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立ち退き

2026/01/23

都市計画道路工事での立ち退き料の相場は?補償金や住宅ローンはどうなる?

都市計画道路による立ち退きの場合、損失への補償金が支払われるのが一般的です。補償金の内訳や金額は、国の公共用地の取得に伴う損失補償基準要綱に基づき、各自治体が詳細な基準を定めています。本記事では、都市計画道路工事での立ち退き料の相場や補償金の範囲、住宅ローンが残っている場合の対応など、住民側が知っておくべき情報を網羅的に解説します。
都市計画道路工事での立ち退き料の相場は?補償金や住宅ローンはどうなる?

国や自治体などから都市計画道路の実施と立ち退きの通知が届くと、突然のことで戸惑う方も少なくありません。「提示された補償金は妥当なのか」「残っている住宅ローンはどうしたらよいのか」といった疑問が生じたままでは、次の行動を取りにくい状況が続いてしまいます。

本記事では都市計画道路工事での立ち退きについて、立ち退き料の算定方法・内訳・住宅ローン対策など、住民が知っておくべき情報を解説します。立ち退きの流れについてもご紹介するので、今後の生活を再建する道筋立てに役立つでしょう。

※本記事の内容は2025年11月時点の情報です

【この記事で分かること】

  • 都市計画道路の立ち退き料(補償金)の内訳と相場の考え方
  • 住宅ローンが残っている場合の注意点と対応策
  • 道路拡張の立ち退きは拒否できるか、立ち退き要請から移転までの流れ

都市計画道路とは?道路拡張との関係

都市計画道路とは、都道府県や市町村が都市計画法に基づき「将来こういう道路を作ります・広げます」とあらかじめ計画する道路のことです。多くの場合、交通インフラを担う幹線道路が対象となります。

重要なのは、都市計画には二つの段階がある点です。一つ目は計画決定段階(都市計画道路予定地)です。これは地図上で「この範囲に道路を作る予定です」などと計画がされている段階を意味します。この時点では、すぐに工事が始まるわけではありません。

二つ目が事業決定段階(事業認可/道路拡幅)です。この段階になると、計画が具体的に動き出し、予算の決定や調査・測量、住民への説明会などが実際に行われます。私たちが道路拡張と呼ぶのは、主にこの段階を指します。

つまり都市計画道路という大きな枠組みの中で、具体的な工事が道路拡張として実行されるイメージです。もしご自宅や店舗が事業決定段階に入り、立ち退きの対象となった場合、自治体から立ち退き(土地の収用)が要請されることになります。

都市計画道路の予定地でも新築物件を建てることは可能

計画決定段階の土地、つまり都市計画道路予定地に指定されているだけでは、すぐに立ち退きを求められるわけではありません。一定の条件を満たせば、新築物件を建てることも可能です。これは都市計画法第53条で定められた「事業が決定していない土地の利用を過度に制限しないための措置」を適用しているからです。

ただし建物を建てるには知事や市町村長の許可が必要で、建物の構造や規模に制限が設けられます。一般的には階数が3階建て以下(地下室不可)であること、そして主要構造部が木造、鉄骨造、コンクリートブロック造など、比較的移転や解体が容易な構造であることが求められます。

都市計画道路予定地であることを知っていたとしても、都市計画法に基づく損失補償は「現に存在する建物・財産」に対して行われるため、原則として補償金を受け取ることは可能です。このため、予定地であることを把握した上で物件を購入する方も少なくありません。もっとも事業が本格的に決定し道路拡張工事が始まれば、購入したばかりでも立ち退きの対象となる可能性があります。

都市計画に基づく道路拡張による立ち退き料はどのように決まる?

都市計画道路の場合、民間の再開発や土地区画整理事業とは異なり、土地の権利を再度割り当てる方式ではなく、原則として事業者が任意買収・収用します。この対価として支払われるのが補償金で、これが実質的な立ち退き料となります。

補償金の計算方法は、行政が自由に決めているわけではありません。国の公共用地の取得に伴う損失補償基準要綱に基づき、各自治体が詳細な基準を定めています。つまり立ち退き料(補償金)は交渉で大きく増額させるというよりも、法律と基準に基づいて失われる財産や権利を正確に算定し、漏れなく反映させる性質が強いです。

提示された補償額が複雑な基準に照らして適正なのかを判断するには、土地の形状・立地をはじめ、建物の経年劣化やリフォーム、庭木や門などを金額換算する必要があります。個人で全てを正確に算出するのは非常に難しく、専門家の知識や技術が不可欠です。

弁護士法人ライズ綜合法律事務所では、土地・建物の経済価値を評価する不動産鑑定士と連携し、法令や補償基準に基づいた適正額の試算を行っています。提示額についてのご相談は何度でも無料で承っておりますので、立ち退きを要請されて不安を感じている方は、お気軽にお問い合わせください。

道路拡張による立ち退き料の相場はある?

都市計画道路による立ち退きの場合、家賃の〇カ月分といった画一的な計算ではないため、残念ながら決まった相場はありません。つまり、内訳の洗い出しが重要です。

立ち退き料は国や自治体が定める損失補償基準に基づき、立ち退きで被る損失を個別に積み上げて算定されます。通常、行政から基準に基づいた補償額が提示されますが、あくまで行政側の算定です。例えば同じ面積の土地でも、角地か住宅地か、また一軒家でもその構造や利用状況によって算定額は全く異なります。

重要なのは相場を気にするよりも、ご自身のケースで補償されるべき項目が漏れなく算定されているかを確認することです。個人ではこの提示額を増額する交渉はなかなか難しく、特に店舗など(営業補償)の場合は算出そのものが難しいため、弁護士など専門家のサポートを受けるのがおすすめです。

都市計画道路の立ち退き料(補償金)の内訳

先述の通り、立ち退き料(補償金)は複数の補償項目を積み上げて計算されます。ここでは、東京都が定める東京都の事業の施行に伴う損失補償基準を例に、主な内訳をご紹介します。

※参考:東京都.「東京都の事業の施行に伴う損失補償基準」,(参照2025-11-18).

土地の取得に係る補償

土地の取得に係る補償とは、立ち退きにより任意買収・収用される土地そのものに対する補償です。基準では正常な取引価格(時価)をもって補償すると定められています。

この時価は、近隣の類似した土地の取引事例や、国・都道府県が公表する公示価格や基準地標準価格などを基に算定されます。例えば、公示価格が1㎡当たり約58万円の地域で60㎡の土地を明け渡すなら、単純計算で約3,480万円(578,000円 × 60㎡)が土地補償額の目安です。

ただし、実際には土地の形状や接道状況、交通の便など、さまざまな要素で適正な補正が加えられ、最終的な補償額が決定します。

行政の提示額がこの補正を正しく反映しているかを確認するのは難しいため、必要に応じて不動産鑑定士などの専門家に査定を依頼しましょう。

※参考:不動産情報ライブラリ.「不動産価格(取引価格・成約価格)情報の検索・ダウンロード」,(参照2025-11-18).

建物などの損失の補償

土地の上にある、建物や工作物を移転するためにかかる費用の補償です。曳家(ひきや)方式など、現存する建物をそのまま運ぶ方法が取れない場合は、建物の再建費用を補償金として受け取ることができる場合があります。

ただし補償の対象となるのは、現在の持ち家・店舗と同等の建物を再築するのに必要な分であり、これを上回る仕様や設備については補償されません。また建物の現在の価値を算出する際は、経年劣化も加味される点に注意が必要です。

この補償には建物の価値以外にも、以下のような幅広い費用が含まれます。

補償の分類 具体的な補償内容(例)
移転費用 ・引っ越し代(運送費、梱包費、移転通知費など)
・建物、機械、設備の解体・運搬・再設置費用
・門、フェンス、塀、カーポート、物置などの工作物の移設・再築費用
新生活の準備 ・仮住まいにかかる費用(家賃、礼金、仲介手数料など)
・家賃差額補償(賃貸住宅や店舗を借りている人向け)
大家向け ・家賃減収補償(立ち退きにより賃料収入が途絶える期間の補償)

立木などの補償

見落としがちですが、庭に植えている立木(用材林、山林、薪炭林、竹林、果樹木、庭木、生垣、雑木など)も補償の対象です。

庭木、生垣、装飾目的の木は、原則移植にかかる費用(掘り起こし、運搬、植え付け、枯れ補償など)が補償されます。例えば大切に育ててきた松の木や、家のシンボルツリーとなっている桜の木なども、専門家が評価すれば補償の対象です。

ただしその木の移植が困難であったり、移植するより新しく買った方が安いと判断されたりした場合は、伐採が妥当と見なされます。その場合は、その立木の取引価格から伐採費用を引いた額の補償を受けることが可能です。

なおプランターや鉢植えの植物は動産(家具など)として扱われ、引っ越し代(移転費用)の中で補償されます。

営業補償

立ち退き対象の建物で事業を行っていた場合、その損失に対しても補償がされます。

【営業を一時休止・移転継続する場合】
移転に伴い、一時的に営業を中断する間の営業補償を受けられます。

  • 休業中に得られるはずだった収益相当額(売上減少分)
  • 休業中も支払いが発生する固定費(家賃、光熱費、リース料など)
  • 従業員への休業手当
  • 仮営業所(仮店舗)を設置する場合の費用 など

【営業を廃止(または規模縮小)する場合】
立ち退きを機に廃業せざるを得ない場合や、事業規模を小さくする場合の補償です。

  • 営業権(のれん代・得意先など、営業上の価値)
  • 在庫となった商品や資産の売却損
  • 従業員の解雇手当 など

建物などの損失の補償にも移転雑費がありますが、営業補償はあくまで営業上の損失に対する補償です。物理的な移転費用と、営業上の損失が重複して計算されないよう注意が必要です。

その他の補償

上記以外にも、個別の状況に応じて以下のような補償が算定される場合があります。

農業補償・漁業補償とは、立ち退きの対象が農地や漁場であり、それらが使用できなくなる場合の補償です。耕作者や漁業従事者の生活再建のために、収穫高や漁獲高に基づき算定されます。

残地補償とは、所有する土地の一部だけが道路拡張などで収用され、残った土地(残地)の価値が著しく下がった場合の補償です。例えば土地収用の結果、家を建てるには狭すぎる・形が悪すぎる土地(不整形地)が残ってしまった場合などが対象となります。

迷惑料・慰謝料を別項目で請求することは難しい

「長年住んだ愛着のある土地や持ち家を離れるのだから、迷惑料や慰謝料も請求したい」と考えるのは当然です。しかし公共事業の損失補償基準において、迷惑料や慰謝料といった精神的な苦痛に対する補償項目は原則存在しません。

例えば高齢者世帯や子どもの通学事情など、個別の事情は立ち退き時期の調整に配慮される可能性はありますが、それが補償額そのものの増額につながるケースは限定的です。補償金はあくまで財産上の損失に対する補償である点を理解しておくことが重要です。

立ち退き要請時に住宅ローンの支払いが残っていた場合はどうなる?

持ち家の方にとって深刻な問題ですが、立ち退き(土地収用)によって家を失ったとしても住宅ローンの返済義務は消えません。

行政が支払う立ち退き料(補償金)は、あくまで土地の価格や建物の移転料であり、ローン残債を全額補償する項目はなく、行政が肩代わりすることはないためです。また土地・建物はローンの担保になっているため、立ち退きにより担保が消滅することで、金融機関からローンの一括返済を求められる可能性があります。

都市計画道路による立ち退きで住宅ローンが残ってしまう場合は、受け取った補償金で一括返済ができないか確認しましょう。もし補償金がローン残債に満たない場合は以下の方法を検討してください。

  • 立ち退き料の増額を交渉する
  • 不足分を自己資金で補う
  • 行政に金融機関との調整を依頼する

実際過去にあった都市計画道路の住民説明会で「住宅ローンは補償されるのか」という質問に対して「生活再建がスムーズにいくよう、金融機関との打ちあわせに東京都も動向するなどの協力をさせていただく」と回答している記録が残っています。自治体に相談した上でも不安が残る場合は、ご自身だけで判断せず、早い段階で弁護士に相談してください。

※参考:東京都.「説明会での主な質問と回答」,(参照2025-11-18).

立ち退き料に納得できない場合は裁判を申し立てる必要がある

道路拡張による補償額に納得できず、行政との交渉が決裂した場合、行政は土地収用という法的手続きに入ります。

行政は収用委員会(都道府県に設置される中立的な第三者機関)に対し、補償額を決定するよう申請。住民側は、この収用委員会に対して提示額は不当だと意見書を提出し、争うことになります。

収用委員会が双方の主張を聞き、この金額が妥当という裁決を下します。民間の立ち退きと違い、まず収用委員会を挟むのが公共事業の特徴です。もし、この収用委員会の裁決にも不服がある場合、最終的に裁判所に対して補償金増額請求訴訟を起こすことになります。

道路拡張による立ち退き要請は拒否できる?

「お金の問題ではなく、この土地を離れたくない」と道路拡張の立ち退き拒否を考える方もいるでしょう。しかし、都市計画に基づく公共事業の場合、立ち退きを拒否し続けることは残念ながらできません。民間の立ち退きとは違い、これは都市計画法や土地収用法という法律に基づいています。

これらの法律は、公共の利益(道路の整備など)のためであれば、個人の土地の権利を(適正な補償の上で)取得できると定めています。話し合いがまとまらず拒否を続けた場合、最終的には収用手続を経て、裁決に基づき明け渡しが行われ、状況によっては強制的な執行措置が取られる可能性があります。

したがって道路拡張による立ち退きは、拒否をして居座るのではなく、行政との協議の中で適切な補償を確保することが正しい戦略です。また、どうせ拒否できないからと行政の言い値で承諾するのではなく「立ち退きには応じるが、法律に基づいた受け取るべき補償金を漏れなく支払ってほしい」と交渉することが、ご自身の生活を守る道となります。

都市計画道路の立ち退きの流れ

では、実際に都市計画道路の事業が決定してから立ち退きが完了するまでどのような流れで進むのでしょうか。全体像を知っておくことで、不安の軽減や今後の生活再建の計画にも役立ちます。ここでは、大まかなステップをご紹介します。

道路拡張計画の策定・住民への説明

都市計画道路の事業実施が決定すると、行政は具体的な道路拡張計画を策定します。この段階で、地権者や地域の自治会などに対して以下のような内容についての住民説明会が開催されます。

  • どのような道路拡張計画なのか
  • 工事のスケジュール
  • 立ち退きの対象となる範囲
  • 補償(立ち退き料)の基本的な方針

この説明会は行政側の計画を知る最初の機会であり、交渉の戦略を立てる上で重要な情報源にもなります。必ず出席し、配布資料や説明内容をしっかりと記録・保管しておくことが重要なポイントです。立ち退き交渉を弁護士に依頼する場合は、この時点で相談をし始めましょう。

調査・測量の実施・資金調達

説明会の後、行政の委託を受けた測量会社や補償コンサルタントが、立ち退き対象となる土地や建物の調査に入ります。この調査は担当者が敷地内に入って行うため、立ち会いを求められます。

調査には大きく2種類あり、一つは土地の正確な面積や境界線を確定させるための現況測量調査です。もう一つは、土地の上にどのような建物、工作物(門、塀など)、立木があるか詳細に調べる用地測量調査です。この調査結果は提示される補償金の算定の基礎資料となります。

これらの調査と並行して、行政は国庫補助金や都道府県支出金など、道路拡張工事に必要な資金の調達を進めます。

立ち退き交渉・補償契約書の作成

調査結果に基づき、行政から補償額が提示され、ここから具体的な立ち退き交渉がスタートします。提示された補償額について、次の点を必ず確認してください。

  • 補償金の内訳が妥当か
  • 住宅ローンの残債をどう扱うか
  • 建物や庭木などの評価が適切になされているか
  • 仮住まい費用など必要な補償項目が漏れていないか

住民と行政の双方が補償額や立ち退き時期に合意すれば、補償契約書を作成します。契約書に署名・捺印する際は、補償金の総額と内訳、支払い期限、明け渡しの期限が口頭での合意内容と相違ないか、必ず確認しましょう。

引っ越し・立ち退き料の支払い

補償契約書に明記された期限までに、引っ越し(立ち退き)を行います。立ち退きと同時に、土地の所有権を行政に移すための所有権移転登記などの事務手続きも行います。これらの登記作業には専門的な知識が必要であり、登記費用も発生するため、弁護士や司法書士へ相談するのが望ましいです。場合によっては行政が事務手続きを代行する場合もあります。

立ち退きが完了したら補償契約に基づき、補償金が支払われるのが一般的です。引っ越し代や移転先の契約金など、先立つ費用が捻出できない場合は、交渉の段階で補償金の一部を先払いしてほしいと相談しておくことが重要です。

すべての立ち退きが完了した後、ようやく道路拡張工事が実施されます。

まとめ

都市計画道路の立ち退きは公共事業であるため、原則として退去を拒否できません。しかし、拒否できないからと行政の提示する最初の金額をうのみにして立ち退きに合意してしまうのは避けましょう。

補償金は国や自治体が定める損失補償基準に基づき算定されますが、その解釈や土地・建物の評価額には、交渉の余地が大きく残されています。特に住宅ローンが残っている場合やご自身で事業を営んでいる場合の交渉は、個人が担うには多くの労力がかかります。

適正な補償金を得て生活を再建するためにも、話し合いが本格化する前に立ち退き交渉の実績が豊富な弁護士に相談するのが望ましいです。

ライズ綜合法律事務所は、不動産鑑定士と連携し、法的な根拠と専門的な知見に基づいた適正な立ち退き料を厳密に試算します。この高精度な試算を武器に行政と交渉し、当初の提示額からの増額を実現した実績も多数あります。

ご相談は何度でも無料で、最短即日対応も可能です。提示された補償額が妥当か知りたいという段階でも問題ありません。まずはお気軽にご電話ください。

このページの監修弁護士

弁護士

久松亮一(弁護士法人ライズ綜合法律事務所)

東京大学法学部、及び法政大学法科大学院卒。
2012年弁護士登録。

弁護士歴10年以上の知見を活かし、法律の専門家として、債務整理・慰謝料請求・立ち退き問題など、同事務所が取り扱う幅広い法律問題に従事している。