債務整理

2026/09/12

自己破産すると給料は差し押さえられる?その後の収入やボーナスはどうなる?

自己破産すると給料は差し押さえられる?その後の収入やボーナスはどうなる?

「借金の返済が苦しく、自己破産を考えているものの、給料まで全て失ってしまうのではないか」と不安を抱えている方もいるでしょう。特に、生活費や家族のことを考えると、収入がどう扱われるのか気になるのは当然です。

しかし、自己破産は生活を立て直すための制度であり、働いて得た収入まで全て奪われるわけではありません。むしろ、差し押さえを止めて生活を再建するための役割もあります。

本記事では、自己破産後の給料やボーナスの扱い、差し押さえとの関係、勤務先への影響などについて分かりやすく解説します。収入を守りながら再出発するためのポイントを確認していきましょう。

【この記事で分かること】

  • 自己破産後の給料がどこまで手元に残せるのか
  • 給料差し押さえを停止・解除できるケース
  • ボーナスや退職金が処分対象になるかどうかの判断基準

自己破産をすると給料はどうなる?

自己破産をしても、給料が全額没収されることはありません。自己破産は、債務者の生活再建を目的とした制度であり、生活に必要な収入まで奪うものではないためです。

給料が処分対象になるかどうかは、主に破産手続開始決定のタイミングによって判断されます。開始決定前に発生していた未払い給料などは財産として扱われる場合がありますが、開始決定後に新たに得た給料は「新得財産」とされ、原則として自由に使えます。

例えば、月の途中で破産手続開始決定が出た場合、その後の労働によって得た賃金は、家賃や食費などの生活費に充てることが可能です。自己破産は借金の支払い義務を整理し、将来の収入を生活再建のために使えるようにする制度といえるでしょう。

自己破産で処分対象になりやすい給料

自己破産では、全ての給料が回収されるわけではありません。しかし、破産手続開始決定の時点で既に受け取っているお金や、支払いが確定している給料については、財産として扱われる場合があります。

ここでは、自己破産で処分対象になりやすい給料の具体例を解説します。

開始決定前に受け取っている給料

破産手続開始決定の時点で既に手元にある現金や預金は、給料ではなく財産として扱われます。そのため、自由財産として認められる範囲を超える部分は、処分対象になる可能性があります。

一般的な目安として、現金は99万円まで、預金は合計20万円までが残せる基準です。これを超えた分は、破産管財人によって回収され、債権者への配当に充てられる場合があります。

例えば、ボーナス支給直後に自己破産を申し立て、口座残高が50万円あるケースです。この場合、預金として認識されるため、20万円を超える30万円が処分対象となる可能性があります。

開始決定時点で未払いとなっている給料

既に働いた分の給料で、開始決定時点ではまだ支払われていない「未払い給料」も、財産として扱われる場合があります。

ただし、未払い給料の全額が回収されるわけではありません。民事執行法では、原則として手取り額の4分の3が差し押さえ禁止財産として保護されています。そのため、残りの4分の1部分が破産財団に組み入れられる可能性があります。

例えば、月末締め翌月払いの会社で、月初に開始決定が出たケースです。前月分として確定している手取り20万円の給料が未払いの場合、4分の1に当たる5万円が処分対象になる可能性があります。

未払い給料は、既に発生している権利とみなされるため、開始決定日のタイミングが重要になります。

預金として残っている給料

給料が銀行口座へ振り込まれると、法律上は預金として扱われます。そのため、給料由来のお金であっても、預金残高が基準額を超えると処分対象になる場合があります。

多くの裁判所では、預金の合計額が20万円を超えるかどうかが一つの目安です。なお、複数口座を持っている場合は、口座ごとではなく合算して判断されるケースが一般的です。

例えば、メイン口座に15万円、別口座に10万円残っている場合、合計25万円となります。この場合、20万円を超える5万円部分が処分対象となる可能性があります。

自己判断で急いで現金化すると、不自然な財産隠しを疑われる恐れもあるため、事前に弁護士へ相談しながら進めることが重要です。

高額な未払い給料の一部

未払い給料が高額な場合には、差し押さえ禁止額に上限が設けられています。

民事執行法では、給料の4分の3が保護されますが、その金額が33万円を超える場合には、33万円までしか保護されません。超えた部分は処分対象となる可能性があります。

例えば、未払い給料の手取り額が60万円の場合、通常の4分の3は45万円です。しかし、保護される上限は33万円となるため、残りの27万円部分が破産財団へ組み入れられる可能性があります。

高収入の方は、一般的なケースよりも処分対象額が大きくなることがあるため、事前に資産状況を整理した上で手続きを進めることが大切です。

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自己破産でも処分対象になりにくい給料

自己破産では一定の財産が処分対象になりますが、生活再建に必要なお金まで全て失うわけではありません。法律上、破産者の生活を守るための制度が設けられており、給料や生活費の一部は保護されています。

ここでは、自己破産でも手元に残せる可能性が高い給料や収入について解説します。

開始決定後に発生した給料

先述のように、破産手続開始決定後に新たに得た給料は新得財産として扱われ、原則として自由に使えます。

自己破産は、過去の借金を整理して生活を立て直すための制度です。そのため、開始決定後の労働によって得た収入まで回収対象にすると、生活再建が難しくなってしまいます。そのため、自己破産後の収入は将来の生活を支えるものとして保護されているのです。

例えば、5月10日に開始決定が出た場合、5月11日以降に働いて得た給料は、家賃や食費などの生活費として自由に使用できます。債権者や破産管財人に回収されることは、原則としてありません。

生活維持に必要と認められる給料

本来は処分対象となる財産であっても、生活維持に必要だと認められれば「自由財産の拡張」によって手元に残せる場合があります。

自由財産の拡張とは、裁判所へ申し立てを行い、生活再建に必要な財産を例外的に保有できる制度です。医療費や教育費など、個別事情が重視されます。

例えば、持病の治療で毎月高額な医療費がかかるケースでは、通常の基準を超える現金や預金についても、生活維持に必要だとして認められる可能性があります。

自己破産は生活を破綻させる制度ではなく、再出発を支える制度であるため、状況に応じた柔軟な判断が行われる点が特徴です。

差し押さえが禁止される範囲の給料

開始決定時点で未払いとなっている給料についても、法律上保護される範囲があります。

民事執行法では、給料のうち手取り額の4分の3について、原則として差し押さえを禁止しています。ただし、保護される上限は33万円です。

例えば、手取り24万円の未払い給料がある場合、その4分の3に当たる18万円は、原則として処分対象になりません。残りの4分の1部分のみが、破産財団へ組み入れられる可能性があります。

生活再建に必要な公的給付や収入

自己破産では、給料以外にも生活維持に必要な収入の多くが保護されています。例えば、生活保護費、年金、児童手当、失業給付などは、最低限の生活を保障するための制度であるため、原則として処分対象になりません。

例えば、児童手当を受給している家庭に対して、そのお金を借金返済へ充てるよう求められることは通常ありません。

また個人事業主の場合でも、事業継続に必要な小規模な売掛金などについては、自由財産の拡張によって保護されるケースがあります。

会社員が気になる勤務先への影響

自己破産を検討している方の中には「会社に知られてしまうのではないか」と不安を抱える方も多いでしょう。

しかし、自己破産をしたからといって、自動的に勤務先へ通知されるわけではありません。一方で、状況によっては会社に知られるケースもあります。

ここでは、勤務先に知られる主なきっかけや注意点について解説します。

自己破産しただけで会社へ通知されることはない

自己破産をしても、裁判所や弁護士から勤務先へ自動的に通知される制度はありません。自己破産は個人の法的手続きであり、会社が債権者でない限り、勤務先へ連絡が入ることは通常ありません。

例えば、一般企業で働く会社員が自己破産をしても、自分から話さなければ、会社側がその事実を知る機会は基本的に限られます。

また自己破産をすると氏名が官報へ掲載されますが、一般企業が日常的に官報を確認しているケースは少なく、そこから発覚する可能性も高くありません。

このように、特別な事情がなければ、自己破産が勤務先へ知られる可能性は比較的低いといえます。

会社から借り入れをしている場合は知られる可能性がある

勤務先から借り入れをしている場合は、自己破産によって会社に知られる可能性が高くなります。

例えば、社内貸付制度、共済組合からの融資、給与の前借りなどを利用しているケースです。会社は債権者となるため、自己破産手続きでは他の債権者と同様に扱う必要があります。

そのため、弁護士から会社へ受任通知が送付され、返済停止の連絡が入ることで、経理や人事に事情を知られる可能性があります。

例えば、社内融資を利用して車を購入し、給与天引きで返済している場合には、返済停止によって自己破産を把握されるケースがあります。

このような場合は、隠そうとするのではなく、事前に弁護士へ相談し、説明方法を検討することが重要です。

給与差し押さえがきっかけで会社に知られることがある

借金を長期間放置し、債権者から給与差し押さえを受けると、勤務先に知られる可能性が高くなります。

給与差し押さえでは、裁判所から会社へ通知が送られ、会社は給料の一部を債権者へ支払う対応をしなければなりません。そのため、会社に隠し通すことは難しくなります。

一方で、自己破産の手続きを開始すると、給与差し押さえを停止または失効できる場合があります。

例えば、既に消費者金融による差し押さえが始まっているケースでも、速やかに自己破産を申し立てることで、強制執行を止められる可能性があります。

差し押さえまで進行すると勤務先へ知られるリスクが高まるため、早めに専門家へ相談することが大切です。

退職金関係の書類取得で事情を知られるケースがある

自己破産の申し立てでは、退職金見込額証明書などの提出を求められることがあります。この書類を会社へ依頼する際に、理由を聞かれたことで、自己破産を疑われるケースがあります。

ただし、証明書の取得にあたって使途を細かく説明する義務はありません。理由の説明を求められた場合は「ライフプランの確認に使う」といった範囲で伝えれば十分です。一方で、虚偽の理由を伝えることは避けましょう。後から事実が分かった際に、勤務先との信頼関係を損なうおそれがあります。

また会社の就業規則に退職金計算方法が記載されている場合は、その内容を基に計算書を作成し、証明書の代わりとして認められるケースもあります。

必要書類の準備方法には複数の選択肢があるため、不安がある場合は、事前に弁護士へ相談しながら進めると安心です。

自己破産で仕事や収入はどう変わる?

自己破産を検討する際「仕事を失うのではないか」「収入が減ってしまうのではないか」と不安を抱く方もいるかもしれません。

しかし、自己破産をしただけで直ちに解雇されるわけではなく、一般的な会社員であれば仕事への影響は限定的です。一方で、一部の資格職では一時的な制限が生じる場合があります。

ここでは、自己破産による仕事や収入への影響について解説します。

自己破産だけを理由に解雇されることは原則ない

自己破産をしたことだけを理由に解雇することは、原則として認められていません。

労働契約法第16条では、解雇には客観的に合理的な理由と社会通念上の相当性が必要とされています。そのため、単に自己破産をしたという私生活上の事情だけでは、通常は正当な解雇理由になりません。

※参考:e-Gov法令検索.「労働契約法」第16条.

https://laws.e-gov.go.jp/law/419AC0000000128 ,(参照2026-08-15).

例えば、就業規則に「破産した場合は懲戒解雇とする」と記載されていても、その内容が無効と判断される可能性があります。

自己破産は借金問題を法的に整理する制度であり、業務能力そのものとは直接関係しません。通常通り勤務できているのであれば、必要以上に解雇を心配する必要はないでしょう。

資格制限のある職種では一時的に業務制限が生じる

一部の資格職では、自己破産の手続き中に業務制限を受ける場合があります。

これは、破産手続開始決定から免責確定までの間、一時的に資格制限が設けられているためです。対象となる主な職種には、弁護士、司法書士、警備員、宅地建物取引士、生命保険募集人などがあります。

例えば、警備員の場合、手続き中は警備業務に従事できません。そのため、一定期間は事務作業など別業務へ配置転換されるケースがあります。

免責許可が確定して復権すれば、再び資格を利用して働くことが可能です。制限はあくまで一時的なものであり、永久に仕事ができなくなるわけではありません。

配置転換や収入減につながるケースがある

資格制限を受ける職種では、一時的に配置転換や担当変更が行われる場合があります。

会社としては、法律上制限される業務を続けさせることができないため、別部署への異動や補助業務への変更などを行うケースがあります。

例えば、生命保険募集人が資格制限期間中のみ事務サポート業務を担当するケースです。この場合、営業手当や資格手当が停止され、一時的に収入が減少する可能性があります。

ただし、これは資格制限に対応するための合理的な措置として認められる場合があります。事前に会社と相談し、一定期間のみ業務内容を調整してもらうことで、雇用を維持しながら手続きを進められるケースもあるでしょう。

転職や再就職への影響は限定的

一般的な職種であれば、自己破産が転職や再就職へ大きく影響するケースは多くありません。

履歴書に自己破産歴を書く欄はなく、通常は自ら申告する義務もありません。また企業が応募者の信用情報を自由に確認できるわけではないため、自己破産歴が採用時に問題になりにくいのが実情です。

例えば、自己破産後に転職して生活を立て直し、以前より安定した収入を得ている方もいます。借金問題による精神的負担が軽減されることで、仕事へ集中しやすくなるケースもあるでしょう。

毎月の返済が
不安になってきた方へ

いまは「どう対処すればよいか分からない」
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ボーナス・退職金・社内制度のお金はどう扱われる?

自己破産では、毎月の給料だけではなく、ボーナスや退職金などのまとまった収入も財産として扱われる場合があります。

ただし、全てが回収対象になるわけではなく「いつ受け取る権利が確定したか」によって扱いが変わります。生活再建への影響を把握するためにも、基本的なルールを確認しておきましょう。

ボーナスは支給時期によって扱いが変わる

ボーナスの扱いは、基本的に給料と同じ考え方で判断されます。ポイントになるのは、破産手続開始決定の前後どちらで支給が確定したかです。

開始決定前に支給が確定しているボーナスは、まだ受け取っていなくても財産として扱われる可能性があります。この場合、未払い給料と同様に、一部が処分対象になるケースがあります。

一方で、開始決定後に支給が確定したボーナスは、新得財産として原則自由に使えます。

例えば、7月支給予定のボーナスについて、6月時点で支給額や支給権利が確定している状態で開始決定を受けた場合は、財産として評価される可能性があります。反対に、開始決定後に支給が決まったボーナスであれば、生活費などへ自由に充てられます。

ボーナス支給時期が近い場合は、申し立てのタイミングについて弁護士へ相談することが重要です。

受け取り済みの退職金は現金や預金として扱われる

既に受け取っている退職金は、現金や預金と同じ財産として扱われます。

そのため、自己破産時点で口座に残っている退職金については、自由財産として認められる範囲を超えた部分が処分対象になる可能性があります。一般的な目安として、現金は99万円まで、預金は20万円までが基準です。

例えば、退職金300万円を口座へ預けた状態で自己破産を申し立てた場合、20万円を超える部分が回収対象となる可能性があります。

なお、意図的な財産隠しや不自然な使い込みと判断されると、免責不許可につながる恐れがあります。退職金の使途は、記録を残しながら適切に管理することが大切です。

将来の退職金も財産として評価される場合がある

まだ受け取っていない将来の退職金についても、一定条件では財産として評価されます。多くの裁判所では、退職まで期間がある場合は見込額の8分の1、退職が近い場合は4分の1程度を財産として扱う運用がされています。

例えば、現在の退職金見込額が80万円の場合、8分の1に当たる10万円が評価額となります。この程度であれば、多くのケースで大きな問題になりにくいでしょう。

また将来の退職金が評価対象になったとしても、実際に退職して現金化しなければならないわけではありません。評価額に応じて積立てなどの対応が求められるケースがあります。退職金は老後の生活資金という側面もあるため、裁判所でも一定の配慮がなされています。

まとめ

自己破産をしても、破産手続開始決定後に得た給料は「新得財産」として原則自由に使えます。また自己破産を申し立てることで、給与差し押さえを停止できる場合もあります。

一般的な会社員であれば、自己破産だけを理由に解雇されることは通常なく、勤務先へ知られるケースも限定的です。さらに、生活保護や年金などの生活維持に必要な収入は、法律によって保護されています。

一方で、ボーナスや退職金は、支給時期や受け取り状況によって扱いが変わるため注意が必要です。手続きのタイミング次第で、手元に残せる金額が変わるケースもあります。そのため、自己判断で進めるのではなく、早い段階で弁護士へ相談し、自身の収入や財産状況に応じた適切な方針を検討することが大切です。

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このページの監修弁護士

弁護士

久松亮一(弁護士法人ライズ綜合法律事務所)

東京大学法学部、及び法政大学法科大学院卒。
2012年弁護士登録。

弁護士歴10年以上の知見を活かし、法律の専門家として、債務整理・慰謝料請求・立ち退き問題など、同事務所が取り扱う幅広い法律問題に従事している。