債務整理
2026/09/11
自己破産の免責とは?免責許可決定の手続きの流れや要件を解説

自己破産を検討していても「自分は免責を受けられるのか」と迷ってしまう方もいるのではないでしょうか。本記事では、自己破産における免責の仕組みや条件、注意点を分かりやすく解説します。制度の全体像を把握することで、自分にとって適切な選択が見えてくるでしょう。
【この記事で分かること】
- 自己破産における免責の仕組みと、借金の支払義務が免除されるまでの流れ
- 免責が認められるための条件や、認められない主なケース
- 非免責債権の内容と、自分が免責を受けられる可能性の判断基準
自己破産における免責とは?
自己破産における免責とは、残った借金の支払義務を法律上免除する裁判所の決定を指します。自己破産では、まず財産を整理し債権者へ配当を行いますが、この手続きだけで借金がなくなるわけではありません。最終的に免責許可決定が確定して初めて、支払義務が免除される仕組みです。
手続きが終了しても免責が認められなければ、借金は残る点に注意が必要です。この点は誤解されやすいため、あらかじめ理解しておきましょう。
この制度は、経済的に行き詰まった人が生活を立て直すために設けられています。返済不能な状態にある人に対し、再出発の機会を与えることが目的です。なお、任意整理や個人再生といった他の債務整理とは異なり、免責が認められれば原則として借金の大部分が免除される点が特徴といえるでしょう。
自己破産で免責が認められるための条件
自己破産で免責を受けるためには、一定の条件を満たす必要があります。誰でも無条件で認められるわけではなく、裁判所が個別の事情を踏まえて判断します。ここでは、免責の可否を判断するうえで重要となる代表的な要件について整理していきます。
支払不能の状態にあること
自己破産で免責が認められるためには、まず支払不能の状態にあることが前提となります。支払不能とは、単に借金が多いという意味ではなく、収入や財産の状況からみて継続的に返済できない状態を指します。
具体的には、次のような状況が該当します。
- 収入や資産が乏しく返済能力がない
- 返済期日を迎えた借金を支払えない
- 将来的にも返済を継続できる見込みがない
- 客観的に見て支払いが困難である
重要なのは、借金額だけで判断されない点です。例えば借金が多額でも、それに見合う資産があれば支払不能とはいえません。一方で借金が比較的少額でも、収入がない場合などは支払不能と判断される可能性があります。最終的には、収入・資産・生活状況などを踏まえ、裁判所が総合的に判断します。
免責不許可事由に該当しないこと
免責を受けるためには、破産法で定められた「免責不許可事由」に該当しないことが原則です。免責不許可事由とは、債権者の利益を害するような不誠実な行為を指し、具体的には浪費や財産隠し、虚偽申告などが含まれます。
ただし、これらに該当した場合でも、直ちに免責が認められないわけではありません。裁判所が事情を考慮し、反省状況や生活状況などを踏まえて判断する「裁量免責」という制度があります。
そのため、過去に問題となる行為があったとしても、すぐに諦める必要はありません。重要なのは、状況を正しく説明し、誠実に手続きに対応することです。最終的には個別事情をもとに判断されるため、不安がある場合は専門家に相談することが望ましいでしょう。
免責の対象となる債権があること
免責許可決定が確定すると、原則として借金の支払義務は免除されます。しかし、全ての債務が対象となるわけではありません。税金や罰金、悪意による不法行為に基づく損害賠償などは「非免責債権」とされ、自己破産後も支払義務が残ります。
代表的な非免責債権には、次のようなものがあります。
- 税金や社会保険料
- 刑事罰に関する罰金
- 悪意で加えた不法行為の損害賠償
- 故意または重大な過失による人身事故の損害賠償
このように、自己破産をしても全ての負債が免除されるわけではありません。そのため、免責の対象となる債権がどの程度あるかを事前に確認することが重要です。仮に非免責債権のみで構成されている場合、自己破産のメリットは限定的になる可能性があります。
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自己破産で免責が認められないケース
自己破産では、一定の条件を満たせば免責が認められる可能性があります。しかし、全てのケースで認められるわけではありません。特に債権者の利益を害するような不誠実な行為がある場合には、免責が許可されない可能性があります。
こうした免責が認められない原因は「免責不許可事由」と呼ばれ、破産法で定められています。ただし、これらに該当したとしても、事情によっては裁量免責が認められる場合もあります。
ここでは、代表的な免責不許可事由について具体的に解説していきます。
財産を隠す・処分する・価値を下げる行為をした場合
自己破産に当たって、自身の財産を隠したり、不当に処分したりする行為は免責不許可事由に該当します。破産手続きは、債権者へ公平に配当を行うことを前提としているため、財産を減らす行為は重大な問題とされます。
例えば、自分名義の不動産を親族へ名義変更する、保有している資産を著しく低い価格で売却するといった行為が該当します。このような行為は、本来配当されるべき財産を減少させるため、制度の趣旨に反するものです。
なお、通常の生活における支出や適正な売却まで問題となるわけではありません。重要なのは、不当な目的があるかどうかです。軽い気持ちで行った行為であっても不正と判断される可能性があるため、財産の取り扱いには十分注意する必要があります。
不利な条件で新たな借金を負った場合
支払不能であることを認識しながら、破産手続きを遅らせる目的で新たな借入を行うと、免責不許可事由に該当する可能性があります。特に著しく不利な条件で借金を増やす行為は問題視されます。
またクレジットカードで購入した商品をすぐに安価で売却し現金化する行為も同様です。これは一時的に資金を得る手段ではありますが、結果として債務を増やすことにつながります。
こうした行為は、破産手続きの適正な進行を妨げるものとされます。全ての借入が問題となるわけではありませんが、目的や状況が重視されるため、安易な資金調達は避けるべきです。
一部の債権者だけを優先して返済した場合
支払不能の状態にあることを認識しながら、特定の債権者にだけ返済する行為は「偏頗弁済」と呼ばれ、免責不許可事由に該当します。破産手続きでは、全ての債権者を公平に扱うことが基本原則です。
例えば、親族や友人など身近な人への借金だけを優先して返済するケースが挙げられます。感情的に優先したい気持ちは理解できますが、結果として他の債権者の利益を損なうことになります。
ただし、全ての返済が直ちに問題となるわけではありません。状況や金額などを踏まえて判断されるため、不安がある場合は事前に専門家へ相談することが重要です。
ギャンブルや浪費で借金を作った場合
収入や資産状況に見合わない浪費や、ギャンブルなどの射幸行為によって借金を増やした場合も、免責不許可事由に該当する可能性があります。
具体的には、競馬やパチンコなどのギャンブル、高額な飲食や買い物、過度な課金、投資取引などが対象となります。これらの行為により財産を著しく減少させた場合、免責が認められない可能性があります。
ただし、全ての支出が問題となるわけではありません。収入とのバランスや金額の程度などが総合的に判断されます。また裁量免責が認められるケースもあるため、一概に免責が否定されるとは限りません。
嘘の申告で借入や信用取引をした場合
支払不能の状態であることを認識しながら、虚偽の情報を用いて借入や信用取引を行った場合は、免責不許可事由に該当します。このような行為は「詐術」とされ、重大な不正行為と評価されます。
例えば、他人の名義を使用する、収入や負債額を偽る、虚偽の書類を提出するなどが該当します。これらは信用取引の前提を崩す行為であり、厳しく判断されます。
単なる記載ミスとは異なり、意図的に虚偽の申告を行った場合が対象となります。故意性が重要な判断要素となるため、正確な情報を申告することが求められます。
帳簿や書類を隠す・改ざん・破棄した場合
財産や収支に関する帳簿や書類を隠したり、改ざんしたりする行為も免責不許可事由となります。これは、裁判所や破産管財人が正確な状況を把握できなくなるためです。
こうした行為は手続きの適正な進行を妨げるだけではなく、破産法上の処罰対象となる可能性もあります。そのため、単なる手続き上の問題にとどまらず、重大な違反行為と位置付けられています。
なお、うっかり紛失した場合とは区別されます。意図的な隠滅や改ざんであるかどうかが重要な判断ポイントです。
債権者一覧表に虚偽を記載した場合
破産手続きでは、全ての債権者を一覧表に記載する必要があります。この一覧に虚偽の内容を記載した場合や、意図的に一部の債権者を除外した場合は、免責不許可事由に該当します。
債権者一覧表は、債権者が手続きに参加し意見を述べる機会を確保するための重要な資料です。記載漏れがあると、適正な手続きが行われなくなる恐れがあります。
特に、故意に記載しなかった債権については、相手方が手続きを知らない場合、免責の効力が及ばないこともあります。正確な情報を漏れなく記載することが重要です。
裁判所や管財人への説明を拒否・虚偽説明した場合
破産手続きでは、裁判所や破産管財人からの調査に対して協力する義務があります。この際に説明を拒否したり、虚偽の説明を行ったりすると、免責不許可事由に該当します。
財産状況や借金の経緯について正確に説明しない場合、手続きの公正性が損なわれるためです。またこのような行為は刑事罰の対象となる可能性もあります。
曖昧な説明ではなく、正確で誠実な対応が求められます。不明点がある場合でも、隠すのではなく正直に説明することが重要です。
破産管財人の業務を妨害した場合
破産管財人は、財産の調査や管理、換価などを行う重要な役割を担っています。この業務を妨害する行為も免責不許可事由に該当します。
破産者には、管財人の調査に協力する義務があります。例えば、必要な資料を提出しない、連絡に応じないといった行為は、手続きの進行を妨げるものと評価されます。
さらに、不正な手段による妨害は刑事責任を問われる可能性もあります。手続きを円滑に進めるためにも、誠実な対応が不可欠です。
破産手続き上の義務に違反した場合
破産手続きでは、破産者に対してさまざまな義務が課されています。これらの義務に違反した場合も、免責不許可事由となる可能性があります。
主な義務には、財産の開示や説明義務などが含まれます。これらは手続きの適正な進行を確保するために重要なものです。
義務違反は、手続き全体の信頼性を損なう行為とみなされます。そのため、指示に従い誠実に対応することが求められます。
7年以内に免責を受けている場合
過去に免責を受けたことがある場合、一定期間内は再度免責を受けることが制限されています。具体的には、前回の免責許可決定から7年以内に再度申立てを行った場合、免責不許可事由に該当します。
また個人再生におけるハードシップ免責などを受けた場合も、同様の制限が適用されることがあります。これは制度の濫用を防ぐためのルールです。
ただし、これも個別事情により判断される場合があります。再度の手続きを検討する際には、事前に専門家へ相談することが重要といえるでしょう。
自己破産で免責が認められるまでの流れ
自己破産で借金の支払義務が免除されるまでには、いくつかの段階を踏む必要があります。申立てを行えばすぐに免責されるわけではなく、裁判所の関与のもとで手続きが順を追って進められます。
ここでは、免責許可決定に至るまでの一般的な流れを整理していきます。
1.弁護士に相談し依頼する
自己破産は本人が申立てを行うことも可能ですが、専門的な知識や手続きが必要となるため、弁護士に依頼するケースが一般的です。弁護士に依頼すると、まず債権者に対して受任通知が送付されます。これにより、原則として債権者からの直接の取り立ては停止します。
取り立てが止まることで精神的な負担が軽減され、冷静に今後の対応を考えられるようになります。また弁護士は依頼者の状況を確認し、免責が見込めるかを判断します。状況によっては、個人再生や任意整理といった他の手続きが適している場合もあるため、複数の選択肢を踏まえて提案を受けられる点もメリットです。
2.申立書類や必要書類を準備する
弁護士への依頼後は、自己破産の申立てに必要な書類を準備します。主な書類には、申立書、陳述書、債権者一覧表、財産目録などがあります。これらは自身の財産状況や借金の内容を正確に示す重要な資料です。
書類の内容に不備や誤りがあると、裁判所の確認に時間がかかり、手続きが長引く可能性があります。そのため、正確な情報を収集し、慎重に作成することが求められます。
また、この期間に借金の総額を確定させるとともに、弁護士費用や裁判所に納める費用の準備を進めることが一般的です。事前準備を丁寧に行うことが、その後の手続きを円滑に進めるポイントとなります。
3.裁判所へ自己破産を申し立てる
書類の準備が整ったら、住所地を管轄する地方裁判所へ自己破産の申立てを行います。法律上、破産手続開始の申立てをした場合、特別な意思表示がない限り、同時に免責許可の申立ても行ったものと扱われます。
申立て後は、裁判官が事情を確認するための審尋が行われることがあります。弁護士に依頼している場合には、弁護士のみが出席する即日面接が行われるケースもあります。なお、具体的な運用は裁判所によって異なるため、手続きの進め方に多少の違いがある点には注意が必要です。
4.同時廃止、または管財事件の手続きが進む
申立て後、裁判所は申立人の財産状況や免責不許可事由の有無を確認し、「同時廃止事件」または「管財事件」に振り分けます。
同時廃止事件は、換価できる財産がほとんどなく、詳細な調査が不要と判断された場合に適用されます。この場合、破産管財人は選任されず、比較的簡易に手続きが進みます。
一方、一定の財産がある場合や調査が必要と判断された場合は管財事件となり、破産管財人が選任されます。管財人は財産の管理や換価、免責に関する調査を行い、その結果を債権者集会で報告します。このように、手続きの内容は状況に応じて異なります。
5.免責審尋などが行われる
手続きの終盤では、裁判所が免責を許可するか判断するために、免責審尋が行われることがあります。免責審尋では、借金に至った経緯や現在の生活状況、反省の有無などについて確認されます。
ただし、全てのケースで実施されるわけではありません。管財事件の場合は、債権者集会が免責審尋の役割を兼ねることが多く、別途実施されない場合もあります。
裁判所は、申立人が制度の趣旨を理解し、今後同様の問題を繰り返さないかといった点を重視します。誠実な対応が重要となる場面といえるでしょう。
6.免責許可決定が出る
免責審尋や必要な手続きが終了し、裁判所が免責を認めるのが相当と判断した場合、免責許可決定が出されます。この決定が確定すると、非免責債権を除き、破産手続開始前に負っていた借金の支払義務が法律上免除されます。
非免責債権には税金や罰金などが含まれるため、全ての負債が対象となるわけではありません。この点は先述の通り注意が必要です。
また免責許可決定は官報に掲載されます。さらに、破産手続中に制限されていた一定の資格や職業に関する制限も解除されます。
自己破産において慰謝料は免責される?
自己破産において慰謝料が免責されるかどうかは、その原因となる行為の内容によって判断が分かれます。全ての慰謝料が一律に免責対象となるわけではありません。
一般的に、悪意による不法行為や重大な過失によって発生した慰謝料は「非免責債権」とされ、自己破産後も支払義務が残る可能性があります。具体的には、故意に相手を傷つけた場合や、重大な過失による人身事故などが該当します。
一方で、通常の過失による交通事故や、不倫に関する慰謝料などは、免責される可能性があるとされています。ただし、これらも個別の事情によって判断されるため、一概に結論を出すことはできません。
このように、慰謝料の取り扱いはケースごとの判断が重要です。自身の状況がどちらに該当するのかを把握するためにも、専門家に相談しながら進めることが望ましいでしょう。
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まとめ
本記事では、自己破産における免責の仕組みや条件、認められないケース、手続きの流れについて解説しました。免責は借金の支払義務を免除する重要な制度ですが、一定の条件を満たす必要があり、全てのケースで認められるわけではありません。
また免責不許可事由に該当する場合でも、事情によっては裁量免責が認められる可能性があります。重要なのは、自身の状況を正しく把握し、適切な対応を取ることです。
自己破産を検討する際には、専門家に相談することでより具体的な判断ができるようになります。ライズ綜合法律事務所では、月間4,000件、年間5万件の相談実績があり、電話・メール・LINEからのお問い合わせにも対応しています。相談料は無料のため、まずはお気軽にお問い合わせください。
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このページの監修弁護士

弁護士
久松亮一(弁護士法人ライズ綜合法律事務所)
東京大学法学部、及び法政大学法科大学院卒。
2012年弁護士登録。
弁護士歴10年以上の知見を活かし、法律の専門家として、債務整理・慰謝料請求・立ち退き問題など、同事務所が取り扱う幅広い法律問題に従事している。