債務整理

2026/08/14

個人再生の流れや手続き

個人再生の流れや手続き

「毎月の返済が重く、生活費まで圧迫されている」と悩みを抱える方もいるでしょう。借金返済に追われる日々は精神的にも辛いものです。個人再生を検討しても、手続きの複雑さや職場や家族にバレないかという不安から一歩を踏み出せない方も少なくありません。

本記事では、借金減額への具体的なロードマップを提示します。流れを把握し、漠然とした不安を解消しましょう。

【この記事で分かること】

  • イメージできる個人再生の全手続き
  • 申立てから認可までの期間とスケジュール
  • 失敗を防ぐ開始決定後・認可後の注意点

個人再生の流れや手続き

個人再生とは、裁判所を介し、法定基準に沿って借金を減額(原則5分の1〜10分の1)してもらい、減額された借金を原則3年間(最長5年)で分割返済していく手続きです。手続きは複雑かつルールが厳格で、一般的に申立てから手続き終了まで6カ月〜1年程度の期間を要します。

ここでは、弁護士へ相談してから認可決定、返済が始まるまでのステップを解説します。

※本記事で紹介する金額、期間は2025年12月19日現在の情報です。

1.弁護士への相談・依頼

個人再生を検討し始めたら、まずは債務整理の実績が豊富な弁護士に相談しましょう。

相談の際は、現在の借入総額、債権者の数(借入先)、収入状況、住宅や車といった財産の有無を正確に伝えることが重要です。住宅ローンを残したまま他の借金を整理したいなどの希望がある場合は、それが実現可能かどうか、個人再生が最適な選択肢かどうかを弁護士が判断します。また、手続きにかかる費用や期間の目安についても確認しておきましょう。

説明に納得し、信頼できると判断したら委任契約を結びます。この契約によって、弁護士が代理人として活動を開始します。

2.債権調査・引き直し計算

契約締結後、弁護士は速やかに各債権者へ受任通知(介入通知)を送付します。この通知が債権者に届いた時点で、正当な理由なく直接連絡(督促や取り立て)がストップし、返済も弁護士の指示により一時的に停止します。これにより精神的な平穏を取り戻せるでしょう。

弁護士はそれと同時に債権者から取引履歴を取り寄せます。これまでの借入・返済の記録をもとに、利息制限法の上限金利(15〜20%)に基づいて金利の再計算(引き直し計算)を行います。

長期間高い金利で取引をしていた場合、引き直し計算によって借金総額が減る可能性があるでしょう。場合によっては過払い金が発生しており、借金がゼロになるだけでなく、お金が戻ってくるケースもあります。確定した借金額が今後の再生計画の基礎となります。

3.申立書類の準備

正確な負債額が判明した後は、裁判所への申立てに向けた書類作成と収集に入ります。個人再生の申立てには、以下のように多くの書類が必要です。

【主な必要書類の例】

  • 個人再生申立書、陳述書
  • 債権者一覧表
  • 家計収支表(直近2〜3カ月分)
  • 財産目録(預貯金、保険、車、不動産など)
  • 清算価値算出シート(自己破産した場合に債権者へ配当され得る額の見積)
  • 源泉徴収票、給与明細書、課税証明書
  • 住民票、戸籍謄本
  • 預金通帳のコピー(過去1〜2年分)
  • 住宅ローン関係書類(住宅ローン特則を利用する場合)

例えば、家計収支表を準備する際は、食費や光熱費などの支出を細かく記載し、余剰金から返済が可能であることを証明しなければなりません。これらの書類は弁護士の指示のもと、依頼者様ご自身で集めていただくものと、弁護士が作成するものがあります。不備があると手続きが遅れる原因となるため、綿密な準備が必要です。

4.裁判所への申立て

書類一式が整ったら、住所地を管轄する地方裁判所へ個人再生の申立てを行います。申立ての際には、実費として以下の費用を裁判所に納める必要があります。

  • 申立手数料(収入印紙):約1万円
  • 予納郵券(切手代):数千円(裁判所により異なる)
  • 官報公告費:約1万4,000円

また、東京地方裁判所などの一部の運用では、申立て後に個人再生委員が選任されるケースが多く、その場合は予納金(再生委員への報酬として15〜25万円程度)が別途必要です。

さらに、申立てのタイミング前後から、実際に返済していけるのかをテストする履行テスト(積立トレーニング)が始まることがあります。これは毎月指定された口座に予定返済額を積立てるもので、この実績が認可の判断材料となります。

5.個人再生委員との面談

裁判所が個人再生委員を選任した場合、申立てから1〜2週間程度で、再生委員との打ち合わせ(面談)を実施。

この面談には、原則申立人ご本人と代理人弁護士が同席します。再生委員は、提出された書類をもとに、借金が増えた経緯(借金の使途)、現在の家計状況、資産内容、今後の返済計画の実現可能性などを詳しく聴取します。

例えば、家計簿に記載されている使途不明金の内容や、ギャンブルによる借金がある場合の反省状況などが質問の内容です。この面談での受け答えや印象は、その後の手続きの進行に大きく影響するため、弁護士と事前に打ち合わせをして臨むことが大切です。

6.再生手続きの開始決定

書類審査や個人再生委員との面談を経て、要件を満たしていると判断されれば、申立てから1カ月程度で裁判所より再生手続開始決定が出されます。

これによって、正式に個人再生手続きがスタートします。開始決定がなされると、申立人の氏名や住所などが政府の発行する機関誌である官報に掲載されますが、一般の方が目にする機会は多くありません。

開始決定後も履行テストは継続されます。また、手続き開始後は、一部の債権者だけに返済することや、新たな借入れを行うことは原則禁止です。これらを行うと手続きが廃止される恐れがあります。

7.債権者による債権届出

開始決定が出された場合、裁判所が各債権者に対して開始決定通知書と債権届出書を送付。債権者は、定められた期間内(通常、開始決定から約6週間)に開始決定日時点での元金・利息・遅延損害金を含む債権額を裁判所に届け出ます。

その後、債権者から提出された届出内容と、申立人が申告した債権額を照らし合わせます。内容に相違がある場合(例えば、自分が思っていたよりも借金額が多く届け出られた)は、債権認否一覧表を作成。異議申立てを行う期間が設けられ、最終的な債権額が裁判所によって確定されます。

8.再生計画案の作成・提出

債権額が確定したら、その金額をもとに具体的な返済計画を記した再生計画案を作成。再生計画案には、以下のような内容を盛り込みます。

  • 借金の減額幅(最低弁済額の基準に従って算出)
  • 返済期間(原則3年、特別な事情があれば5年)
  • 返済方法(3カ月に1回以上の分割払いなど)
  • 住宅ローン特則を利用する場合はその旨

この再生計画案は、裁判所が定めた期限内に必ず提出しなければなりません。期限を1日でも過ぎてしまうと、手続き自体が廃止(打ち切り)となってしまう恐れがあるため、弁護士と連携して確実に作成・提出する必要があります。

9.書面による決議

提出された再生計画案は、裁判所から各債権者に送付され、その内容に同意するかどうかの意見を問われます。手続きの種類によって方法が異なります。

【小規模個人再生の場合】

書面決議が行われます。再生計画案に反対する債権者が債権者数の半数未満かつ反対する債権者の債権額が総額の2分の1以下であれば可決されます。つまり、大口の債権者が強硬に反対すると否決されるリスクがあります。

【給与所得者等再生の場合】

債権者の決議は不要で、意見聴取のみ行われます。債権者が反対しても、法的要件を満たしていれば認可されます。

多くのケースでは小規模個人再生が選択されますが、反対される可能性がある場合は、事前の根回しや給与所得者等再生の検討が必要です。

10.再生計画の認可・返済開始

書面決議や意見聴取の結果、問題がない場合に裁判所は再生計画認可決定を下します。この決定も官報に掲載されます。

認可決定から約1カ月が経過すると、決定が確定。個人再生手続きは無事終了となります。確定した翌月から、いよいよ再生計画に基づいた新しい形での返済がスタートします。

ここからが本当の再スタートです。返済期間中は、計画通りに支払いを継続しなければなりません。万が一滞納すると、再生計画が取り消され、減額された借金が元の額に戻る可能性があります。担当弁護士の助言に従い、完済まで気を抜かずに生活を立て直しましょう。

個人再生にかかる期間

個人再生は、申立てをしてすぐに終わるものではありません。全体を通してどのくらいの期間を見ておくべきか、目安を解説します。

認可決定までにかかる期間

個人再生手続き全体にかかる期間は、一般的に申立てから6カ月〜1年程度が目安です。

まず、弁護士に依頼してから資料を集めて申立てを行うまでに早くて3カ月、状況によっては6カ月ほどかかります。申立てを行ってから裁判所による審査を経て、再生手続開始決定が出るまでに約1カ月。

その後、債権の調査や確定、再生計画案の作成・提出、債権者による決議を経て、最終的な認可決定が出るまでにさらに約4〜6カ月の期間を要します。管轄の裁判所や事案の複雑さ、債権者の数が多い場合などは、1年以上かかるケースもあります。

認可決定後の返済期間

再生計画が認可され、確定した後の返済期間は、原則として3年間(36回払い)です。

ただし、教育費の負担が大きい、親の介護が必要など、特別な事情により3年間での完済が難しいと認められた場合、例外的に最長5年間(60回払い)まで返済期間を延長することが可能です。例えば、減額後の借金が300万円の場合には、3年払いなら月約8.3万円ですが、5年払いが認められれば月5万円まで負担を下げることができます。

注意点として、返済期間中は支払期日の厳守が求められます。滞納が続くと再生計画が取り消され、減額が無効になる恐れがあるため、決して遅れないよう管理が必要です。

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個人再生の期間が長引きやすいケース

スムーズに進んだ場合、半年程度で終わる手続きも状況によっては長引くことがあります。ここでは期間が延びてしまう典型的なケースを紹介します。

準備に割ける時間が少ない場合

個人再生の手続きでは、直近数カ月分の給与明細や、費目ごとの詳細な家計収支表など、非常に多くの資料を裁判所に提出しなければなりません。これらの資料収集や作成は、弁護士任せにはできず、ご本人の協力が不可欠です。

そのため、お仕事が忙しいなどの理由で、資料集めや家計簿の作成に十分な時間が割けないと、申立ての準備がなかなか整わず、その分だけ着手が遅れてしまいます。結果として、手続き全体の終了時期も後ろ倒しになってしまうのです。早期解決を目指すなら、依頼直後から優先順位を上げ、集中して準備に取り組む姿勢が大切です。

弁護士費用の支払いが滞っている場合

弁護士費用の支払い進捗も、期間に影響します。多くの法律事務所では、受任通知送付後に費用の積立て(分割払い)をし、申立てに必要な金額(着手金や実費全額など)が貯まった段階で裁判所へ申立てを行うのが一般的です。

そのため、毎月の積立てが滞った場合、「申立て費用が不足している」「返済能力に懸念がある」と判断され、申立て準備がストップしてしまいます。結果、解決までの期間が大幅に伸びてしまいます。相談の段階で、無理のない積立てスケジュールを立て、費用の工面方法をしっかり考えておくことが重要です。

個人再生の費用はいくらかかる?相場や払えない場合の対処法は?

書類に不備があった場合

裁判所に提出した申立書類や証拠資料に不備があった場合は、裁判所から補正命令(修正や追加資料提出の指示)が出されます。これに対応するために、追加の調査や新たな書類作成が必要となり、審査期間が数週間から数カ月単位で延びてしまう可能性があります。

よくある例は、通帳に見覚えのない入出金がありその使途を説明できないケースなどです。このようなタイムロスを防ぐためにも、申立ての際は必要書類を入念に確認し、記載ミスや漏れがないよう注意すること、そして弁護士に隠し事をせず正確な情報を伝えることが最短解決への近道です。

個人再生の開始決定後の注意点

裁判所から再生手続開始決定が出された場合、まだ手続きは道半ばです。最終的なゴールである再生計画の認可決定を勝ち取り、無事に返済をスタートさせるためには、開始決定後の生活態度が極めて重要視されます。

最も厳重に注意すべきなのは、新たな借入れや浪費、ギャンブルを厳に慎むことです。個人再生は債務者の経済的な更生を目的とした国の制度です。手続き中に借金を増やしたり、パチンコや競馬などのギャンブル、分不相応な買い物などの浪費を続けていたりした場合、裁判所や個人再生委員から「更生の意欲がない」「計画的な返済は不可能」と判断されて、最悪の場合は手続き自体が廃止(打ち切り)となってしまいます。

また、開始決定後も履行テスト(積立トレーニング)は認可が出るまで継続されます。毎月決められた日までに確実に送金して、返済能力を証明し続けなければなりません。さらに、転職や引っ越し、結婚・離婚など生活状況に変化があった場合は、必ず弁護士へ速やかに報告してください。報告漏れは不信感を招き、不認可の原因になりかねないため、些細なことでも必ず相談しましょう。

認可決定後に返済が困難になったときの対処法

3〜5年という長期にわたる返済期間中には、病気や会社の業績悪化、家族の事情といった予期せぬトラブルで支払いが苦しくなることもあるでしょう。その場合、ただ滞納して再生計画が取り消されるのを待たずに、状況に応じて取れる法的手段がいくつか存在します。

計画変更を申立てる

病気による入院や勤務先の業績悪化による失業のように、債務者本人の責任ではないやむを得ない事情が発生し、再生計画通りの返済が著しく難しくなった場合、裁判所に再生計画の変更を申立てることができます。

要件を満たし、この申立てが認められた場合、返済期間を最大で2年間延長することが可能です。例えば、当初3年(36回)払いの計画だったものを5年(60回)払いに延長することにより、月々の返済額を下げ、無理なく支払いを継続できるようにします。

ただし、この制度は単に生活費を使いすぎたといった理由では認められません。収入の減少や支出の増加が予見できなかったことを証明する資料(医師の診断書や解雇通知書など)が必要となり、審査も厳格に行われる点に注意が必要です。

ハードシップ免責を申立てる

返済期間の延長(計画変更)を行ってもなお、返済を継続することが極めて困難な状況に陥った場合、ハードシップ免責という特例的な制度を利用できる可能性があります。これは以下の厳格な要件を全て満たした場合に、残りの借金の支払いを特別に免除してもらえる制度です。

(1)返済実績

再生計画に基づく返済総額の4分の3以上を返済し終えていること。

(2)不可抗力

債務者の責めに帰せない事由(重い病気、事故による障害、リストラなど)により、返済が不可能になったこと。

(3)計画変更の困難性

上記の計画変更を行っても、なお返済の継続が極めて困難であること。

(4)清算価値保障

免責決定をしても債権者の利益を不当に害しないこと(自己破産時の配当額以上を返済済みであること)。

要件は非常に厳しく、返済の初期や中期段階では利用できませんが、完済目前でどうしても払えなくなった場合の最終的な救済措置として覚えておくとよいでしょう。

自己破産を検討する

上記の計画変更も要件を満たさず、ハードシップ免責も利用できない場合は、最終的な解決手段として自己破産への切り替えを検討せざるを得ません。

個人再生の手続きが途中で頓挫してしまったケースでも、改めて自己破産の申立てを行い、裁判所から免責許可決定を得られた場合、残っている借金の支払義務は全てなくなります(税金などを除く)。借金苦から解放される点では有力な最終手段です。

ただし、自己破産に移行した場合、個人再生では守ることができたマイホームなどの資産は処分されてしまいます。また、一定期間の資格制限も生じます。それでも、返済不能のまま放置して再生計画が取り消されるよりは、早めに弁護士に相談し、生活再建のための対策を講じることが最善です。

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まとめ

個人再生とは、半年から1年の期間と複雑な手続きを経て、借金を法定基準に沿って減額し、生活再建を目指す強力な法的手段です。マイホームを守れるメリットがある一方、成功には膨大な資料作成や厳格なルール遵守が求められます。

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このページの監修弁護士

弁護士

久松亮一(弁護士法人ライズ綜合法律事務所)

東京大学法学部、及び法政大学法科大学院卒。
2012年弁護士登録。

弁護士歴10年以上の知見を活かし、法律の専門家として、債務整理・慰謝料請求・立ち退き問題など、同事務所が取り扱う幅広い法律問題に従事している。