2026/03/30
立ち退き料を請求する文書の文例は?書き方や申請の流れは?

貸主から突然退去を通知され、かつ「立ち退き料を出さない」といわれてしまった場合、貸主都合であれば、基本的に立ち退き料を請求することができます。とはいえ、立ち退き料の金額や請求書の体裁、やり取りの流れが分からないままでは、貸主との交渉に進むことができません。
本記事では退去を要請された借主に向けて、立ち退き料請求の書き方や文例、交渉の流れを解説します。貸主へ送るべき文書の内容が明確になれば、自信を持って立ち退き交渉の第一歩を踏み出せるようになります。貸主の正当な権利を守り、納得して次の生活へ進むための手引きとしてご活用ください。
【この記事で分かること】
- 立ち退き料を請求できるケース、正当の事由別の過去判例
- 立ち退き料の請求書に必要な項目と作成時のポイント
- 請求の流れと注意点
貸主都合の退去の場合、原則立ち退き料を請求できる
「貸主が自分で住むことになった」「入居者が集まらないので立て直したい」など、貸主側の都合で退去を求められた場合、借主は原則として立ち退き料を請求できます。そのため突然の通知に慌てて、退去の準備をする必要はありません。まずは借主が持つ権利を知り、冷静に対処することが重要です。
借主が持つ権利とは借家権(土地の場合は借地権)のことで、借地借家法という法律により強く保護されています。同法では、貸主が一方的に賃貸借契約を解除したり更新を拒絶したりするには、法律上の正当の事由が必要であると定めています(借地借家法第28条)。
正当の事由とは退去の妥当性を判断する要素のことで、貸主が建物を必要とする事情だけではなく、借主の事情や必要性、契約状況、物件の状態などを総合的に考慮して判断されます。もし貸主側の理由だけで正当の事由が不十分な場合、借主に対して財産上の給付、つまり立ち退き料を支払うことで、正当の事由が補完されるという考え方が一般的です。そのため貸主都合の退去要請であれば、原則立ち退きを受け取ることができ、その金額は交渉によって決まります。
ではなぜ貸主の中には「立ち退き料を払わない」という人がいるのでしょうか。よくある2つのケースを次章でご紹介します。
※参考:e-Gov 法令検索.「借地借家法」第二十八条.
https://laws.e-gov.go.jp/law/403AC0000000090#Mp-Ch_3-Se_1-At_28 ,(参照2025-12-01).
正当の事由が強いと立ち退き料の支払いが不要と考えている貸主がいる
貸主の中には「建物が古いから仕方がない」「住む場所がない」などの事情があれば、立ち退き料を払わずに退去してもらうことができると考えている人がいます。先述の通り、正当の事由は貸主の事情も考慮されるため、場合によっては正当の事由が強い(立ち退き自体は仕方がない)と判断されるケースもあるでしょう。しかし貸主の主張だけで正当の事由があると見なされるケースよりも、立ち退き料の補完をもって退去が認められるケースの方が多いため、交渉の場で指摘する必要があります。
ちなみに正当の事由には強弱があり、一般的に以下のような関係性にあります。
- 正当の事由が弱い = 貸主の主張の妥当性があまりない = 立ち退き料によって補完される余地があり、高額化しやすい
- 正当の事由が強い = 貸主の主張の妥当性がある程度認められる = 立ち退き料によって補完される余地があまりなく、少額化しやすい
つまり、貸主が正当な理由があるから一銭も払わないと主張しても、法的には立ち退き料によって正当の事由を補う必要があり、立ち退き料を支払ってもらえるケースが多い、ということです。
賃貸借契約に立ち退き料の請求禁止特約がある場合は無効となる
賃貸借契約書に「立ち退きの際、借主は立ち退き料を請求しない」といった旨の特約が記載されている場合があります。これを見て、契約時にサインしてしまったから請求できないと諦めてしまう方がいますが、その必要はありません。
借地借家法第30条では、建物の賃借人に不利な特約は無効であると定めています。立ち退き料の請求をあらかじめ放棄させるような特約は、借主にとって著しく不利であるため、法的な効力が認められない可能性が高いのです。特約の存在を理由に諦めるのではなく、立ち退き案件に強い法律事務所へ相談し、法的なアドバイスをもらった上で、適切な権利を主張することをおすすめします。
賃貸借契約書に借主不利な特約の記載があり、どうしたらよいか分からないときは、ライズ綜合法律事務所へご連絡ください。ご相談は何度でも無料です。
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実際に立ち退き料を請求できるケース
ここからは、貸主側が正当の事由として主張することが多い3つのケースについてご紹介します。正当の事由をどう捉えるのか、過去の裁判例とともにご紹介するので、ご自身のケースに当てはめながらご覧ください。
建物が老朽化したため建て替えを行うケース
築年数が古いアパートや雑居ビルなどで、老朽化による建て替えを理由に立ち退きを求められることはよくあります。この場合、建物の老朽化の程度や具体的な建て替え計画の有無などが、正当の事由の判断材料となります。例えば、単に古いというだけではなく震災で倒壊する危険性が極めて高い場合などは、正当の事由が強いと判断されやすいです。
しかし補修すれば住み続けられる程度であったり、建て替えの必要性が緊急でなかったりする場合は、正当の事由は弱いと見なされます。
建物の老朽化が正当の事由として認められなかった判例(東京地判平21・12・16)
築47年が経過した建物について、貸主が老朽化を理由に更新拒絶と明け渡しを求めた事例です。裁判所は、建物が相当に老朽化していることは認めつつも、貸主が適切な修繕を怠ってきた結果であると指摘。さらに、修繕にかかる費用と建て替え費用を比較しても、修繕して使い続けることが経済的に不合理とまではいえないと判断しました。
結果として、貸主側の事情(老朽化)だけでは正当の事由として認められず、立ち退き料の支払いを検討する以前に、明け渡し請求自体が認められませんでした。
建物の老朽化が正当の事由として認められたものの立ち退き料が支払われた判例(東京地判平19・3・28)
築29年(昭和51年建築)の住居で、貸主が建て替えを理由に立ち退きを求めたケースです。裁判所は建物が耐震基準を満たしておらず、基礎や外壁に損傷があることから、建て替えの必要性を認めました。
借主には近くの病院へ通院している事情がありましたが、頻度などを考慮すると他へ転居することも可能と判断。最終的に転居に伴う経済的負担への配慮として、貸主から借主に対して立ち退き料100万円を支払うことと引き換えに、明け渡しを認める判決を下しました。
貸主が物件を利用するケース
「貸主が高齢で介護が必要になった」「海外から帰国して住む家がない」など、貸主自身がその物件を使用する必要が生じた場合です。
貸主の必要性が切実であるほど正当の事由は強くなりますが、同時にその物件(借主が住んでいる部屋)でなければならない理由も問われます。他に空き部屋がある、代替物件で済む場合は正当の事由が弱くなりやすいです。例えば以下のようなケースを理由に、退去を求めるケースが多いです。
- 近くに通院している病院がある
- 親族の介護のために同居または近居が必要
- 経済的に困窮しており、自分が貸している物件に戻らざるを得ない
先述した通り、正当の事由はさまざまな要素を考慮した上で決定されるため、立ち退き料による調整が行われる可能性が高いでしょう。
貸主の自己使用が正当の事由として認められなかった判例(福岡地判平元・6・7)
貸主が自分自身の住居として使用したいという理由で、借主に明け渡しを求めた事例です。裁判所は、貸主は他にも土地を所有しており、必ずしもその物件でなくても広い自宅を確保できると判断。
一方、借主にとっては長年住み続けた愛着のある実家であり、他へ転居する経済的余裕もありませんでした。裁判所は立ち退き料として700万円が支払われるなら明け渡しを認めるという判断をしましたが、貸主側が500万円を上回る立ち退き料を支払う意思がないため請求自体を棄却(立ち退きなし)しました。金額の条件が合わなければ、立ち退き自体が認められないこともあるという事例です。
貸主の自己使用が正当の事由として認められたものの立ち退き料が支払われた判例(東京地判昭56・1・30)
地方転勤から戻った貸主が敷地上に家族で住む家を建てるために、借主へ明け渡しを求めたケースです。この事例では、契約当初から貸主が将来東京に戻ってきたら返してもらうと伝えていた事情があり、貸主がその家を使用する必要性が一定程度認められました。
しかし、借主も10年以上その家で生活していることから、無条件での退去は認められませんでした。最終的に、借主が近隣で別の家を探して引っ越すための費用や損害を補うものとして、貸主が提示した200万円の立ち退き料を支払うことと引き換えに、明け渡しが認められています。
公共事業により土地が収用されるケース
道路の拡張工事、土地区画整理事業、駅前の再開発など、行政主導の公共事業のために立ち退きを求められることがあります。この場合、土地収用法などの法律により、行政は土地の権利を取得(収用)することが可能です。そのため個人的な貸し借りの話とは異なり、最終的には立ち退きを拒否し続けることはできません。
ただし公共事業による立ち退きでは、法律に基づいて補償の内容が細かく定められています。国土交通省の公共用地の取得に伴う損失補償基準要綱などに基づき、借主に対しても以下のような費用が補償されます。
- 動産移転料:家財道具の運搬費、新居の礼金や仲介手数料など
- 借家人補償:現在の家賃と転居先の家賃に差額が生じる場合、その差額の一部など
この場合、交渉相手は貸主ではなく、主に国や自治体となります。
補償についての合意がされない場合は収用委員会へ申し立てを行う
公共事業に伴う補償金の額に納得できない場合、都道府県の収用委員会に対して裁決の申し立てを行うことができます。収用委員会は、中立的な立場で調査・審理を行い、適正な補償額や明け渡しの時期を決定します。
ただし、提示された補償額の増額を求めたい場合は、その根拠となる客観的な資料が必要です。近隣の家賃相場のデータや、営業補償に関する帳簿などが当てはまります。このような専門的な資料作成や適正額の算出を行うなら、弁護士や不動産鑑定士といった専門家のサポートが欠かせません。
ライズ綜合法律事務所では、不動産鑑定士と連携して正確な立ち退き料(補償額)の試算を行うため、弁護士と鑑定士を別々に依頼する手間を省き、スムーズに申し立ての準備を進めることが可能です。お気軽にご相談ください。
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【ライズ綜合法律事務所監修】立ち退き料の請求書のポイントと文例
借主から貸主へ立ち退き料を請求する際、口頭ではなく書面で行うのが確実です。一般的には内容証明郵便を使って請求書を送付します。
ここでは、請求書を作成する際に役立つ項目の説明と、弁護士監修の重要ポイントを解説します。
請求書の項目
請求書に決まった法的フォーマットはありません。しかし交渉の土台となる重要書類のため、借主の意思と請求の根拠を正確に伝えるために、以下の項目は漏らさず記載しましょう。
|
項目 |
記載内容・ポイント |
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表題・日付 |
「立ち退き料 請求通知書」などとし、書面の作成年月日を明記します |
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経緯と根拠 |
請求に至った理由を記します(詳しくは後述) |
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当事者・物件情報 |
貸主と借主の住所・氏名を記載します。対象物件は、建物名や部屋番号まで細かく書いてください |
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請求金額と内訳 |
単に総額を書くのではなく、内訳を具体的に示して説得力を高めます 例:「引っ越し費用:〇円」「家賃差額(2年分):〇円」「新居確保費用(礼金・仲介手数料・鍵交換):〇円」など |
|
回答期限 |
期限を切って回答を求めます 例:「本書面到達後、2週間以内に書面でご回答ください」 |
具体的な振込口座や支払期日は、最終的に合意した段階で決めればよいため、この時点では記載しなくても構いません。
請求書の支払いが必要な理由を最初に明記する
単にお金をくださいと書くだけでは、相手の納得を得られません。冒頭で「今回の要請には法的な正当の事由に達していないため、それを補完する対価として立ち退き料が必要である」という内容を明記することがポイントです。「正当の事由に達していない」ということを伝えるための文例は以下の通りです。あくまでも一例のため、請求書作成時の参考にしてください。
【文例:請求の根拠】
貴殿の明渡し要請は、老朽化の程度・代替措置・当方の生活上の支障等を踏まえた総合考慮において、正当の事由が不十分と解されます。したがって、補完要素としての立ち退き料の支払を前提に協議すべきため、下記のとおり請求いたします。
「提示された内容はイーブンではない」ということが、貸主にきちんと伝わる内容を意識して作成しましょう。
請求書作成時の注意点
請求書を作成する際は、不用意なミスで不利にならないよう、以下の点に注意が必要です。
まず、立ち退き料に消費税は含めないようにしましょう。立ち退き料は資産の譲渡やサービスの対価に当たらないため、原則不課税取引となります。例えば「100万円 + 税」とは書かず「100万円」と記載します。
次に、交渉の余地を残す表現にすることも重要です。この金額でなければ絶対に応じないと断定しすぎると、協議が決裂する恐れがあります。本請求は交渉の出発点であるため「双方が納得できる内容を交渉で決めたい」といった柔軟な姿勢を示すことが賢明です。
最後に、送付前に必ず弁護士のチェックを受けましょう。一度送った書面は証拠として残るため、不利な事実や相場を逸脱した金額を書いてしまうと取り返しがつきません。専門家に確認することが、身を守ることにつながります。
内容証明の送り方
立ち退き料の請求書は、必ず内容証明郵便を利用して送りましょう。これは 「いつ・誰が・誰に・どのような内容」を送ったのかを、郵便局が公的に証明してくれるサービスです。「届いていない」「そんな内容は見ていない」といったトラブルが発生しても、有力な証拠となります。
注意点として、内容証明郵便では送付内容の証明対象が限定されるため、請求書以外の資料を送りたい際は、簡易書留などで送る必要があります。また、誤字の訂正ルールが厳格で、一度出すと取り消しや修正がきかない点もリスクです。郵便局に行かずともe内容証明を使えばWebで24時間発送可能ですが、形式不備が不安な場合、弁護士に作成から発送まで依頼するのが望ましいでしょう。
立ち退き料を請求する流れ
貸主から「立ち退き料は払わない」と通知を受けたら、すぐに弁護士へ相談しましょう。合意を迫られるかもしれませんが「家族と相談します」「通知の内容を確認してから返事をします」などと答えて、すぐに承諾しないよう注意してください。
弁護士に相談したら、まずは立ち退き料の適正額を試算してもらいます。請求書に記載する金額と内訳が決まったら、書類を作成してもらい、貸主へ内容証明郵便で送付します。その後、金額や退去時期について交渉を行い、双方が納得したら合意書を締結します。合意内容に基づき立ち退きを済ませた後、立ち退き料を受け取るのが一般的な流れです。
まとめ
貸主の都合による立ち退き要請の場合、基本的に借主は立ち退き料を受け取れる可能性が高いです。借地借家法によって借主の権利は強く保護されており、正当の事由を立ち退き料の支払いによって補完しないと、そもそも立ち退き要請自体が認められないからです。
そのため「貸主からそういわれたから」「特約に書かれているから」といった理由で立ち退き料をあきらめるのではなく、請求書を作成しご自身の主張を貸主へ伝えましょう。請求書には、希望する立ち退き料や内訳などを細かく分かりやすく明記する必要があります。そのため、ご自身だけで請求書を作成することに不安がある、適切な立ち退き料が分からないといった方は、弁護士に相談するのがおすすめです。
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このページの監修弁護士
弁護士
三上 陽平(弁護士法人ライズ綜合法律事務所)
中央大学法学部、及び東京大学法科大学院卒。
2014年弁護士登録。
都内の法律事務所を経て、2015年にライズ綜合法律事務所へ入所。
多くの民事事件解決実績を持つ。第一東京弁護士会所属。