債務整理
2026/09/12
自己破産したら海外旅行に行けない?制限されるケースと行く際の注意点を解説

「自己破産をすると海外旅行へ行けなくなるのでは?」「手続き中の海外出張は制限される?」と不安に感じる方も多いでしょう。特に、パスポートが使えなくなるといった話を聞き、自己破産後の生活に大きな支障が出るのではないかと心配になるケースもあります。
しかし、自己破産をしたからといって、将来にわたり海外渡航が全面的に禁止されるわけではありません。実際には、手続きの段階や事件の種類によって扱いが異なります。
本記事では、自己破産と海外旅行の関係について、申し立て前・手続き中・免責後に分けて解説します。渡航制限がかかるケースや注意点を理解することで、不安を減らしながら適切に手続きを進められるでしょう。
【この記事で分かること】
- 自己破産の段階別の海外旅行の可否
- 管財事件で渡航制限がかかる理由と許可を得る流れ
- 自己破産後のパスポート・クレジットカード利用への影響
自己破産後に海外旅行は行ける?
自己破産をしたからといって、今後一切海外旅行へ行けなくなるわけではありません。ただし、手続きの段階や事件の種類によっては、一時的に制限がかかる場合があります。ここでは、申し立て前・手続き中・免責後の3つに分けて解説します。
【申し立て前】渡航制限はない
自己破産を申し立てる前であれば、海外旅行に関する法的な制限はありません。パスポートが失効したり、自由に出国できなくなったりすることも基本的にはありません。
ただし、申し立て直前に高額な海外旅行へ行くと、浪費と判断される恐れがあります。例えば、返済が難しい状況にもかかわらず、借入金や手元資金を使って豪華な海外旅行を楽しんでいた場合、裁判所から不誠実と受け取られる可能性があります。
浪費は免責不許可事由の一つに該当するため、場合によっては借金の免責が認められないリスクもあります。渡航自体は禁止されていませんが、タイミングや支出内容には注意が必要です。海外旅行を予定している場合は、事前に弁護士へ相談した上で判断すると安心でしょう。
【手続き中】進め方により扱いが異なる
自己破産の手続き中は「同時廃止事件」か「管財事件」かによって海外渡航の扱いが異なります。
同時廃止事件の場合は、破産管財人による財産調査が行われず、比較的短期間で手続きが終了するため、原則として海外旅行に関する法的制限はありません。
一方、管財事件では、裁判所や破産管財人による調査・管理が必要になるため、裁判所の許可なく居住地を離れることが制限されます。海外旅行や長期出張も、この制限の対象となる場合があります。
例えば、無断で長期間海外へ渡航すると、破産管財人との連絡が取れなくなったり、財産調査に支障が出たりする可能性があります。その結果、説明義務違反などを指摘され、手続きに悪影響が及ぶ恐れがあります。
ただし、仕事上の海外出張ややむを得ない事情がある場合は、事前に相談することで許可を得られるケースもあります。自己判断で行動せず、必ず弁護士や破産管財人へ相談しましょう。
【免責許可決定後】渡航制限が解除される
免責許可決定が確定し、自己破産の手続きが終了すれば、居住地に関する制限は解除されます。その後は、裁判所などの許可を得ることなく、自由に海外旅行へ行くことが可能です。
例えば、以前から計画していた海外旅行や、家族旅行、海外出張なども通常通り行えるようになります。自己破産を理由に、将来的な海外渡航が制限され続けることはありません。
ただし、信用情報に事故情報が登録されている期間は、クレジットカードの新規作成や利用が難しくなる点には注意が必要です。海外旅行中にカード決済が使えない可能性があるため、現金やデビットカード、プリペイドカードなどを準備しておくと安心です。
法的な制限はなくなりますが、一定期間は決済手段に工夫が必要になる場合があります。
管財事件で海外旅行に制限がかかる理由
管財事件で海外旅行や長期間の移動に制限が設けられるのは、破産手続きを適正かつ円滑に進める必要があるためです。破産法第37条では、裁判所の許可なく居住地を離れてはならないと定められています。ここでは、なぜこうした制限が必要なのかを解説します。
※参考:e-Gov法令検索.「破産法」第37条.https://laws.e-gov.go.jp/law/416AC0000000075#Mp-Ch_2-Se_3-Ss_1-At_37 ,(参照2026-05-13).
破産者と連絡を取れる状態にする必要があるから
管財事件では、裁判所や破産管財人が、破産者といつでも連絡を取れる状態を維持する必要があります。これは、財産調査や手続き上の確認事項に迅速に対応するためです。
例えば、財産内容の確認や追加資料の提出が必要になった際に、破産者と連絡が取れなければ、手続き全体が滞る恐れがあります。破産者には、破産管財人などに対して必要な説明を行う義務もあるため、長期間連絡が取れない状態は問題になりかねません。
そのため、管財事件では、裁判所や破産管財人からの呼び出しに対応できる状態でいることが求められます。
財産隠しや逃走を防ぐ必要があるから
居住地の制限には、財産隠しや逃走を防ぐ目的もあります。無断で海外へ渡航した場合、財産を隠したまま逃亡するのではないかと疑われる可能性があるためです。
例えば、本来は債権者への配当に充てるべき現金や資産を持ったまま出国し、そのまま帰国しないケースを防ぐ必要があります。破産手続きは、債権者へ公平に配当するための制度でもあるため、裁判所や破産管財人は慎重に対応します。
実際に逃亡へ発展するケースは多くありませんが、こうしたリスクを防ぐ観点から、居住地の移動には一定の制限が設けられています。
破産管財人による調査に支障が出るから
管財事件では、破産管財人による財産調査や、免責不許可事由の有無に関する確認が行われます。そのため、破産者には調査へ協力する義務があります。
例えば、債権者集会への出席や、破産管財人との面談が必要になるケースもあります。こうした時期に長期間海外へ滞在すると、調査や手続きの進行に支障が生じる恐れがあります。
また破産管財人は、過去の借入状況や現在の生活状況などについて、本人から直接説明を受けながら調査を進める場面も少なくありません。破産者が海外に滞在していることで調査が進まなければ、免責判断にも影響する可能性があります。
手続きに誠実に協力する姿勢が求められるから
自己破産の手続きでは、破産者が誠実に協力することが重要視されます。そのため、無断で海外旅行へ行くなど、連絡が取れない状態が続くと、不誠実な対応と判断される可能性があります。
特に、法律上の制限を無視して娯楽目的の海外旅行を優先した場合、裁判所や破産管財人からの信用を損なう恐れがあります。その結果、免責判断に悪影響が及ぶ可能性も否定できません。
自己破産は、多額の借金の支払い義務を免除してもらう強力な制度です。そのため、手続き中はルールを守り、裁判所や破産管財人へ誠実に対応する姿勢が求められます。
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自己破産中に海外旅行へ行きたい場合の対応
管財事件の手続き中でも、やむを得ない事情がある場合には、適切な手続きを踏むことで海外渡航が認められるケースがあります。ここでは、海外旅行や海外出張が必要になった場合の対応方法を解説します。
事前に弁護士へ相談する
自己破産の手続き中に海外へ行く必要が生じた場合は、まず代理人弁護士へ相談することが重要です。無断で渡航することは避けなければなりません。
例えば、仕事上どうしても必要な海外出張や、親族の事情による渡航など、やむを得ない理由がある場合は、早めに弁護士へ事情を説明しましょう。
弁護士に相談することで、現在の手続き状況や裁判所の日程などを踏まえながら、許可を得やすいタイミングや必要な対応を確認できます。自己判断で行動せず、まず専門家へ相談することが大切です。
裁判所へ許可申請を行う
管財事件では、海外へ渡航するために裁判所の許可が必要です。通常は、弁護士を通じて裁判所へ居住制限解除の許可申請を行います。
一般的には、まず破産管財人へ事情を説明し、渡航に問題がないか確認した上で、裁判所へ申請する流れとなります。
例えば、破産管財人が「この期間であれば調査や手続きに支障はない」と判断した場合、裁判所から許可を得られる可能性があります。正式な手続きを踏むことで、無断渡航による不利益を避けやすくなります。
※参考:e-Gov法令検索.「破産法」第37条.https://laws.e-gov.go.jp/law/416AC0000000075#Mp-Ch_2-Se_3-Ss_1-At_37 ,(参照2026-05-13).
渡航理由や滞在先などを申告する
許可申請を行う際には、海外渡航に関する情報を具体的に申告する必要があります。主に、渡航理由・渡航期間・滞在先・連絡先などを裁判所へ提出します。
例えば、海外出張であれば出張日程や滞在先ホテル、親族の事情で渡航する場合は、その事情を説明する資料などを求められるケースがあります。
裁判所は、提出された情報をもとに、手続きへ支障がないかを判断します。そのため、虚偽の説明や情報不足があると、許可が下りない可能性があります。スムーズに許可を得るためにも、正確かつ丁寧に申告することが重要です。
自己破産中の海外旅行が許可されやすいケース
管財事件では、海外旅行や海外出張をする際に裁判所の許可が必要になります。ただし、全ての渡航が禁止されるわけではありません。渡航理由に正当性があり、破産手続きに支障がないと判断された場合は、許可されるケースもあります。ここでは、比較的許可を得やすい代表的なケースを解説します。
仕事上必要な海外出張の場合
業務上必要な海外出張は、比較的許可を得やすいケースの一つです。例えば、海外での商談や現地対応が不可欠な業務、専門技術者としての出張など、本人が渡航しなければ仕事に大きな支障が出る場合が該当します。
自己破産は、生活再建を支援する制度でもあるため、収入を維持するために必要な仕事については、裁判所も一定の配慮を行う傾向があります。特に、勤務先が渡航費用を負担し、破産者自身の財産が減少しない場合は、許可されやすくなる可能性があります。
ただし、無断で出張へ行くことは認められません。事前に弁護士へ相談し、出張日程や滞在先などを正確に申告する必要があります。
親族の葬儀や看病などやむを得ない事情がある場合
海外に住む親族の葬儀や看病といった理由による渡航も、許可される可能性があります。こうした事情は、社会通念上やむを得ない理由として考慮されやすいためです。
ただし、この場合でも必要以上に長期間滞在したり、観光やレジャーを兼ねたりすると、不誠実と判断される可能性があります。裁判所へ申請する際は、渡航理由を裏付ける資料を提出し、必要最小限の渡航であることを説明することが重要です。
海外での治療や手術が必要な場合
医療目的の渡航も、やむを得ない事情として認められる可能性があります。例えば、日本国内では受けられない治療を受ける場合や、海外で継続的に治療を受けているケースなどです。
このような場合は、医師の診断書や病院からの受入証明書などを提出することで、裁判所から許可を得やすくなります。健康維持のために必要な渡航は、単なる娯楽目的の旅行とは区別して判断される傾向があります。
ただし、高額な治療費や渡航費については、資金の出所を説明できるようにしておく必要があります。破産者自身の財産を大きく減らすような支出は、問題視される可能性があるため注意しましょう。
手続きに支障が出ない短期間の旅行の場合
観光やレジャー目的の海外旅行は、原則として慎重に判断されます。ただし、手続きへ影響がなく、浪費とも評価されない場合には、許可される可能性があります。
例えば、債権者集会や面談の日程と重なっていない、短期間で帰国する予定である、裁判所や破産管財人と連絡が取れる状態を維持できる、といった事情があれば、許可を得られる場合があります。
また親族が旅費を負担するなど、破産者自身の財産が減少しないケースも考慮される可能性があります。
一方で、長期間の海外旅行や高額な旅行費用を伴うケースでは、浪費や不誠実な対応と受け取られる恐れがあります。許可を得るためには、これまで手続きへ誠実に協力していることも重要な判断材料になります。
無断で海外旅行に行くとどうなる?
管財事件の手続き中に、裁判所の許可を得ずに海外旅行へ行くと、破産法上の居住制限義務に違反する可能性があります。その結果、裁判所や破産管財人からの信用を失い、手続きに悪影響が及ぶ恐れがあります。
特に、破産者には、破産管財人の調査へ協力したり、必要な説明を行ったりする義務があります。無断で海外へ渡航し、連絡が取れない状態になると、こうした義務に適切に対応していないと判断される可能性があります。
例えば「数日だけだから問題ないだろう」と考えて無断で海外旅行へ行った結果、破産管財人との面談や裁判所の期日に対応できず、手続きの進行に支障が生じるケースも考えられます。
その場合、裁判所から不誠実な態度と受け取られ、免責判断に悪影響が及ぶ可能性があります。免責が認められなければ、自己破産をしても借金の支払い義務が残る恐れがあるため注意が必要です。
自己破産では、裁判所や破産管財人へ誠実に協力することが重要です。海外渡航が必要な場合は、必ず事前に弁護士へ相談し、適切な手続きを踏みましょう。
※参考:e-Gov法令検索.「破産法」第37条.https://laws.e-gov.go.jp/law/416AC0000000075#Mp-Ch_2-Se_3-Ss_1-At_37 ,(参照2026-05-13).
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自己破産後にパスポートはどうなる?
自己破産をしたからといって、パスポートが使えなくなったり、新たに取得できなくなったりするわけではありません。ここでは、自己破産とパスポートの関係について解説します。
パスポートが失効するわけではない
自己破産を理由に、現在持っているパスポートが失効したり、没収されたりすることは原則ありません。破産法や旅券法には、自己破産を理由としてパスポートの効力を失わせる規定がないためです。
例えば、自己破産の手続き中であっても、空港の出入国審査で破産の事実を理由に渡航を止められることは基本的にありません。パスポートは国籍や本人確認のための公的書類であり、借金の有無とは別に扱われます。
また裁判所がパスポートそのものを回収することも通常はありません。そのため、有効期限内であれば、これまで通り身分証明書として利用できます。
新規取得や更新も可能
自己破産の手続き中や免責確定後であっても、パスポートの新規取得や更新は可能です。申請時に自己破産の事実を申告する必要はなく、旅券事務所が破産情報を確認することもありません。
例えば、手続き中にパスポートの有効期限が切れた場合でも、通常通り必要書類を提出すれば、更新や再発行の手続きを行えます。
自己破産を理由にパスポートの発給が拒否されることは基本的にないため、海外渡航の可能性が完全に失われるわけではありません。ただし、管財事件の手続き中は、パスポートを持っていても裁判所の許可なく自由に海外へ行けるわけではない点には注意が必要です。
自己破産後に海外旅行をするときの注意点
自己破産の手続きが終了すれば、海外旅行へ行くこと自体に法的な制限はありません。ただし、自己破産後はクレジットカードの利用が難しくなるため、海外では不便を感じる場面があります。特に、カード決済が一般的な国では、事前準備が重要です。
クレジットカードが使えない可能性がある
自己破産をすると、信用情報機関へ事故情報が登録されるため、既存のクレジットカードは利用停止や強制解約となるのが一般的です。またその後一定期間は、新たなクレジットカードを作りにくくなります。
そのため、海外旅行では支払い方法を事前に準備しておく必要があります。
例えば、海外のホテルでは、チェックイン時にデポジットとしてクレジットカードの提示を求められるケースがあります。カードを持っていないと、宿泊できなかったり、高額な現金保証金を求められたりする可能性があります。
こうした場合は、銀行口座から即時引き落としされるデビットカードや、事前チャージ式のプリペイドカードなどを活用すると便利です。また家族カードを利用できるケースもあります。
自己破産後に海外旅行をする際は、現金だけに頼らず、複数の決済手段を準備しておくと安心です。
カード付帯の海外旅行保険が利用できなくなる
クレジットカードが解約されると、カードに付帯していた海外旅行保険も利用できなくなる場合があります。そのため、旅行中の病気やケガ、盗難などへの備えが不十分になる恐れがあります。
例えば、海外では医療費が高額になる国も多く、入院や治療によって大きな出費が発生するケースもあります。無保険の状態では、こうした費用を全て自己負担しなければなりません。
そのため、海外旅行へ行く際は、民間の損害保険会社が提供している海外旅行保険へ加入しておくと安心です。近年は、インターネットや空港などで手軽に加入できる保険商品も増えています。
自己破産後はカード付帯保険を利用できない可能性があるため、旅行前に補償内容を確認し、必要に応じて別途保険へ加入しておきましょう。
まとめ
自己破産をしたからといって、将来にわたり海外旅行へ行けなくなるわけではありません。免責許可決定が確定すれば、原則として自由に海外渡航が可能です。また手続き中であっても、同時廃止事件であれば基本的に制限はなく、管財事件でも裁判所の許可を得ることで渡航できる場合があります。
一方で、管財事件では無断渡航が問題になる可能性があるため、海外旅行や海外出張が必要な場合は、必ず事前に弁護士へ相談することが重要です。また自己破産後はクレジットカードの利用が難しくなるため、その対策も欠かせません。
借金問題を放置すると、生活や将来設計により大きな影響が及ぶ恐れがあります。不安や疑問がある場合は、早めに弁護士へ相談し、自分に合った解決方法を検討しましょう。
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このページの監修弁護士

弁護士
久松亮一(弁護士法人ライズ綜合法律事務所)
東京大学法学部、及び法政大学法科大学院卒。
2012年弁護士登録。
弁護士歴10年以上の知見を活かし、法律の専門家として、債務整理・慰謝料請求・立ち退き問題など、同事務所が取り扱う幅広い法律問題に従事している。