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債務整理

2022/09/07

任意整理とほかの債務整理は違う?メリット・デメリットやしない方がいい人の特徴を解説

長引くコロナ禍と物価高のため生活や事業の資金繰りがひっ迫し、借金で悩むことになった方もいるでしょう。借金を整理する方法はいくつかありますが、そのなかでも任意整理はほかの債務整理と違い手続きが簡単で柔軟性が高いというメリットがあります。 このコラムでは、借金を整理し新たな生活をスタートできるようになる任意整理について解説します。
任意整理とほかの債務整理は違う?メリット・デメリットやしない方がいい人の特徴を解説

1.任意整理とは

任意整理とは借金の返済に行き詰ってしまった、あるいは行き詰りそうになっている債務者が、借金を整理する方法(債務整理)の1つです。任意整理の大きな特徴は、3〜5年程度で元本を完済ができると見込まれる債務者が、裁判所を介さずに債権者と交渉して返済条件を決めることにあります。

任意整理では、借金の金利相当分を利息制限法の上限金利(15〜20%)としたうえで、借金総額を再計算します。あわせて以後の金利と遅延損害金を原則として免除できます。

また、ほかの債務整理と異なり裁判所を介さないことから、迅速な解決が期待できること、借金していることが家族や勤務先に知られる可能性が低いことも特徴的です。

2.ほかの債務整理との違い

おもな個人の債務整理には、任意整理のほかに個人再生・自己破産・特定調停があります。

以下ではそれぞれの債務整理の概要およびメリット・デメリットについて任意整理と比較しながら説明します。

2-1 個人再生

個人再生は、継続的に収入がある債務者が対象であり、一定程度の債務者の自助努力によって借金を返済していくことを前提としている点が、任意整理と共通しています。

ただ、任意整理で免除が受けられるのは基本的に金利と遅延損害金ですが、小規模個人再生では借金の総額が最大で90%減額できる場合があります。また、任意整理とは違い、住宅資金特別条項付の再生計画案が裁判所に認可されることによって、住宅ローンが残っている自宅不動産を処分しなくても済みます。

しかし、個人再生は裁判所が介在する債務整理で、任意整理と異なり官報に掲載されるため、そういったことに抵抗がある人は任意整理のほうがよいでしょう。

2-2 自己破産

自己破産とは、地方裁判所にすべての借金を帳消しにしてもらう債務整理の方法です。保有している資産や今後の収入見込みを考慮しても債務返済の目処が立たなくなる「支払不能」の状態に陥った場合は、任意整理ではなく自己破産が選ばれることが多いでしょう。

ただし、ギャンブルや無謀な浪費が原因の借金は「免責不許可事由」に区分され返済義務が残る可能性があります。また、「租税等の請求権」や「悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権」など破産法が定める一部の債権は「非免責債権」とされ、債務者に免責許可決定が出たとしても,これらの債権は消滅せず,免責の対象にはなりません。

任意整理と異なり、自己破産では基本的にすべての借金が帳消しになるメリットがあります。ただし、「自由財産」として許容される範囲を超える部分の財産については手放す必要があることや、個人再生同様に、官報に掲載されるなど、デメリットがあることに注意が必要です。

2-3 特定調停

特定調停とは、簡易裁判所の関与のもと弁済期間や金利減免など返済条件の緩和について債権者と話し合い、借金の整理を目指す債務整理の方法です。

特定調停は支払不能に陥るおそれがある債務者が簡易裁判所に申し立て、簡易裁判所は債務者と債権者の仲裁役の役割を果たします。収入がある程度安定し借金の額が比較的少ない債務者が対象である点で、特定調停と任意整理は共通しています。一方で、簡易裁判所が関与することが任意整理と異なります。

 

3.任意整理ができる条件

任意整理には裁判所を通さず、債務整理よりも手軽に簡易的にできることから、定期収入がある人はよく任意整理を選びます。ただし、任意整理で返済していくことについて債権者の了解を得るためには、いくつかの条件があります。

3-1 今後も返済していく意思がある

任意整理では、交渉の結果によっては債権者から今後の金利と遅延損害金の支払いを免除することにより、毎回の返済金額を少なくします。

ただし、任意整理の基本は債務者の自助努力により借金を返済していくことです。任意整理について債権者と合意しても返済の意思がなく放置すれば、合意内容は破棄され、債権者から一括返済を求められるだけではなく、裁判所に訴訟や財産の差押えを申し立てられる可能性があります。

債務者に返済の意思がないと任意整理はできないため、その場合は自己破産などを検討すべきでしょう。

3-2 継続して安定した収入がある

債務者からの定期的かつ継続的な返済が見込まれなければ、債権者は任意整理に応諾しません。定期的かつ継続的な借金返済が為されることの裏付けは、債務者に継続して安定した収入があること、つまり債務者が安定した収入を得られる職業や賃貸不動産などを持っていることです。

債務者に継続して安定した収入がなければ借金の返済も見込めませんので、そのような状態で任意整理を申し出ても債権者との交渉をまとめることは難しいでしょう。

3-3 3~5年で返済できる予定である

返済期間が長くなることは、それだけ債権者にとって貸し倒れリスクが高くなることを意味します。そのため、一般的に任意整理において債権者は返済期間が長期にわたることを望みません。

法律で決められているわけではありませんが、任意整理の返済期間は基本的に3〜5年とされます。借金の金額が長期にならざるを得ない場合、言い換えると債務者の収入金額に比べて借金が高額である場合、任意整理に応じてもらうことは難しいでしょう。

 

4.任意整理の流れ

4-1 返済総額の確定

任意整理では、一般的に遅延損害金を免除し借金の金利を15%から20%程度(利息制限法の上限金利)に引き下げたうえで返済総額を計算・確定します。

4-2 債務者による任意整理案(債務弁済計画案)の策定

借金を3〜5年以内に返済する前提で、借金の返済計画を債権者に説明しながら策定します。このとき、債務者の収入と比べて返済計画に無理があると、債権者からの同意を得ることは難しくなります。

4-3債権者から任意整理案の同意を得て、和解契約の締結

債務弁済計画について、債権者から同意を得て和解契約を締結します。

 

5.任意整理のメリット

数ある債務整理のなかでも、裁判所を通さなくて済む手軽さから任意整理は多くの債務者によって選ばれています。以下では、任意整理によって債務整理を行うことにより債務者が得られるメリットについて解説します。

5-1 債権者からの督促が止まる

債務者から委任を受任した弁護士は、債権者に債務者の代理人になったことを知らせる受任通知を出します。それ以降は、任意整理の和解成立に向けた交渉から督促の対応まで、債権者とのやり取りはすべて弁護士が行います。そのため、債務者が債権者に直接連絡することはなくなります。

もし債権者から直接督促が来ても、債務者は債権者に対して「代理人である弁護士に問い合わせてほしい」と伝えるだけで問題ありません。債権者から直接の督促が止まるため、精神的に楽になるでしょう。

5-2 完済まで利息や損害遅延金を免除できる

借金の利息には、借金したときから任意整理の和解契約が成立するまで発生する経過利息と、和解契約成立から完済まで発生する将来利息があります。

債権者との交渉結果次第では、いずれの利息も免除され返済が元本のみになることから、消費者金融のカードローンなど利息が高い業者から借り入れしている場合、返済負担はかなり軽くなるでしょう。

免除が受けられなかったとしても、金利は利息制限法の範囲内に留め過去に払いすぎた利息がある場合は、その分を元本の弁済に充てたものとすることができます。そのため、借入残高を減らせるかもしれません。

また、債権者との交渉次第では返済の延滞について発生している遅延損害金(年率20%が上限)についても基本的に一部または全部が免除されます。

5-3 ほかの債務整理より手続きが楽で費用も安め

個人再生や自己破産と異なり、任意整理は裁判所の介入がないため裁判所へ書類を提出したり予納金を収める必要がありません。債権者との話し合いがスムーズに進めば、ほかの債務整理よりも簡単な手続きで費用も安く済みます。

ただし、自己破産や個人再生でも同じですが、代理人を弁護士に依頼する場合は弁護士費用が発生します。

任意整理には法的な知見や債権者との交渉力が必要であるため、債務者個人で債務整理に関するすべての手続きをすることは、かなり難しいといえます。できるはずだった任意整理ができなくなるおそれもあるため、任意整理を確実に成功させるためには弁護士に依頼するようにしてください。

 

6.任意整理のデメリット

任意整理はメリットばかりではなく、デメリットもあります。以下のようなデメリットを許容できない場合は、任意整理は難しくなります。任意整理を考えるときはデメリットを確認しつつ、慎重に検討してください。

6-1 いわゆるブラックリストに掲載される

自己破産や個人再生と異なり、任意整理では債務整理を余儀なくされている事実が裁判所の官報により公的に知られることはありません。

ただし、一度任意整理などの債務整理を行うと、個人信用情報機関にその情報が記録されます。この状態はいわゆるブラックリストに掲載された状態といえます。

どの債権者でも、ローンの審査を行うときは個人信用情報機関の情報を確認します。そのため、個人信用情報機関に登録されている約5〜7年は新たなローンや各種分割支払い、新たなクレジットカードは作れなくなると考えたほうがよいでしょう。

6-2  意味がないケースもある

任意整理は今後の支払いに対して、金利をカットするものです。そのため、もともと金利が低く、ほとんど元本の借り入れだけである場合は、任意整理をしても返済負担はさほど軽くはなりません。

また、任意整理後も5年以内に元本を返せる見込みがなければ、そもそも任意整理のハードルは高くなるといえますので、その場合は違う種類の債務整理の手段を選ぶなど、慎重な判断が必要です。

こういった判断は専門知識が必要であるため、任意整理をするかどうかの判断にも弁護士が必要だといえるでしょう。

6-3 住宅ローンは任意整理できない

住宅ローンは基本的に任意整理による金利減免や返済額の条件変更の対象外であり、任意整理では住宅ローンを除外したうえで債権者と和解契約を締結します。

住宅ローンがある自宅に住み続けたい場合は、任意整理ではなく個人再生がおすすめです。

個人再生では任意整理では使えない住宅資金特別条項付の再生計画案を作成することにより、ほかの一般債務と住宅ローン債務の返済条件を別々にしたうえで、自宅を差し押さえられることなく住み続けられます。

6-4 任意整理した金融機関からの借金は難しい

当初の借入時に債権者と約束した債務の弁済が滞って任意整理をすることは、債権者からの信用が著しく低下することを意味します。金融機関が個別に記録している債務者の信用状況は、個人信用情報機関と異なり半永久的に残るケースもあります。

債権者である金融機関からの情報に基づき、信用情報機関は債務者が任意整理した事実を記録し、それは各金融機関に共有されています。このため、約5〜7年程度はほかの金融機関から新たに借金することが難しくなる可能性があります。

 

7.任意整理をした方がいい人

借金の金額が少なく安定した収入源があり、利息や毎月の返済額などの条件を緩和すれば今後の収入から3〜5年程度での返済が見込める人は、自己破産や個人再生よりも任意整理がおすすめです。

また、生命保険外交員や警備員などのように自己破産したことが欠格事由となっている職業に就いている人でも、任意整理で失職することはありません。任意整理はどんな職業の人でも手続きが可能です。

このほか、借金に保証人がついていて、債権者から保証人への請求を避けたい場合は、債務者が任意整理の和解契約通りに返済を続けているかぎり保証人が債権者からの追及を受けることがありません。そのため、保証人に迷惑をかけたくない人も任意整理を選ぶとよいでしょう。

 

8.任意整理をしない方がいい人

和解契約に定めた債務弁済計画どおりに、借金を返済できるとはかぎりません。昨今のコロナ禍のように経済環境や雇用環境が急速に悪化した場合は、収入の減少により借金の返済が滞ってしまうこともあります。

通常、任意整理の和解契約では「返済を一定期間延滞すると、和解の効力が無くなる(期限の利益の喪失)」としています。つまり、債務者による延滞が一定期間続くと和解契約そのものが破棄され、債権者の意向によっては一括返済を求められかねません。

和解契約を締結できたとしても、その後の返済が難しいと考えられる場合は、任意整理はしない方がよいでしょう。

 

9.任意整理は弁護士なしでもできる?

任意整理は、債務者単独でもできないことはありません。

しかし、任意整理を成立させるためには和解契約に向けた法的な知見や債権者との交渉力が必要です。このため、債務者個人ですべての手続きを進めることはかなり難しいでしょう。また、債務者個人で交渉しても、応じてくれない債権者がほとんどです。場合によっては交渉に失敗し、任意整理できないことも起こりえます。

早期かつ確実に借金の問題を解決するためには、やはり専門家である弁護士に依頼してください。

 


まとめ

任意整理は経験と法的な知見のある弁護士に依頼した方が、債務者単独で行うよりも良い結果になります。おひとりで悩むだけではなく、債務整理を取り扱っている弁護士に相談してみることをおすすめします。

弁護士法人ライズ綜合法律事務所では、任意整理について解決実績が豊富な弁護士が多数在籍しており、ご依頼者様が抱えるお悩みに寄り添いながら最適な解決策を提案します。借金のことが不安だ、任意整理したほうがいいのかわからないなどのご相談も承っておりますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。

 

このページの監修弁護士

弁護士

三上 陽平(弁護士法人ライズ綜合法律事務所)

中央大学法学部、及び東京大学法科大学院卒。
2014年弁護士登録。
都内の法律事務所を経て、2015年にライズ綜合法律事務所へ入所。
多くの民事事件解決実績を持つ。東京弁護士会所属。

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