の借家権にどれだけの価値があるのかを把握することが重要です。弁護士法人ライズ綜合法律事務所では、不動産鑑定士と連携し、独自のシミュレーションをもとに立ち退き料の目安を算出します。これまで15,000件以上の相談実績をもとに、突然の立ち退き通告に悩む方に寄り添い、状況に応じた解決策をご提案します。提示された条件に不安がある場合は、まずは無料相談をご利用ください。

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このページの監修弁護士

弁護士

三上 陽平(弁護士法人ライズ綜合法律事務所)

中央大学法学部、及び東京大学法科大学院卒。
2014年弁護士登録。

都内の法律事務所を経て、2015年にライズ綜合法律事務所へ入所。
多くの民事事件解決実績を持つ。第一東京弁護士会所属。