債務整理

2026/08/19

免責不許可事由とは?定義や自己破産が認められない要件を解説

免責不許可事由とは?定義や自己破産が認められない要件を解説

「ギャンブルや浪費などが原因の場合には自己破産が認められないのではないか」とお悩みの方もいるかもしれません。手続きに失敗して借金問題が解決しない不安から、相談を躊躇してしまうのではないでしょうか。しかし、正しく制度を理解して誠実に対応すれば、免責許可を得られる可能性は十分にあります。

本記事では、免責不許可事由の定義や認められない要件、対処法などについて解説します。

【この記事で分かること】

  • 免責不許可事由の正確な定義と裁判所が重視する判断基準
  • 浪費や財産隠しなど免責が制限される具体的な11のケース
  • 免責不許可事由があっても免責が認められるケース

免責不許可事由とは?

免責不許可事由とは、自己破産した場合でも借金の免除(免責)が認められない原因となる行為のことです。破産制度を悪用したり、債権者に不当な不利益を与えたりする行為などが該当します。

免責不許可事由がある場合、原則として免責は認められません。ただし、事情によっては裁判所の個別の判断により免責が認められる場合もあります。例えば、一度きりのギャンブルで借金を作ってしまった場合のように行為の悪質性が低く、なおかつ本人が深く反省しているケースでは、裁判所の判断で例外的に免責が許可される場合があります。そのため、免責不許可事由に該当してもすぐに諦める必要はありません。誠実な態度で自己破産の手続きに臨むことが重要です。

免責不許可事由の種類

免責不許可事由には、財産の隠匿や不誠実な手続き対応など、さまざまな類型があります。ここでは、それぞれの事由について解説します。

1.財産を隠す・処分するなどの行為

自己破産を見越して、本来債権者に配当されるべき現金や不動産を隠したり、第三者に名義移転したりする行為が該当します。また財産を時価より著しく安い価格で売却する行為も含まれます。

財産を不当に減らして配当を免れようとする点が問題視され、意図的な隠匿が発覚すると、免責不許可となる可能性が高まります。例えば、差し押さえを逃れるために自分の車を親族の名義に書き換えた、高価な貴金属を「捨てた」と嘘をつき知人に預けたなどの行為が典型例です。これらの行為は、破産管財人の調査により高い確率で露見します。発覚すれば免責が認められないだけではなく、刑事責任を問われるリスクもあるため、全ての財産を正直に申告する誠実さが求められるでしょう。

2.破産を遅らせるために借金や取引をする行為

破産手続きを先延ばしにする目的で、著しく不利益な条件で新たな借入れを行ったり、財産を不当に安い価格で処分したりする行為は、免責不許可事由に該当する可能性があります。

例えば、返済の見込みがないにもかかわらず高金利の借入を重ねる行為や、クレジットカードで購入した商品を短期間で現金化する行為などは、債権者の利益を害する恐れがあるとして問題視されます。このような行為は、破産手続きの公正性を損なうものとして裁判所から厳しく評価されるかもしれません。

特に、破産申し立て直前の不自然な借入や取引は慎重に判断されるため、無理な資金繰りは避けましょう。

3.特定の債権者だけを優遇して返済する行為

特定の債権者に特別な利益を与える目的や、他の債権者を害する目的で返済を行った場合、または通常とは異なる時期や方法で返済した場合には問題となる可能性があります。

例えば、他の債権者への返済を止めているにもかかわらず、親族や知人への借入れだけを優先して返済するようなケースは、債権者平等の原則に反する行為として評価されることがあるのです。

こうした偏った返済が行われた場合、破産手続きの中で管財人により返済金の回収が図られることもあり、結果として関係者に影響が及ぶ可能性もあります。善意による行為であっても問題となり得るため、返済の進め方には十分に注意しましょう。

4.浪費やギャンブルによる著しい財産減少・過大な借入

競馬やパチンコといったギャンブル、または過度な浪費で多額の借金を作った場合などが該当します。単なる日常的な支出ではなく、著しい財産減少が要件です。

これらの行為は、借金額や期間、当時の生活状況を踏まえつつ判断されます。常習性があるケースでは裁判所の判断も不利になりやすいです。例えば、年収に見合っていない高級車の購入やブランド品への過度な支出、収入の大半をギャンブルにつぎ込む行為が該当します。ただし、この事由があっても裁量免責が認められることが多いです。一度の失敗を反省し、現在は依存から脱却して家計管理を徹底しているといった改善の姿勢を示すことが、免責を勝ち取る鍵となります。

5.破産状態を隠して信用取引で財産を取得する行為

自分が支払不能な状態であることを隠して、ローンを組んだりクレジットカードで財産を取得したりする行為が該当します。

問題となるのは、単に返済が難しい状況で借入を行うこと自体ではなく、返済能力がないことを認識しながら、虚偽の申告などによって相手の信用を得て取引を成立させるような行為です。

例えば、既に多額の借入があり破産を検討しているにもかかわらず、審査時に借入状況を偽って新たなカードを契約したり、支払いの見込みがない状態で高額商品を分割払いで購入したりする行為が挙げられます。このような行為は、破産手続きの公正性を損なうものとして厳しく評価されやすいです。

6.帳簿や書類を隠したり、改ざんしたりする行為

自身の財産状況を示すための帳簿や領収書、取引資料などを破棄・隠匿・改ざんする行為が該当します。裁判所や管財人の正確な調査を妨げる点が大きな問題です。

個人事業主の破産において問題になりやすく、手続きの信用性を根底から損なう行為です。例えば、経営悪化を隠すために売上台帳を破棄したり、特定の資産を隠すために預金通帳をわざと一部提出しなかったりする行為が該当します。また会計データを意図的に消去する行為も同様に扱われます。破産手続きでは、隠し財産がないかどうか客観的な資料で証明することが不可欠です。証拠資料を隠滅する行為は重大な妨害と見なされ、正確な実態把握ができない以上、免責許可を得ることは困難になるということを覚悟しなければなりません。

7.虚偽の債権者名簿を提出する行為

実際には存在する債権者をあえて記載しない、もしくは存在しない架空の債権者を記載する行為などが該当します。債権者の正確な把握を妨げるため、重大な違反とされます。

意図的な隠蔽であれば、免責を受けることは困難になる可能性が高いです。例えば、「親友からの借金だけは破産させたくない」と一覧表から意図的に除外する、逆に配当金を身内に流す目的で架空の債権者を名簿に加える行為などです。一部の債権者が手続きから漏れると、その人は意見を述べる機会を奪われるため、公平性が失われます。うっかりとした記載漏れであれば修正が可能ですが、特定の相手を隠し通そうとする不誠実な態度は、免責が不許可になる決定的な要因となり得るため、全ての債権者に正直に申告しなくてはなりません。

8.裁判所への説明拒否や虚偽の説明

裁判所や破産管財人が行う質問に対し、回答を拒否したり嘘の説明をしたりする行為などが該当します。

手続きへの非協力的、あるいは不誠実な態度は、裁判所から不利に評価されます。例えば、面談でギャンブルの有無を問われた場合に、証拠があるにもかかわらず「やっていない」とうそをつき続ける、管財人からの質問を無視する行為などです。裁判所は破産者の更生意欲を重視するため、嘘をつくことは再生のチャンスを捨てることに等しいといえます。不利益な事実であっても包み隠さず話し、なぜそうなってしまったのか、今後はどう改善するのかを誠実に説明することが免責許可を勝ち取るためには何よりも大切です。

9.破産管財人などの職務を不正に妨害する行為

破産管財人による財産調査や換価作業を不当な手段で妨げる行為が該当します。破産手続きそのものを成り立たなくさせる行為であるため、免責不許可に直結しやすい重い事由です。

例えば、管財人が自宅を訪問した際に鍵を閉めて立ち入りを拒んだり、管理下の重要な書類を勝手に持ち出したりする行為などが挙げられます。また管財人の業務を妨害するために執拗な連絡を繰り返す行為も不適切です。

管財人は裁判所の指示で動く公正な立場であり、その職務を妨げることは法秩序への挑戦と見なされます。反抗的な態度は、結果的に自身の免責を遠ざけるだけではなく、手続き自体を長期化させることになります。

10.過去の免責・再生から7年以内の申し立て

過去に免責を受けてから、法律で定められている一定期間(7年)が経過していない状態で申し立てを行う場合が該当します。これは短期間での繰り返しの利用を防ぐためです。制度の濫用と判断されやすく、前回の申し立てからの期間経過は重要な判断要素となります。

例えば、一度自己破産をして借金をゼロにしたにもかかわらず、わずか3年後に再び浪費で多額の借金を作り、2度目の破産を申し立てるケースです。原則として、前回の免責決定確定日から7年が経過していない場合は、新たな免責は認められません。安易な破産を繰り返すことで債権者が不当に利益を損なうのを防ぐための制限ですが、病気や災害のようにやむを得ない特別な事情がある場合には、審査は厳格ですが裁量免責が検討される余地もあります。

11.その他破産手続き上の義務違反に当たる行為

上記に当てはまらない場合でも、破産法で定められた破産者の義務を怠る行為は免責不許可事由になります。手続き全体を通じた誠実性が問われるため、軽微な違反でも積み重なると不利になります。

例えば、裁判所からの呼び出しに正当な理由なく欠席を繰り返したり、住所を変更したのに届け出を出さず、裁判所や管財人と連絡が取れなくなったりする行為です。破産手続きは、公的で厳格なプロセスであり、そのルールを守らないことは更生の意思がないと断じられる理由になります。一つ一つの対応を疎かにせず一貫して誠実な対応を続けていなければ、最終的に免責不許可となるリスクを招きかねないため、最後まで真摯な姿勢を保つ必要があります。

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免責不許可となってしまった場合の対処法

自己破産の申し立てを行い、万が一裁判所から免責不許可の決定が出てしまったとしても、直ちに打つ手が無くなるわけではありません。状況に応じた適切な対応策がいくつかあります。

即時抗告を検討する

裁判所の下した免責不許可決定に対して納得がいかないケースでは、即時抗告を行うことが可能です。これは、決定に事実誤認や法の適用の誤りがある場合に、上級裁判所に対して判断の見直しを求める手続きです。

例えば、ギャンブルの内容について裁判所に大きな誤解があり、過大な支出ではないことを客観的な証拠により証明できる場合などが考えられます。ただし、単なる感情的な不服だけでは認められないため、弁護士と連携して法的に説得力のある抗告理由書を作成して、事案に応じた主張を行わなくてはなりません。

一定期間経過後に再度申し立てる

一度免責不許可になっても、一生自己破産ができないというわけではありません。不許可の原因となった事情を解消し、真摯に生活を改めてから、一定期間を置いて再度破産申し立てを行うことも選択肢の一つです。

この場合には、過去の反省状況やその後の生活改善が重要視されます。例えば、ギャンブル依存症が原因で不許可になった場合は、数年間にわたり専門の治療を継続してから再度申し立てを行うとよいでしょう。前回の失敗を真摯に受け止め、更生したことを客観的な事実で示せるだけの十分な準備期間を設けなくてはなりません。

個人再生への切り替えを検討する

自己破産による免責が得られない場合、他の債務整理手続きに切り替えることで借金問題を解決できることがあります。現実的な再建策として、多くのケースで検討される方法です。

個人再生は借金を大幅に減額してもらうことにより、残った債務を原則3年から5年かけて分割返済します。個人再生には、自己破産のような免責不許可事由による直接的な制限がないため、浪費やギャンブルなどが原因で破産が認められなかった方も利用できる可能性が高いというメリットがあります。ただし、借金を減額するには裁判所へ再生計画案を提出し、認可を得なければなりません。

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免責不許可事由があっても自己破産が認められるケース

免責不許可事由に該当する行為があったからといって、必ずしも免責が否定されるわけではありません。行為の悪質性が低い場合や本人の深い反省と生活改善が認められる場合には、裁判所の判断で裁量免責が認められることがあります。

実際に、単発で軽微な浪費などであれば、裁量免責によって救済されるケースが少なくありません。裁判所は、過去の行為だけではなく反省の度合いや手続きへの協力姿勢を総合的に判断します。例えば、ギャンブルの経緯を正直に話して、管財人の調査に誠実に協力し、現在は家計簿をつけて収支を改善させているといった実績があれば、免責許可を得られる可能性があります。

そもそも免責の対象とされない債権とは?

自己破産で免責許可決定が出た場合でも、全ての債権の支払い義務がなくなるわけではありません。社会的・道義的な観点から、免除するのが適当でないとされる一部の債権については、破産後も引き続き支払う必要があります。

このように、免責の対象とならず支払い義務が残る債権は「非免責債権」と呼ばれます。一般的な借金とは異なり、自己破産をしてもゼロにはならない点に注意が必要です。

非免責債権がある場合、免責許可を受けた後も返済を続けていくことになるため、破産後の生活設計に大きく影響します。そのため、自身の債務の中にどのような債権が含まれているのか、またどれが非免責債権に該当するのかを、あらかじめ正確に把握しておくことが重要です。

税金・社会保険料などの公租公課

所得税や住民税、自動車税などの税金、国民健康保険料や年金保険料などの公租公課は自己破産をしても免責されません。これらは公共サービスを支えている重要な財源であり、国民の義務でもあるためです。

破産手続きが終わった後も支払い義務は残るため、放置することによって銀行口座や給与を差し押さえられるリスクがあります。例えば、数年分滞納してしまった住民税がある場合、免責許可後に役所の窓口へ出向き、現在の収入状況を説明して分納を相談するといった対応を取る必要があります。

養育費・婚姻費用などの扶養義務に基づく債権

子どもの養育費や別居中の配偶者への婚姻費用などの扶養義務に基づいて発生する債権は、免責の対象外です。これらは人の生存や生活の保障に直結する重要な権利であり、破産によって失われることがあってはならないものだからです。

自己破産で他の借金がゼロになったとしても、養育費の支払い義務は継続します。例えば、過去に遡って未払いになっている養育費がある場合、滞納分についても免責はされません。破産後にどうしても支払額が生活を圧迫する場合には、借金の整理とは別に、家庭裁判所へ養育費減額請求の調停を申し立てるなどの法的アプローチが必要になります。家族に対する責任は、経済的破綻後も重く守られるべきものとされています。

故意または重過失による不法行為に基づく損害賠償請求権

故意や重過失によって他人に損害を与えた場合の損害賠償請求権は、加害者への制裁の観点から免責されない場合があります。

ただし、全ての不法行為が対象になるわけではなく、行為の態様が個別に判断されます。例えば、相手を殴って怪我をさせた際の治療費や慰謝料、あるいは悪質な飲酒運転によって引き起こされた人身事故の賠償金などは、非免責債権に該当する可能性が高いです。一方、軽過失であれば免責される可能性もあります。

罰金・科料・追徴金・過料

刑事罰や行政罰として科された罰金、科料、追徴金、過料などは、自己破産をした場合でも一切免責されません。これらには金銭を支払わせて罪を償わせる制裁としての性質があり、民事上の救済である破産手続きによって免除することは不相当とされているからです。

破産手続きとは切り離された支払い義務として残り続けます。例えば、交通違反で科された罰金を「お金がないから」という理由で破産によって消すことはできません。もし罰金を支払わずに放置した場合には、最終的には労役場への留置などの身柄拘束を伴う強制措置が取られるリスクもあります。公的な制裁金については、私的な借金整理の枠組みでは救済を受けられないという点に注意が必要です。

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まとめ

免責不許可事由とは、自己破産において借金の免除が認められない原因となる行為を指し、財産の隠匿や偏った返済、浪費・ギャンブル、虚偽申告などが代表例です。ただし、これらに該当しても直ちに免責が否定されるとは限らず、反省状況や手続きへの協力姿勢などを踏まえた裁量免責が認められる場合もあります。

また万が一免責が不許可となった場合でも、即時抗告や再申し立て、個人再生への切り替えといった対応策があります。制度の仕組みを正しく理解し、誠実に対応することが重要です。

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このページの監修弁護士

弁護士

久松亮一(弁護士法人ライズ綜合法律事務所)

東京大学法学部、及び法政大学法科大学院卒。
2012年弁護士登録。

弁護士歴10年以上の知見を活かし、法律の専門家として、債務整理・慰謝料請求・立ち退き問題など、同事務所が取り扱う幅広い法律問題に従事している。